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平成20年2月5日交渉

海事職給料表の導入に対する交渉の概要

○日時 平成20年2月5日(火)15時00分~17時30分

○場所 第5会議室(本庁舎地階)

○出席者 知事部局:伊澤職員課長、萬井給与管理室長補佐、難波主幹、前田副主幹

県職労:片山執行委員長、山中書記長 他7名

<概要>

【要求項目4、5について(特殊勤務手当、旅行手当について)】

組合:要求事項は3点である。

1点目として、海難救助、捜索活動を特殊勤務手当の支給対象に加えてほしい。航海手当、取締等業務手当とは別手当となるかもしれないが、災害応急作業等手当とのバランス上もこのような業務に対しては支給が妥当と考える。

2点目として、漁業取締船「はやぶさ」が夜間、通報を受けて出動した場合は取締等業務手当の支給対象となるのか。例えば、2年ほど前には違反操業が多発し、特例勤務時間シフトをとり、巡視も含め夜間に出動していたことがあるが、このような場合、取締等業務手当の支給対象となるか。

3点目として、「はやぶさ」は、高速、特殊な船舶であり、その航行について通常の船舶より危険性が高いため、特殊勤務手当上何らかの考慮をしてもらいたい。

県:前回の交渉でも、海事職給料表は船員の特殊性にどこまで対応しているのかという議論があったが、この「海事職給料表で措置される船員の特殊性の部分以上の著しく特殊な部分」が特殊勤務手当の対象となる。

H18年度に特殊勤務手当の全体整理を行った時点では、船員には行政職給料表が適用されており、行政職給料表では措置されていない著しい特殊性について、航海手当と取締等業務手当で措置することと整理した。

今回、人事委員会勧告により、海事職給料表の導入に併せて、海事職給料表では対応されず、特殊勤務手当を支給すべき部分として、夜間における操業と悪天候時の操業、航海が示されたところである。

船員の業務の「特殊性」については、はっきりと示されたものはなかったが、厚生労働省が「船員保険制度の在り方に関する検討会」の中で、(1)海上という厳しい労働環境下による肉体的負荷を長期にわたり負うこと、(2)乗船中は医療の提供を受けることが陸上に比較して困難であること、(3)船舶が生活の場となり、長期間家庭から離れなくてはならないこと、などを挙げており、国もこういったことも踏まえて海事職給料表を作成していると考えられるので、本県でもこれらの特殊性を超える部分が特殊勤務手当の検討対象となるのではないかとの考え方を前提として検討したところ。

1点目の海難救助等については、通常の救助、捜索のみでは特殊勤務手当を整理している指標(危険性、不快性、不健康性、困難性)に照らしても当てはまるものではなく、特殊勤務手当の対象とはならないものと考えられる。しかし、災害応急作業等手当の支給要件を満たす環境下での業務であれば、同手当の支給対象となる。

2点目の「はやぶさ」の夜間航海については、現在でも漁業法に定める取締業務のために行ったものであれば、取締等業務手当の支給対象となるが、夜間に行われる航海というだけでは特殊勤務手当の対象とはならないものと考えている。抑止効果を狙った単なる巡視であれば、夜間であっても支給対象とはならないものである。

3点目の「はやぶさ」の特殊性に対する配慮については、同船の巡視が高速、特殊により危険性が高いことは事実かも知れないが、海事職給料表は、高速船、大型船など様々な船の実態を考慮して作成されており、それらの特殊性も含めて措置されているものと考えている。したがって、これ以上著しい特殊性を手当で措置することはできない。

組合:特殊勤務手当については、支給対象の範囲やその判断基準を巡ってこれまでも疑義を生じているところである。

例えば、「はやぶさ」が通報を受けて夜間現場に急行し、周辺海域を捜索したが違法船舶は見あたらなかった、というような場合は取締等業務手当の支給対象となるのか。警察が110番通報を受けて出動した同様の場合の取扱いはどうか。

県:特殊勤務手当に係る要求事項3点については、昨日の事務折衝で初めて伺ったものであり、また、そのようなレアケースについてまでこの場で直ちに整理することは無理であるので、別途整理としたい。

