5 美しい景観の保全状況

平成19年度版 鳥取県環境白書

鳥取県の環境の現状

 5 美しい景観の保全状況

【1 現状と課題】

 

鳥取県は、鳥取砂丘、浦富海岸など特徴的な美しい海岸線や、中国地方随一の標高を持つ秀峰大山など、四季の彩りが美しい自然景観から、由緒ある寺社や伝統的な街並みなど特色のある歴史的景観、棚田や里山などの農村景観まで、多様な景観を有している。これらの美しい景観は、人々の生活に潤いや安らぎを与え、郷土に対する誇りと愛着を育む県民共通の財産であるとともに、鳥取県を訪れる人々を惹きつける魅力にもなっている。
《景観形成条例の制定状況》
  鳥取市景観形成条例(平成13年制定)
  米子市景観形成条例(平成10年制定)
  日南町の景観を守り育てる条例(昭和60年制定)
《景観行政団体の状況》
  倉吉市(平成17年8月1日)
  鳥取市(平成18年6月1日)
  米子市(平成19年3月1日)

 本県では、平成5年に「鳥取県景観形成条例」を制定し、景観形成施策の総合的な推進と自発的な景観形成活動の促進を図ることによって、良好な景観の保全と創造に努めることとした。以来、県民の誇りとなる優れた景観を有する地域を景観形成地域に指定して、その景観を重点的に保全するとともに、周辺に与える影響が大きい建築物の新築など大規模な行為については、鳥取市、米子市の区域を除く全県を対象として事前の届出を義務付け景観形成に支障とならない よう指導してきた。

 

 こうした、地方における景観行政の主体的な展開を踏まえ、平成16年に景観法が制定されたことに伴い、及び景観形成上の現場で生じる様々な問題に対応するため、鳥取県景観形成条例を全面改正し、鳥取県景観計画を策定した(平成193月)。

 指定地域
《改正前条例に基づく景観形成地域の指定状況》
 ・大山景観形成地域
 (平成6年4月15日指定)
 ・沿道海浜景観形成地域
 (平成7年8月1日指定)
 ※因幡白兎景観形成区域、北条砂丘景観形成区域、弓ヶ浜景観形成区域の3つからなる。


  

【2 県の取り組み】

  

(1)人材育成・意識啓発

○景観まちづくり塾の開催まち歩き

 景観まちづくりを主導できる人材の育成を目的として、NPO団体等に委託し、景観まちづくり塾を実施している。このまちづくり塾は、委託団体の企画提案により県全域から受講生を募集し、年間を通じた研修計画のもと、研修の題材に適した地区(2~3ヶ所)でワークショップなどの研修を行い、景観まちづくりを担う人材を育成するものである。

 

 地元と外部がそれぞれの視点から意見交換することにより、レベルの高い、市町村の枠を越えた交流が生まれ、まちづくりの人的なネットワークが拡大している。

 

 開催地となった地域においては、専門家の評価や他地域の活動者に刺激され、地域にある資源を再確認するなど、まちづくり活動のきっかけとなっている。
 これまでに、鳥取市山手地区、琴浦町光・大山町所子、若桜町若桜、日野町根雨で講習会が開かれており、この講習会を契機に、自らの手でまちなみを保存し、創造する気運が高まり、まちづくり活動が継続して行われている。

○写真コンテストの実施や景観パンフレットの作成 21世紀に引き継ぐべき鳥取の景観としてふさわしいものを県民から広く募集し、平成12年度に「伝えたいふるさと鳥取の景観」を100件選定した。これら100の景観をテーマに、写真コンテスト等を平成17年度まで実施し、コンテスト入賞作品を活用した展示会の開催やポストカードブックの配布により、鳥取の美しい景観を県の内外にPRしている。さらに景観に対する県民の関心を高めるため、「伝えたいふるさと鳥取の景観」以外の美しい景観を見ることができる場所(景観スポット)を収集し、パンフレットを作成している。

