平成18年度賃金・労働条件要求書等に対する交渉の概要
○日時 平成19年1月30日(火)14時~17時10分
○場所 第33会議室(第2庁舎4階)
○出席者 知事部局:伊澤職員課長、広瀬給与管理室長、萬井室長補佐、沖村主事 中西財政課課長補佐
県職労:片山執行委員長、山中書記長、櫻井書記次長
現企労:有本執行委員長、谷本副執行委員長、上田書記長 外26名
<概要>
【カット率の見直し】
県 :前回の交渉では、昨年度の交渉の確認事項であった今後の財政見通しに対する職員への説明努力について、十分でなかったことを素直に認め、理由も含め説明させていただいたが、組合としては給与カットの廃止を検討してほしいとのことであった。交付税等財政の不透明な状況は今後も変わらないという認識のもと、今回は財政当局からも現在の財政状況を説明させていただいた上で、平成19年度はカット率を平均3%とすることを再度お願いしたい。
組合:財政状況がひっ迫しているのは職員も理解している。交付税の不透明性から将来の財政推計を示すことができないと県が説明されるのも理解はできるが、その状況の中で職員に対して協力を求めるなら、昨年度の交渉の経過を踏まえ、県としての姿勢を組合が求める趣旨も理解していただきたい。
年度中途に公表される決算数値からでも何らかの方向性を示すことができたのではないか。県のホームページから各職員が組み立てて見れば解るのかもしれないが、もう少しわかりやすいものをお願いしたい。
県 :負担を職員で分かち合うためにも財政的な見通しを示してほしいと組合の主張する気持ちは理解できるが、決算の段階で次年度以降の推測を行うことは困難である。
県 :今後の財政見通しについては、予算編成時で一定の整理ができるこの時期にならなければ出せないことも理解して欲しい。
平成18年度の中期財政見通しは、過去数年の推計値と現実の決算の乖離から将来推計は困難であるとして、公表を断念しているところであるが、本日は、来年度予算編成状況について、まだ数字が固まっていないことを前提として、現在の財政状況を踏まえ説明させていただきたい。
【説明概要】
◎資料1のP1
予算規模:H19年度 3,480億円(対H18年度△260億円)
<内訳> 一般事業:△200億
公共事業:△10%(昭和50年代初めの水準)
◎資料1のP2
財源:県税収入 560億円程度
・見かけ上の数字は増えているが、これは税源委譲で所得税が住民税に振り替わ ったため。
地方交付税 +3.2%増
・税源委譲の影響を除くと実質的には△0.8%
・税源委譲のイメージ(資料2)
所得譲与税(99億円)→県税65億+地方交付税34億
振り替わりの34億円は、従来の地方交付税に吸収されるため、一般財源は△37億円
起債 △約10%(対18年度)
起債に充てる公共事業がなく借金すらできない状態
地方財政計画では、地方税は増加し、交付税は減っている。鳥取のように交付税に依存している団体には厳しいものとなっている。
◎資料3
県債残高 18年度末 6,100億程度 →来年度は横ばいで留まる見込み
基金残高 18年度末 413億 →来年度は300億程度の見込み
・例年であれば決算で100億ぐらい戻ってくるが、造林公社等の貸付処理を短期 から長期としたため
・公債費 ここ数年減少傾向。ただし、償還期日の延長等により2~3年でまた上昇する見込み
・退職手当 他県のような2007年問題はないが、ここ数年は高止まりで推移する見込み。
現在、こういった財政状況で綱渡り的な厳しい状況に変わりがなく、さらに基金が300億円を切るような状況になると身動きできなくなるであろう。
組合:財政状況について説明があり、せっかくの機会でもあるので交渉事項でないことを前提にお聞きするが、造林公社の貸付金のような一般財源の中で見えない不良債権的要素の強いものが存在するということか。
県 :連結決算の中には入っている。造林事業により造林された木の資産価値が将来どうなるのか不透明であるので、不良債権とまでは断定できないが、現在の状況から見れば今のうちにきちんとした会計処理をしておいた方がいいという判断である。