組合:別途整理については了承した。

船員の特殊性の給料表による措置の範囲については必ずしもイメージしきれないとも感じているが、レアケースも含めて疑義が生じた部分はその都度整理するしかない。県も常に話合いの窓口は開けておいてほしい。

県:給料表で対応できない、著しい特殊性の範囲について、現場の実状も十分に踏まえながら整理することを拒むつもりはない。

組合:頻繁に夜間航海を行う場合なども「通常」の範囲内なのか、言い換えると、海事職給料表は昼間航海を基本に作成されているのかも併せて検討をお願いしたい。

組合:航海手当や旅行手当について、実費負担部分としての手当存続要求は難しいかもしれないとは感じている。ただし、これらを廃止しても必要な経費はすべて支給されているとする県の主張にも納得はしていない。

例えば、航海実習船「若鳥丸」は最長1月半の航海、「はやぶさ」はほとんど日帰りの航海という勤務体系の違いにどう配慮すべきか。特殊勤務手当として対応するかどうかは別として、それら船員の特殊性も給料表ですべて網羅されていると言い切れるのか。

これらの点についても、先ほどの特殊勤務手当の支給範囲の整理と同様、今後の協議対象としてもらいたいということで要求項目4、5についての整理としたい。

組合:確認であるが、今回海事職給料表の導入に併せ、人事委員会からは特殊勤務手当の支給対象として夜間の操業と悪天候時の操業、航海が示されたが、県としてはこれ以外にもこれらに類似する業務はあり得るものと認識しているのか。

県:前回交渉で組合から要求のあった、悪天候時における「はやぶさ」の巡視業務については、航海手当の見直しとの均衡からも、特殊勤務手当の支給対象としていきたいと考えている。

組合:夜間の操業は特殊勤務手当の支給対象となるが、夜間の巡視業務だけでは支給対象とならないとすると、夜間の要請に基づく捜索活動はどうなるのか。

県:特殊勤務手当の整理として、夜間の操業が支給対象となるのは夜間に船室外で作業を行う際海への転落の危険性を考慮したものである。同様の実態があれば同様の整理を行うのが基本なので、そこが一つのメルクマールになるものと思う。

組合:船室内だから危険性がないというものではないが、(1)海上における危険性については、海事職給料表で対応、(2)悪天候時における航行、操業については、船室内、船室外とも特殊勤務手当の支給対象、(3)なお、夜間については、昼間と比べても、甲板は転落のおそれがあるので船室外の操業業務を支給対象をとするという県の整理は理解した。

航海手当の支給対象は従来の支給対象から通常時の航海を除いた部分、取締業務等手当の支給対象は別途整理ということで理解した。

【要求項目2について(海事職の職務評価について)】

組合:船長を管理職とすることについては、前回県から「そもそも管理職とは」という説明があったところである。

しかし、県の管理職の実態として、本庁の主管課のような「所属の施策の企画立案」など、同じ管理職でも実態が違うこともあるのではないか。

管理職か否かを判断する大きな指標の一つとして労務管理の権限があると考えている。この点で船長は船員の休暇の時季変更権や時間外勤務命令等の権限も実質的に行使しており、現実に管理職と言い得るものではないか。

また、万一の時には船長が船の中で強大なリーダーシップをとらなくてはならないなど、性質的にも管理職が妥当だと考えている。

県:管理職の役割について、行政職の考え方をそのまま船に適用することは困難であることは前回にも説明したとおりである。

ただし、例えば国でも大型の遠洋航海船の船長については管理職としているように、長期に渡って陸のコントロール下を離れ、いわば一箇の独立体となる実態に応じ判断されているものと思われる。

その点県有船は、一定期間かつ航行範囲も近海に限られた航海であるという実態を考慮して管理職とは位置づけていないものである。なお、国でも中型船の船長は管理職としていない。

船の場合は、所管課から離れているという物理的な条件もあり、休暇や時間外勤務等で実質的に権限を委譲しているという実態はあるとしても、組織上は船は水産課長、水産試験場長の下の内部機関である。

