むきばんだ史跡公園には様々な植物が自生しています。その中でムクノキは、古事記や倭名類聚抄にもその名が記載されるなど、日本で古くから知られていた樹木です。
先日、深澤芳樹さん(独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所客員研究員・とっとり弥生の王国調査整備活用委員会副委員長)から、ムクノキの葉がトクサと並び、物を磨く作業に使われる植物として平家物語・巻第一「殿上闇討」に登場することを教えていただきました。調べてみたところ、かつて桐ダンスなどの木製品や漆器、べっこうなどの仕上げにムクノキの葉が使われていたようです。
そこで、園内に生えているムクノキから葉っぱを頂戴し、滑石の「勾玉」と合金の「弥生の鏡」を磨く実験をしてみました。するとムクノキの葉はサンドペーパーや耐水ペーパーと比べても遜色なく、作業を進めることができました。また、スギ材で匙(さじ)を作り、表面の仕上げにムクノキの葉を使ってみたところ、削り加工によって出来たスギ表面の毛羽立ちを取り、美しい木目の仕上がりとなりました。驚いたことに、研磨作業中にムクノキの葉から水分がでることはなく、葉の色をうつしてしまうこともないのです。大変不思議な葉っぱです。
身近な植物から道具を作り出し、利用していた弥生時代の人々。もしかしたら、妻木晩田遺跡の木製品や骨角器、金属器の表面仕上げに、ムクノキは一役買っていたのかもしれませんね。

ムクノキの葉
触るとザラザラしています。珪酸(ガラス)質が含まれているようです。

ムクノキの葉で磨いてツルツルピカピカになった滑石の「勾玉」
普段の体験で行うキズ取り作業(サンドペーパー240番)と光沢を出す磨き上げ(耐水ペーパー1000番)をしたような仕上がりになりました。
「弥生の鏡」を耐水ペーパー1000番で磨いた部分とムクノキの葉で磨いた部分の比較
どちらも同じような光沢が出ているのがわかります。