県 :現在、お示しできる可能な限りの資料を使用して、財政状況は引き続き厳しく、綱渡り的な状況に変わりはないということ説明した。財政状況の将来推計については、今後も引き続きお示しできるよう努力するが、19年度は提案のとおりカット率を1%緩和することにご協力をいただきたい。
かつての地財ショックのような100億を超えるような財政の緊急事態以外、現在の財政状況に大きな変化が生じないという前提である限り、職員給与のカットという通常でない方法による人件費の削減は限界であると考えている。
先ほどご説明したとおりの財政状況の厳しさを理解していただき、後1年間是非協力をお願いしたい。
組合:14年度から3年間の給与カットによる財源を基に、ニューディール政策(雇用対策)を19年度までの6年間実施している。この中には単発的な事業と恒常的な事業があるが、この検証がどうなっているのか。
県 :民間企業への雇用創出支援等は計画的に実施し、既に事業終了しているものもある。現段階で平成19年度まで実施した上で、基金に残高が生じれば引き続き事業を継続することは検討する。
ただし、30人学級については当初の予定どおり19年度で終了する見込みである。また、一時的にニューディール枠により増員した県職員の採用者も計画的に減らしてきている。警察官の増員も同様である。
組合:トータルコスト予算による人員査定との関係をどう考えているのか。
県 :平成14年度当初に平成19年度末を目標に一時的な計画で増員されたものであり、トータルコストとは別物である。
組合:カットは20年度からやめると言っているが、先ほどの財政状況の説明の中で現状でも余裕がない中で何を根拠に確約できるのか。現実的に可能なのかどうか心配になる。
県 :歳入は増えない、県債も限界にきているとなれば、歳出を減らすしかなく、今年度実施したサマーレービューの取り組みなどこれからは総人件費の抑制をこれまで以上に進めなければならない。
県 :人件費を抑制するため、職員の協力を得ながら業務の見直し、定数削減を行いながら組織のスリム化を今まで以上に進めていく。
当県では業務実態を検証しながら毎年組織体制を見直していくことから、定数削減計画を具体的には立てていないが、最低でも1年に1から1.5%、場合によっては2%定数を落としていく必要があるかもしれない。
現在、若年層の雇用機会の提供という施策観点もあるので、採用ゼロとまではいかないものの、事務、技術を問わず新規採用に抑制をかけ、定数を自然に減少させている。
財政状況は厳しいが、これまでのように給与カットにより職員に協力をお願いし続けるわけにはいかないとは強く感じている。
組合:県として確約してもらえるのか、きちんと示してほしい。
県 :現在の給与削減措置は本来あるべき姿とは考えておらず20年度から止めることは県の総意である。また、少しでも減らしながら終了させることが最大の課題であることを認識して、19年度は3%カットで協力をお願いしているところである。
組合:カット率が何%が妥当なのか判断材料があるわけではないが、どのように昨年4%カットで決着したのか再度よく考えて欲しい。昨年は、今後の県の取り組みとして若年層への配慮、財政状況の公表、翌年度以降のカット率の圧縮などを総合して合意した。今回の提案に対し、我々が判断できる材料を提示していただけるものと思っていたが、何もなく、前回の交渉以降主張しているように、将来の財政見通しにおける説明責任が果たされていない状況で、昨年合意できたところまで到達していないと感じている。
職員に適切な給与を払うべきであり、現在の状況は、本来職員に払うべき給料をカットしているという認識を持っているのか確認したい。
県 :今も昔もこれからも職員に適正水準の給与を払うべきという考えに変わりはない。人事委員会勧告に基づく給料を支給することが、適正な水準としてあるべき姿であると考えている。
組合:給与削減措置については当初、組合と合意のないまま議会へ条例提案を行ったが、議会からの指摘等もあり、労使で継続して交渉し昨年度合意に至った。今回の提案についても組合との合意を念頭に協力をお願いしているという理解でいいのか。
県 :よい。
組合:総合的に判断、検討するためいったん持ち帰り、回答はその後にさせていただきたい。
【旅費の見直し】