また、航海についても、「はやぶさ」は基本的に日帰り、試験調査船「第一鳥取丸」も何週間も連続して航海するものではなく、現段階では、船長が単独で業務全体を統括する、一箇の独立機関の長であるとは考えていないところである。

組合:「はやぶさ」の業務には取締りという公権力行使があり、同船は独立機関に近いと言い得るのではないか。

県:司法警察員が行う業務は、職務の執行上独立して各人が公権力を行使するが、だからといって全員が管理職とはいえない。

組合:海上で取締りを行い得るのは県では「はやぶさ」のみであり、同船は独立して業務を行わざるを得ないものと考える。

同船が、国の区分では中型船舶(二種)となることは承知しているが、航海に司法や捜索などの業務が加わっており、特に司法などでは実態上独立して機能しているのではないか。

県:司法警察の身分を有し、独立で公権力を行使するということと、そのポストを管理職とすべきかどうかは別の問題である。

組合:組合もそれは承知している。

「はやぶさ」は独立した行政機関と言い得るのではないか、従ってその長は管理職とすべきではないか、と主張しているのであり、「はやぶさ」で取締業務に従事する4人を全員管理職にしろと主張しているわけではない。

例えば県が取締船を何隻か所有しているなら、その船隊の長が取締りという職群の取りまとめとして管理職となるべきではないかと考えるが、本県の取締船は「はやぶさ」一隻しかないので同船の船長が管理職となるべきものではないかということである。

県:船の特殊性も理解しているつもりであるが、管理職かどうかということはまた別の判断であることも理解してほしい。

組合:「第一鳥取丸」の船長は、例えば会議等への出席など、県の水産行政には全く関与していないのだろうか。

県の水産行政が現場の実態を活かしたものであることが望ましいことはいうまでもない。例えば、園芸試験場の次長は管理職であるが、「第一鳥取丸」の船長についても、県の水産行政、試験、研究の中で関わっている実態があれば、例えば水産試験場の次長兼第一鳥取丸船長として管理職とする取扱いでもおかしくはないはずである。

この場で直ちに、という話にはならないだろうが、「船長が現にどんな仕事をしているのか」というだけではなく、「水産試験場として船長にどんな仕事をしてほしいのか」ということも管理職の判断に関わってくるのではないか。

試験研究の中で「第一鳥取丸」をどう組み合わせるか、単に海で操業だけしていればいいという位置づけなのか、水産課の考えは確認しているか。

県:その点については、水産課の考えは確認していない。

組合:了解した。これらの点についても、また整理して話をしたい。

【要求項目3について(海事職の職位設定について)】

組合:具体的なポスト要求については、業務の実態をもとに整理を行い、「第一鳥取丸」は昨日水産課を通じて行政経営推進課に、「はやぶさ」は本日水産課に、それぞれ要求を行っているところである。

県:水産試験場から水産課を通じて行政経営推進課にポスト要求書が提出されたが、要求趣旨等を確認したところ前回の交渉時のやりとりについて受け取り方に違いがあることがわかった。

前回の交渉時に、組合からは、一等航海士は船長の代理であり、船長がいなくても船が出せるような職責が法律上きちんと決まっているという主張であったので、一等航海士等の職位や職責が法的にも認められたものであるのであればポストとして検討することも、検討が可能との考え方を示したはずである。

しかし、その後所管省庁に確認したところ、一等航海士などについては法的に職位等の定めはなく、雇い主の内部規程で定まっているものに過ぎないとのことであった。また、(1)船長、機関長が乗船していないのに船が出港することは法的にできない、(2)一等航海士等が船長、機関長の代理であるという法律上の職責の定めはない、とのことであった。

これらの経緯等を所管課に説明し、検討された結果、一等航海士等については、法的な位置づけがない以上、従来の要求理由以外には理由がないため、所管課、所属としては同一内容での再度のポスト要求は行わないという回答があったものである。

