特集/危機を乗り越え、再び始動~観光復活に農業の支え~

  食料の安定供給に不可欠で、県の経済をも支えている農林水産業。しかし、高齢化や担い手不足が深刻化し、人材確保は重大な課題です。こうした状況下で、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて休業した観光・宿泊業の従業員を農家が臨時的に雇用、異業種連携で窮地を乗り越えた取り組みを紹介します。

コロナ禍を展開の契機に

  新型コロナウイルスの感染が深刻化していた今年4月16日、政府は7都府県に発令した緊急事態宣言の対象を全国に拡大。観光シーズンを前にした全国的な不要不急の外出自粛に、県内でも多くの飲食店や宿泊施設、観光業者が営業の縮小・休業を余儀なくされました。
  その一方で、この時期にラッキョウやスイカの収穫を控えた農家では、作業量の増加に見合う人手が不足。繁忙期限定の農業の求人には、求職者も集まりにくい状況が続いていました。鳥取市福部町でラッキョウを生産する山根(やまね)貴世子(きよこ)さんも、毎年人手不足に悩む一人。「収穫期は三、四十人が必要。新聞での求人広告にも応募がなく、出荷が間に合わない年もある」と人員確保の難しさを話します。そんな山根さんの元に今春、やむなく休業することになった飲食・観光業を営む知人から「農作業を手伝いたい」との声が。こうして、県の補助事業(下記参照)を活用しながら、異業種の従業員を臨時で雇うことになりました。
  依頼した作業は畑の草取り、収穫したラッキョウの根と茎を切る「根切り」など、初めての人でもできること。根切りは、道具を貸し出し、別の場所で作業してもらうことも。山根さんは「ありがたい。今年は出荷作業が早くできた」と連携の成果を感じています。
  また、県中部では、2年前から農業人材の掘り起こしを進める鳥取中央農業協同組合の無料職業紹介所「農業人財紹介センター」がノウハウを生かした異業種連携を展開。新型コロナがもたらした危機をきっかけに、労働力を融通し合う仕組みづくりへの挑戦が各地で始まっています。

根切り作業の写真1
機械で掘り起こし、収穫した大量のラッキョウは手作業で「根切り」される

根切り作業の写真2
包丁を立てた状態で板に固定し、一つ一つ丁寧に根と茎を切り落とす

ラッキョウを洗っている写真
「根切り」したラッキョウを機械で洗う山根さん。この後塩蔵し、酢漬け加工を行う会社に出荷する

緊急雇用対策農林水産ささえあい事業

  県は、新型コロナウイルス感染拡大により影響を受けている企業・事業所の従業員を農林水産業者が臨時的に雇用する場合に、人件費と交通費を支援する「緊急雇用対策農林水産ささえあい事業」を実施しています。写真は、この事業を活用し収穫された作物。これらをはじめとする県産品の購入で、あなたも県内産業を支える仲間に。

ラッキョウの写真
砂丘畑で生産されるラッキョウは、色の白さと歯応えが自慢

ブロッコリーの写真
葉・茎付きで出荷されるブロッコリー。鮮度に自信があるからこそ

夏さやかの写真
最も早く収穫される青梨「夏さやか」は高い糖度と強い香りが特徴

白ネギの写真
約10品種を使い分けて栽培され、年中食べることができる白ネギ

「鳥取スイカ」の写真
大山山麓の黒ぼく土壌で育ち、大玉で水分たっぷりの「鳥取すいか」

【問い合わせ先】 県庁とっとり農業戦略課
電話 0857‐26‐7256 ファクシミリ 0857‐26‐8497
https://www.pref.tottori.lg.jp/248188.htm