組合:提案の中身については了解したい。ただし、先回の交渉時にも話したが、お互いに旅費の根拠を整理しきれていない部分があり、不十分だという思いが強い。特に日当については、対外的にこの根拠で将来大丈夫なのか心配でもあり、引き続き根拠を整理していただきたい。
車賃の見直しは事務折衝で資料の提示、説明を受け、職員個人の車を借りているという整理もついたことから了解することとする。
県 :対外的に説明できるからこそ提案している。日当については、過渡期的な整理であり、十分な整理に至っていないところもあると感じないわけではないが、対外的には十分説明できると思っている。
組合:県内宿泊費の実費化の考え方については了解した。なお、県外日帰旅行で21時以降の帰庁の場合に日当が支給されるのは、後泊とほぼ同じ形態ということを考慮し、職員個人の負担に配慮したものという理解でよいか。
県 :よい。
組合:事務処理の増も心配であり、今後どうあるべきなのか、何が妥当な支給方法なのか今後も継続して協議していきたい。
自家用車の車賃の25円への引き上げは、保険代等の実際に必要な経費が弁償されるということで評価したい。ただし、同じ算出根拠を使用してきた通勤手当についてどうするのか課題が残っているので、それは今後進めていくということでよいか。
県 :通勤手当は旅費とは制度が異なるものであり、今回の改正に連動はしないが、国や他県、民間の状況との均衡も踏まえながら、これからも検討していきたい。
【ノーマイカーデー運動に係る通勤手当の改正】
組合:ノーマイカー運動は組合としても推進していくべきだと考え、提案は了解する。しかし、アンケートのとおり35%の職員が本当に参加してもらえるのかどうかは少し疑問であり、改正後の実態を検証し、少なければ他の施策についても検討していってほしい。
また、組合としては、定時に帰れるような環境があれば公共交通機関を利用する職員も増えると思う。週1回、月3回に意味がないとは言わないが、ノーマイカーデーが推進できる勤務環境づくりを重点的に進めるよう要望する。
県 :ノーマイカーデーは県庁だけでなく、県内全体で公共交通機関利用の促進を図るものであり、まずは県庁が率先して行っていこうという取り組みである。通勤手当の措置はそれを進める上での一手段である。また、併せて時間外勤務の縮減へ向けた職場環境づくりも進めていきたい。
組合:導入にあたっては、職員への強要とならないよう要望する。
【特地勤務手当の見直し】
組合:特地勤務手当の見直しについては唐突な話であり、組合でも色々検討したが、先回県が説明した他の職員とのバランス、つまり特地公署への通勤者と、特地からの通勤者とのバランスの考慮では整理できていないと感じる。こういう実態があるので特地性がない、不便ではないというのなら検討できるが、もう少し整理してから再度提案をお願いする。
県 :バランスの説明は、補足的な説明である。
提案の趣旨は、特地手当はいわゆる2層構造となっており、1階部分は生活不便地にある勤務公署での勤務に考慮した手当部分であり、2階部分は当該勤務公署へ異動することに伴い、住居を移転した場合に対する加算の部分である。今回は1階部分の生活不便さについて、現在の道路事情等から判断してどれだけの特殊性があるのか、特に冬場における通勤の負担が平地におけるそれと全く同じであるとは考えていないが、通勤経路はバス路線でもあり降雪時には除雪されること、夏場における通勤等を踏まえると、給料の4%の手当措置が必要かというとそうではない、以前ほどの特殊性がないと判断したものである。
ただし、2階部分は生活不便地へ住居を移さなければならない点を考慮して残したものである。
組合:特地勤務手当は、特地指定に当たり諸手当の中では珍しく国において一定の数値化に基づき設定されているものである。人事委員会が6、7年前に整理した時にも支給地域に出向き、実態を把握しながら検討を進めていった。今回もそういうことを踏まえた上で、労使で考えていかなければいけないと思っている。
県 :具体的に実態を把握した上で、考え方の整理に時間が必要であるという組合の主張であるので、課題として引き続き検討していくという整理でやむを得ない。
【昇給日の変更】
組合:国公ラスにおいて、県が4月1日昇給とすれば、国の1月1日昇給後の基準給料に比べ、1号分、約0.5ポイントぐらい高くなってしまうことが懸念される。県として何か対策を考えているのか。