また、「はやぶさ」についても、船長にも確認した上で、一等航海士等について組織上での法的位置づけ等もないことから、所管課として新たなポストの要求は行わない旨、昨夜回答があったところである。なお、本日、「はやぶさ」からの要求を受けて所管課がどのような協議を行っているのかについては、現段階では承知していない。

組合:水産試験場から「第一鳥取丸」の船員に対しては、一等航海士等の職位について法的な位置づけがあれば所属としてポスト要求を行うとの話があったが、そのようなものはなく、整理ができなかったため、所属として要求を出さなかったのだろうが、実態として重い職責を担っていることに対してまでも所属としてポストは要求しない、ということは承知していない。

経緯は理解したが、その点について話をしても問題は解決しない。

職場は職場で、新たなポスト要求は行わないと判断したわけであるが、現場は納得していない。

組合員:「第一鳥取丸」では、船長の不在時に一等航海士が臨時的に「雇入れ」という形で船長の命を受け、出港した実績もある。

県:船長職の発令は当然県の権限に属するものである。仮に現場で勝手に行っているとすれば、そのこと自体大きな問題である。また、そのようなケースで相談を受けたこともないので、実際には法的な面を含め検討そのものを行ったことすらない。もし、現場の判断で発令を行っているのであれば、緊急という場合も一般論としては考えられるとは思うが、しかし、調査航海のスケジュールなどがあらかじめ決まっているはずの「第一鳥取丸」の場合には考えられないと思われるので、なぜそのようなことになっているのか、今後よく調査させていただくこととしたい。

組合:船員法上の一等航海士等と給与上の一等航海士等の処遇がマッチングしていないことが問題ではないかと思う。

組合も、一等航海士等だから自動的に海事職3級(係長級)を適用せよ、と主張しているのではなく、業務の責任や困難性を検討、整理した上で行ったポスト要求であり、県としても現場実態に基づく職位の要求として検討してほしい。

県:所属がポスト要求を行わないから一切話を聞かないといっているわけではない。

しかし、前回一等航海士等について組合側から話があり、その後確認してみると組合が言われるような法的な根拠、裏付け等は存在しなかった。

「一等航海士『だから』船長代理」という法的な枠組みや「一等航海士は船長代理であり、だから船長は不在でも出港できる」という取扱いは認められておらず、逆に違法とのことであることから、組合側の主張が成り立たないことがわかった。

組合:組合としても法的なものだけで職位が整理できないことは承知しており、現場の実態に基づいた要求を行っているものである。

県:所属としても、現場の実態を勘案しても、現在のポスト査定に対して「第一鳥取丸」の航海、機関、通信の各部門すべてに海事職3級(係長級)ポストを要求できないと判断したものである。

組合員:他県の職位などは検討したのか。他県では一等機関士を海事職3級(係長級)に位置づけている例もあるではないか。

県:他県では当県が廃止した「わたり」的運用もあると認められることから、単純に比較はできない。

また、国や他県では海事職1級、2級にも一等機関士が配置されており、必ずしも「一等機関士だから海事職3級」という位置づけではないはずである。

この要求では、結局は船員なら全員が海事職3級まで昇格できるように、ということになるのではないか。

組合:そのような意図はない。組合としても「一等機関士だから海事職3級に」という要求をしているものではない。

県:要求書は検討したが、例えば一等機関士としての主たる業務、一等機関士とその他の機関士との職責に違いが見られず、この主張に基づいてポスト要求すべてに応じることは困難、というのが率直な感想である。

組合:普段は行政事務に不慣れな船員が、実態を基に業務の分担と全体を整理して行った要求に対し、要求事項の説明では応じられないというのはいかがなものか。

むしろ、職員課や行政経営推進課は積極的に業務の実態を把握すべきではないか。

県:今回の両船の職務の実態については、職員課や行政経営推進課の職員も実際に現場にも出向いて聞取りも行い、それを踏まえてポストの査定などを行っている。

組合側はその査定に不満ということで今回整理を行ってこられたのであろうが、「一定の単位の職・業務の長」として常時置く理由が見つけられなかったということである。

組合:県のいう「常時」というのはどういう趣旨か。県のいう業務のボリュームだけでは整理できない。責任を持って甲板員を指揮しなければならない職について、ボリュームが必ずしも大きくないから、という理由で係長級に該当しないというのはおかしいのではないか。