 

平成17年度写真コンテスト入賞作品より

仲間たち

「仲間たち」(松本利秋)

撮影場所:江府町江尾

 

正月の朝

「正月の朝」(橋谷田妙子)
撮影場所:智頭町山根


(2)景観資源の調査

○とっとり茅葺民家維持再生活用事業

 農村景観の重要な要素である茅葺民家の維持保全・活用を図ることを目的として、平成17年度に行った調査資料を活用し、平成18年度に茅葺民家写真展『美しき村~茅葺き民家写真展』を開催した

[平成17年度] 県東部地域の茅葺民家の現状を調査(民間団体に補助)

 

[平成18年度] 前年度調査結果を元に維持、保存等を行う団体の活動を支援(民間団体に補助)
 ・茅葺民家ルートマップ
 ・茅葺民家シンポジウム
 ・交流会の開催
写真展 茅葺民家
 また市町村、NPO等に助成し、城下町や宿場町等の風情ある歴史的景観などのまちなみ調査や今後のまちなみ整備方針の検討等を支援している。

○歴史的まちなみ調査支援事業[平成18年度より市町村交付金に統合]
こて絵 【平成17年度】光地区(琴浦町)
<地区の状況>
 約50戸の農村集落。半分以上の家に海鼠壁(なまこかべ)と鏝絵(こてえ)が残されている。
<主な活動内容>
・建物と鏝絵・景観の調査
・住民アンケート調査
・先進地視察(鹿野町)
・鏝絵を活用した景観づくりシンポジウム
田後地区 【平成17年度】田後地区(岩美町)
<地区の状況>
 江戸時代の村の区画割が今に残る独特な漁村の風景が見られる。
<主な活動内容>
・地区の模型作成
・住民アンケート及びヒアリング調査
・先進地視察(石川県七尾市)
・田後漁村景観まちづくりフォーラム

(3)市町村等への支援

○景観コーディネーター、景観アドバイザーの派遣
 景観やまちづくりに関する住民活動に対して専門的視点から意見を述べる景観コーディネーターを配置するとともに、景観アドバイザーを派遣し、景観まちづくりの取組みを支援する。

○まちづくり交付金(国土交通省)
 地域の特性を活かした地域主導の個性溢れるまちづくりを進め、まちの再生を効率的に推進し、生活の質向上と地域経済の活性化を図るため、市町村に国が交付金を交付する。
【事業内容】道路、公園、河川、広場、既存建物の活用、土地区画整理等、(国概ね4/10)
【事業地区】鳥取市中心市街地、倉吉市打吹地区、伯耆町溝口地区

○街なみ環境整備事業(国土交通省)
 住民同士がまちづくり協定を結び、整備方針、整備計画を定めた地区において、地区施設、
住宅及び生活環境施設の整備改善を行う市町村及び建物所有者等に対して国が補助する。
【事業内容】道路美装化等の地区施設(国1/2)、住宅や塀等の修景(国1/3)
【実施地区】鳥取市鹿野町鹿野地区、米子市旧加茂川・寺町周辺地区、倉吉市打吹地区他
  
  

【3 今後の課題】

○新たな制度の周知・運用
 平成19年10月1日以後に着手する行為から適用される景観法に基づく届出制度、鳥取県景観計画、及び同時に改正した鳥取県屋外広告物条例について周知及び適切な運用を図り、本県の景観形成を進めていく必要がある。

○地域が主体となった景観形成の促進
 地域住民の景観意識を高めて、活動のリーダーとなる人材を育成するとともに、地域の実情に応じたきめ細やかな施策がなされるよう、市町村の景観行政団体への移行促進を図る必要がある。

○地域資源の再発見と活動への支援
 埋もれている地域資源の価値を再発見し、活用に向けた住民活動に対する支援が必要である。

Copyright(C) 2006~ 鳥取県(Tottori Prefectural Government) All Rights Reserved. 法人番号 7000020310000