県 :確かに国公ラス上は高めに出ると思っているが、0.2から0.3ポイント強くらいかと見込んでいる。
あくまでラスの算出は国が行うものなので、県で直ちに何かできるものではないが、外部から説明を求められたときには要素として十分に説明し、理解を求めることは行っていきたい。また、現時点で4月1日を昇給日としている他県も16県あるので、機会があれば総務省に対し算出及び公表に際しての考慮を要望していきたい。現給保障措置が適用される関係で、直ちにラスに影響するものではないと考えているが、そういう働きかけもしていきたいと考えている。
組合:実際の影響がどれぐらい出るのかの検証も含め、わたり廃止後の国公ラス100を目指した給与水準を考えていく上でも、ラスへの影響把握は労使の共通認識であることを確認したい。
県 :国公ラスへの影響は、4月1日への昇給日変更による影響を排除した比較をするなど共通認識を持てばいい。
組合:県としても総務省が公表する数値について、もともと国と県の算出基準に違いがあることをマスコミ等にきちんと説明し、公表値が一人歩きし組合員が4月1日に変更することで不利益が受けないようにしていただきたい。
【特殊勤務手当の見直し】
組合:提案のあった内容については、了解する。
(休憩)
【昇給日の変更】
組合:4月1日変更することで了解する。ただし、国公ラスの影響が出た場合の対外的な説明については、是非お願いしたい。
【カット率の見直し】
組合:現在の給与カットを期限である3年間で確実に止めるということを確認するには、職員課長では受け入れられない。
宮崎県のように知事が替わりいきなり人件費300億円削減を掲げる例もあり、辞める知事でもなく、新しい知事とでもなく、これまでの経過を承知し、引き続き在職している中でのトップの総務部長としっかり確認しておきたい。
組合(現企労):現企労も同様の主張であるが、併せて、現業職については、平成19年度から給与水準見直しにより給与が下がり始め、将来についての職員の不安に対し、強く心配しており、現業職の士気の問題として廃止を要求しているところ。
本日は、財政課から直接来年度及び現在の県の財政状況をお聞きしたが、今後ますますトータルコスト予算の中で人件費削減を図ろうとしているが、その中心は現業職のスリム化が目立っている。現業職のスリム化を図り、その代替として非常勤職員化や委託を行っても、削減された人員を他の職場に配置する以上、人件費の抑制とはならないものである。それよりも現業職の職域を狭く考えるのではなく、新たな職への変更も含め、有効な人材活用を考えていって欲しい。
県 :現業職の士気の問題も含め、人材の有効活用を図っていくことが継続課題であることは共通認識である。給与カットを来年度で止めて人件費を抑制していくには、事務事業の見直しは必要不可欠である。業務スリム化方針の中でも現業職については、退職不補充に加え、人材の有効活用を進めることが大きな課題となっている。行政経営推進課(組織担当)、財政課(財政担当)、職員課(人事担当)が引き続き連携を取りながら、組合の意見も聞きつつ、今後の方針を協議していきたい。
組合:全国状況を見ても、人件費抑制のために業務のスリム化を行い人員削減を行っていることについては、一定の理解をしている。しかし、人員は削減されるが業務は減らない状況に陥ることを組合としては心配している。先日、組合からも主任・主査制度見直しに関わり、職位と業務量を過不足なく整理するよう申し入れを行ったところでもあり、その部分について是非、共通理解を確認したい。
県 :基本的な方向性としては、同感である。
組合:賃金カットは実質5年前から開始され、「若年層」については、採用以来カットを受けない正当な給料を受けていない。昨年末の確定交渉において、初任給の10号差の改善を要求し、査定昇給の枠組みの中で一定程度考慮はされたが、まだ足りていない。来年度、1%緩和して職員に協力をお願いするというのであれば、合意ということを念頭に置いて、組合の方から、1%緩和に加え若年層について前倒しで賃金カットの廃止するなら協力することを提案する。
県 :その旨は総務部長には伝える。予算編成時期であり、可能な限り早い時期に総務部長交渉を行うよう日程を調整する。