県:ボリュームだけでは整理するつもりはないが「仕事の分担」ということは考えなくてはならない。係長級が適切かどうか、ということは、「その業務の責任者は誰か」ということである。

船の組織体制全体を見たときに、機関部の主たる責任者は機関長ではないのか。機関長の他に、機関長と機関士の間にもう一人責任者を置いて、そこを通さなくては指揮命令を行い得ないのか、ということである。

組合員:「第一鳥取丸」の機関部には機関長と3名の機関士がいるが、機関長は操業中はブリッジにいるのでエンジンの操作や監視はできず、機関長以外にもう一人責任者が必要である。

操業中にエンジンルームで指揮を執るのは一等機関士である。

県:そのような場合でも、機関長は同じ船内のブリッジにいるわけで、重要な事項については機関長の判断を仰いだり、機関長がエンジンルームに下りるということもあるのではないか。

組合:操業中、機関長は船長を補佐しなくてはならず、ブリッジの持ち場を離れることはできない。その間機関部は一等機関士が指揮し、何かあれば部下に指示をしてリーダーシップをとってやっている。また、機関の点検などの重要な業務も一等機関士が行っている。

県:機関部の業務を統括するのは機関長ではないのか。

組合員:現場責任者は一等機関士である。

県:例えば、機関長は航海当直時にエンジンルームに入ったりはしないのか。

組合員:航海当直時には機関長も含め機関士全員が交替で業務に当たっている。

県:「第一鳥取丸」の操業中について、エンジンルームには機関長か一等機関士のどちらかが必ずいるのか、それとも、二人ともいない時もあるのか。

組合員:二人ともいない時もある。操業は、船長、機関長以外総出で行うので、その間エンジンルームは無人となり、操業の合間に一等機関士が下りて機関を見る、という状態になる。

組合:現場の実態と職位を直ちに同じにはできないかもしれないが、現場における責任は重いということは理解してほしい。

一等機関士について、県は、機関士との役割分担が明確でないといわれるが、現実に現場(エンジンルーム)をコントロールしている。

県:現場をコントロール、といっても、現場にいないことも現実にある職、ということではないのか。

機関士各々の役割分担があることはわかるが、機関部の通常の組織体制として、責任者は機関長なのではないか。

組合:それをいえば、どの部署でもそうだと思う。しかし、機関長は航行中はブリッジにいる状態で、船体の中にある様々な機関の全体を見る人がいるというのは普通ではないか。いないこともある、といっても、例えば睡眠時間も必要であり、何か起こればその人を起こす、という職は通常でも考えられるのではないだろうか。

県:機関士の中で経験が長く、能力が高い人、というだけでは係長級のポストは設置できない。

組合:機関の実務の責任を負う係長的な人、ということであれば、行政職でも似たような職はあるのではないか。そもそも行政職の係長級はどのような整理になっているのか。

組合:機関長がエンジンルームに下りて航海当直につくのは、操業中以外の航海当直に当たる職員が足りないからである。

まず、「第一鳥取丸」の主たる業務である操業中の業務分担について職位、責任体制を検討すべきであり、その中で操業中は機関長以外に常にもう一人必要ではないか、また、航海、機関、通信の3部門にわけざるを得ないと主張しているのである。

県:操業の際の責任者として、「第一鳥取丸」に士長1名の組織査定となっているのであり、当該士長以外に、操業中の機関部に士長を1名置く必要性があるのかどうかということである。

組合:操業中、係長級職員は作業の長1名の体制では到底エンジンまで見られないと思う。

組合員:操業中エンジンを見るのは、士長クラスでなくても機関士なら誰でもよいということか。

県:エンジンを担当する職員が、士長クラスでなくてはならないとする理由は何かということである。

組合員:機関士はエンジンの音一つで異常を察知して駆けつけなくてはならない職人的な職であり、そういった現場において、責任を持って業務に当たるのが一等機関士である。

県:機関士の技能を否定するものではないし、資格免許職であることも承知しているが、機関長と横並びの職員をもう一人、組織として設けなくてはならないという理由は何かということである。決して、操業中のエンジンの管理はどうでもいいなどと言うつもりはない。