「食を守る農業」を知る機会に

鳥取中央農業協同組合 営農企画部長
山脇(やまわき) 賢治(けんじ)さん
山脇賢治さんの写真

  当組合の「農業人財紹介センター」は、農業分野に特化した無料職業紹介所。農家から求人情報を集めるほか、県内の大学や農業大学校へアルバイト募集に出向いたり、地元市町の関係機関や商工会などと連絡を取り合ったりしています。湯梨浜町・三朝町の温泉旅館の、新型コロナウイルスの影響による休業危機を知るとすぐに、商工会や町役場の担当者へ連絡。旅館や温泉組合につないでもらい、休業期間中、希望する従業員に農家で働いてもらうことができました。
  農業には体力が必要な短期集中の作業があるため、人材確保が難しいですが、今回は農繁期と旅館の休業期間が重なって連携が実現。このことが報道され、多くの人に私たちの活動が知られるきっかけになりました。旅館従業員の中には「機会があればまた」と話す人も。体験から農業の楽しさや大切さを意識してもらうことが人材確保の一歩だと思っています。

県の魅力、いま一度触れて

  岩美町にある山陰松島遊覧株式会社も新型コロナウイルスの影響を受けた会社の一つで、4月10日から休業しました。代表取締役の川口(かわぐち)博樹(ひろき)さんが、仕事上つながりのあった山根さん(上記参照)のほか複数の農家に声を掛け、従業員は休業中、ラッキョウの収穫を手伝うことに。こうして、52日間の休業を乗り越え、6月から感染予防を徹底した上で、同社は営業を再開しました。「浦富(うらどめ)海岸島巡り遊覧船」からは、白砂青松(はくさせいしょう)の美しい砂浜や複雑に入り組んだリアス式海岸など変化に富んだ景観を眺望できます。船内では、船長が楽しく案内。最高水中透明度は25メートルを誇り、晴れた日は中国地方最高峰の大山が見えます。
  それぞれの工夫や異業種の支えで苦境を乗り越えようとしている観光・宿泊業。皆さんも県内の魅力に、改めて触れてみませんか。
  また、互いに支え合って収穫された農産物の購入は、私たちにもできる応援です。県は、これら農産物を県外の家族や友人に送る支援もしています。(下記参照)ぜひ、ご活用ください。

貴重な農体験、観光に生かす

山陰松島遊覧株式会社
田中(たなか) 智也(ともや)さん
田中智也さんの写真

  遊覧船の船長を目指し、操船やアナウンスの技術を磨いて2年、今年4月に船長として初の乗船予定でした。ところが、新型コロナウイルスの影響から会社が休業し、「船長デビュー」は延期。休業補償はありましたが、副業も認められ、ラッキョウ農家で働くことに。慣れない作業で大変でしたが、地元農家に貢献できました。貴重な体験で得た知識は、船内ガイドでお客さまにも披露したいです。また、国内旅行業務取扱管理者の資格を生かして、海と農業体験を組み合わせたツアーの提案もしていきたいですね。
  遊覧船は6月に再開、念願の船長デビューも果たしました。美しい浦富海岸とともに乗船をお待ちしています。

浦富海岸島巡り遊覧の写真
「山陰の松島」と呼ばれる浦富海岸。遊覧船が島や岩の間を縫うように巡り、洞門や岩礁が間近で楽しめる

乗客の写真
運航を再開した遊覧船を楽しむ乗客

アルコール消毒をしている写真
船員も乗客も感染予防を徹底。乗船前は全員、アルコールで手指を消毒

【問い合わせ先】 山陰松島遊覧株式会社
電話 0857‐73‐1212 ファクシミリ 0857‐73‐1261
https://yourun1000.com/

「食のみやこ鳥取県」ふるさと産品巣ごもり応援事業

  県外の親族や友人への県産農林水産物・加工品セット「ほっ(とり)便」(写真は一例)配送料を支援。詳細はウェブページでご確認を。
ほっ鳥便の写真

【問い合わせ先】 県庁食のみやこ推進課
電話 0857‐26‐7807 ファクシミリ 0857‐21‐0609
https://www.pref.tottori.lg.jp/item/1211698.htm#itemid1211698

【問い合わせ先】
県庁とっとり農業戦略課(農林水産業の人材確保)
電話 0857‐26‐7256 ファクシミリ 0857‐26‐8497
県庁食のみやこ推進課(6次化・農商工連携)
電話 0857‐26‐7807 ファクシミリ 0857‐21‐0609
県庁観光戦略課(魅力情報発信)
電話 0857‐26‐7237 ファクシミリ 0857‐26‐8308



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