組合員:実態として、これまで機関長と一等機関士の間にはあまり差はなかった。今回そこに差が設けられることで、「それならこれからは責任がある業務はすべて機関長にお任せ」ということになるようでは船の航行に支障が生じるおそれがある。やはりそこは一等機関士に責任を持たせなくてはならない。エンジンは船の心臓であり、10億円もする県の財産と人命を預かる重要な職である。

県:機関部の重要性は認識しているが、だからこそ機関長がいるのではないか。そこにもう一人、機関長と同等の職を設けるべきかどうかということである。機関部の業務が重要ではないということではない。

組合員:操業中は、機関長はブリッジを離れられないので、どうしてもその他の1名が必要となる。例えば、機関の故障時などの際には直ちに措置する必要がある。

組合員:「第一鳥取丸の職位要求配置図及び説明」でいえば、(1)の士長はトローリーを操作しなくてはならないので、(2)の士長が現場作業を指揮することとなる。

県:トローリーウインチの操作に、士長が1名必要ということか。

組合員:トローリーウインチの操作は危険であり、それだけの人を配置する必要があるということである。甲板作業は船長、機関長を除く10名で(ただし、エンジンに異常が生じれば機関部員3名はエンジンルームに下りる。)、右舷、左舷に分かれて作業を行うので、それを指揮する(2)の士長がそれぞれ必要となる。

組合員:取締業務においても、写真撮影など一連の作業を証拠隠滅前の短時間で行わなくてはならず、その都度状況も違う。船長、機関長はブリッジにいるので、その判断、指揮のため別に取締業務の責任者が必要であり、そのためのポストを要求するものである。

県:取締りを行う際、船長等はブリッジから出てはこないのか。

組合員:写真撮影や接舷、実況検分は一等航海士が中心となって行う。

その間船長は、ブリッジで相手方船長の調書をとる等の対応を行っている。

県:「第一鳥取丸」は漁労の長、「はやぶさ」は取締りの長という要求であるが、「第一鳥取丸」と「はやぶさ」では船の大きさが違うこともあり、「第一鳥取丸」のそれぞれの部門に一人ずつ士長が必要という要求は認め難いものがある。

組合:取締りは短時間に行うので業務を分担せざるを得ず、「はやぶさ」と「第一鳥取丸」とでは仕事の質が違う。

決して、一等航海士等「だから」昇任を、という要求ではないので、誰がその業務を行っているのか、業務の実態に合わせてどのような体制が必要なのかに基づいて要求を行っているものである。

県:「航海、機関、通信の各部門に1名」とか「『第一鳥取丸』がこうなら『はやぶさ』も」というような要求については、認めることは困難である。

例えば、「第一鳥取丸」の操業時に業務の分担があることは理解できるが、船の組織体制として3部門あるのだから各部門に士長が必要というのは、組織面からの必要性に基づく職としての整理として考えた場合になかなか難しいだろう。

組合:現場の実態として、県がいうような「一人で目が行き届く」状態ではないと思う。

組合員:例えば、一等機関士の職務の級が、最若年の機関士と同じ海事職2級とされた場合、それで一等機関士は責任を持って業務に当たることができるか、また、若年の機関士の方も、一等機関士という責任のある立場と同じ、といわれてもそれは違うと感じると思う。

県:県も決して「一人で」目が行き届くと言っているわけではない。

一等機関士が、いわば次席としてそれなりの職責を果たしていることは否定しない。ただし、だからといって「一等機関士だから海事職3級にすべき」ということにはならないことも理解してほしい。

組合:本人も一等航海士等として責任を持って仕事をしていると感じ、船は現実にそうやってシステムとして機能している。「一等機関士だから海事職3級」というわけではなく、実態として部下の教育、育成等も行っているのであり、そこは行政職の係長級とも変わりはないと思う。

県:行政職でも一つの係の中に様々な年齢層の職員がいて仕事を行っているのであり、係長だけではなく、先輩職員も若年職員の教育、指導を行っている。

組合:行政経営推進課の作成した資料でも、人材育成は主事級の職員が担う役割には挙げられていなかったはずである。その点、船において、その役割を自覚した上で日常的に指導を行っているのは一等航海士等である。

教育、育成は、行政経営推進課が係長級以上のポストを判断する大きな要素の一つになっているはずである。

また、機関のオーバーホールの企画立案なども、機関長と機関士の中間の一等機関士が責任を持って行っている実態がある。

県:係長の職責と係という一定のグループに課せられた業務について、誰が一定の責任を持って遂行していくかということである。

機関部という単位があって、交替制勤務シフトもあるだろうが、基本的にその責任者は機関長である。この場合、監督職員として、機関長が係長に相当する役職である。

組合:機関長はブリッジで船長を補佐しつつ機関部を運転しているので、エンジンルームで事実上の差配を行うのは一等機関士である。この場合、機関長がいわば課長補佐で、係長が一等機関士ではないか。

県:では、機関部が機関長を含め2名である「はやぶさ」でも同様の整理なのか。

組合:逆になぜ「はやぶさ」の機関部が2名なのか聞きたい。「はやぶさ」の現場では、機関部を3名にしてほしいとも考えているぐらいのところである。

組合員:機関長が休暇をとったら船は出港しなくていいのか。

県:県が確認した限りでは、法的にも機関長不在で船が出港することはないはずである。

組合:「第一鳥取丸」と「はやぶさ」ではエンジンの種類も違い、また、「第一鳥取丸」の機関部はエンジン以外の、冷凍や大型ポンプ等も取り扱う。

県:前回交渉時、「第一鳥取丸」と「はやぶさ」で機関部の仕事に違いはない、との説明ではなかったか。

組合員:エンジンは大きさというか、特性が問題である。

県:こちらも前回交渉の後、法的にもどういった位置づけにあるのかなどについて検討を行ったところであり、また、今回は組合側の要求のトーンも前回とは異なっていると感じる。

「はやぶさ」について、原案では船長、機関長の代行となる職は設けないこととしている。確かに「第一鳥取丸」と船の大きさなどの違いはあるが、その理由で海事職3級への格付けを全く否定することはどうか、我々も検討してみた。

その結果、明確な基準を示すことは困難であるが、士長の余地を検討し、取締りの特殊性なども踏まえて、総合的な補佐職として、はやぶさに士長1名を設置する余地はあるものと考える。

組織としては、年齢構成もあり、あらゆる場合に設置というわけではないが、それなりの責任を持って業務に当たる者が設定できるというのであれば、士長も考えてもいいのではないかと考えている。

組合:「第一鳥取丸」についてはどうか。

県:「第一鳥取丸」については既に甲板作業の長として士長1名を組織査定しており、それで理解いただきたい。

組合員:それでは「第一鳥取丸」は現実の仕事には対応できないと考える。また、自分がその士長になる場合を想像するとしても、1名では責任が持てないと感じる。

組合:船長、機関長がブリッジにいるときに、甲板の長が1名では業務のボリュームが質、量ともに大きすぎると思う。

県:「第一鳥取丸」の甲板作業で、分野が異なる職種ごとに士長を置くということは、職種ごとに指揮命令の系統を分けなければならない必要性があるということなのか。

組合:甲板作業の起点はウインチで、そこから右舷、左舷に声をかけるので3分野ということ。

これまでは「わたり」があったので、何となく責任が分担されていたが、今回海事職給料表を導入し、「わたり」を廃止したことに伴い、「誰が、何をするのか」が明確に決まることとなり、その場合に1名で甲板作業全体を担当することは困難ということである。

県:いただいている組合からの要求は、航海、機関、通信の3分野それぞれに士長を置こうとするものであり、甲板で3名、という整理ではないのではないか。

甲板作業の士長要求は、何人で行う甲板作業を、どう整理したものなのか。

組合員:甲板作業は10名で、ウインチと左右両舷に分かれて行うので、それぞれに1名の長が必要という整理である。

県:その場合、ウインチを担当する「第一鳥取丸の職位要求配置図及び説明」の(1)の士長は具体的にどのような作業、指示を行うのか。

組合員:オッターボードの着脱などである。オッターボードは1t近い鉄の固まりであり、各士長は気が抜けない。また、その際ウインチの士長と両舷の士長の息が合わなくてはいい作業はできない。

組合:その際、機関部では、機関長がブリッジで全体を操作し、実際の機関は一等機関士が管理している、ということである。

組合:県が「はやぶさ」に士長を1名設置して配慮したというのは「第一鳥取丸」から見ると違和感がある。

船員は海に出て危険だから海事職給料表が行政職給料表より一般的に水準が高いことや、それに伴う特殊勤務手当の整理については理解した。

しかし、行政では約50%程度の職員がポストに就くはずである。船長は原則、管理職にはなれないが、やはり同程度の職責は存在しているのではないか。

「第一鳥取丸」の海事職3級以上の職員が船長、機関長、士長1名の3名では、組織としてあまりに少ないのではないか。組合も現場の実態を基に、かなり絞ってポストを要求しているものである。

県:現場の実態を基とする要求であることを否定するつもりはない。

「はやぶさ」について、取締業務における現場の長として1名検討することにあわせ、「第一鳥取丸」においても、先ほどの説明を受け、甲板作業における現場の長として士長を2名置くことを、職員課長としての責任で提案する。これは、県としても説明できる案としてぎりぎりまで模索した、精一杯の提案である。

組合:「第一鳥取丸」の士長2名は、ポストとしてか。あるいは、人事任用としての話か。

県:「はやぶさ」、「第一鳥取丸」ともポストとしての話であるが、ポストがあるから必ず任用するというものではない。当該職務に対して十分係長級職としての役割を果たすために必要な業務能力、実績の水準を有している者の中から選抜することとなる。

組合:「第一鳥取丸」の場合、登用される職種は限定されるのか。

県:あらかじめ決めることはせず、甲板作業における「士長」としてすべての職種から任用できることとしたい。

組合:(1)「第一鳥取丸」、「はやぶさ」とも船長、機関長は海事職3級(係長級)、4級(課長補佐級)の複数格付けであること、(2)「第一鳥取丸」に2名、「はやぶさ」に1名の海事職3級の士長を設置すること、という提案があったということでいいか。

県:士長については、当該職務に対して十分係長級職としての役割を果たすために必要な業務能力、実績の水準を有している者の中から選抜することとなるということである。

組合:士長の任用基準について、大体でも示すことができないか。

県:国や他県等の取扱いなども調べているところであり、一定の目安は考えたいが、今この場ではっきりとは回答できない。

組合:船長、機関長の海事職4級への任用基準についてはどうか。

県:海事職2級から船長になるのか、海事職3級の士長の中から船長に任命されるのかなど、昇任前の職務の級が一つのメルクマールになるものと考えている。

組合:任用基準のイメージが必要である。

県:船員は特に限られた人数の限られた職場であり、任用基準の一般化は困難である。

組合:県は「いい人がいれば任用」というが、それなら例えば今年4月の場合、士長はどのように任用しようと考えているのか。

県:それは人事に係る話であり、現段階で回答できない。

組合:県の主張もわかるが、ポストがあっても実際の任命がなくては「空手形」になってしまう。

県:組合の懸念も理解できる。例えば、国の取扱いを聞いてみたが、国においても、三等航海士で採用し、その後一定期間の経験を積んで、概ね50歳前後で一等航海士になっているようである。これも一つの参考とすべきと考えている。

県:県としても、精一杯の検討を行った上での最終提案なので、是非前向きに検討してほしい。

組合:県の提案は了解したが、即答は無理なので一度持ち帰って協議させてほしい。

  

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