2019年8月 タイ王国及び東南アジア諸国の動向

    タイ王国及び他の東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

    1. ミャンマー基本情報
    2. 投資環境の整備の遅れ
    3. 国際社会から非難を浴びるロヒンギャ問題
    4. 諸外国からミャンマーへの投資額
    5. まとめ
    6. 10月~12月に行われる主な展示会・見本市

なお、全文版では、10月~12月に行われる主な展示会・見本市の詳細やタイの経済統計を1ページにまとめた「ワンページタイ経済」も併せてご覧いただけます。

  

タイ王国及び他の東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

 こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。

 当ビューローがあるタイの西側と国境を接するミャンマーは、かつては長い間軍事政権が続き民主化運動も弾圧されてきましたが、2011年に民政移管が実現、国際社会への復帰を果たし経済成長が有望視される国家として注目を浴びました。2016年にミャンマー民主化のリーダー、アウン・サン・スー・チー氏が国民の圧倒的な支持を集め、国の事実上のトップの座についてから3年、高い成長を続けてきた経済はかげりが見え始め、国際社会からはロヒンギャ問題で非難を浴び、国内でも各地で数民族によるデモが相次いで起こるなど、スー・チー氏は正念場を迎えています。

 今月は、かつて『アジア最後のフロンティア』として注目されたミャンマーの『今』をお伝えします。

1.ミャンマー基本情報

データ出所:外務省、JETRO

  1. 正式国名:ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)
  2. 人口:5,371万人
  3. 国土:68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)
  4. 首都:ネーピードー(2007年より)
  5. 気候:国土が南北に長いため地域によってかなり異なり、基本的に中部から南部にかけて熱帯、北部は温帯
  6. 民族:ビルマ族(約70%)、その他多くの少数民族
  7. 宗教:仏教(90%)、キリスト教、回教等
地図

ミャンマーの経済概況

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
実質GDP成長率(%) 8.70 7.03 5.15 6.33 6.69
1人当たりGDP(USD) 1,279 1,292 1,157 1,166 1,298
失業率(%) 4 4 4 4 4

※1人当たりGDPと失業率はIMFによる推定値

 ミャンマーはここ数年、高い経済成長率を続けてきましたが、徐々に悪化傾向にあるようです。ミャンマー商工会議所の調査によると、企業の景況感は2016年以降、「非常に良い」「良い」が下降を続け、逆に「非常に悪い」「悪い」と答えた企業数が増加傾向にあります。IMFの経済見通しも下方修正が繰り返されるなど、ミャンマーの経済成長は減速しているとする見方が強まっています。

2.投資環境の整備の遅れ

 世界銀行が世界各国におけるビジネス関連の手続きに掛かる手間・時間・費用などを指数化し、毎年発表している「ビジネスのしやすさランキング」によると、ミャンマーはASEAN加盟国の中でも最下位を続けており、環境整備が進んでいるとはいえない上、周辺国に引き離されています。その他にも電力や道路などのインフラ整備が遅れていることは長年指摘され続けていますが、いまだに十分に改善されているとはいえません。根本的な理由として、国のインフラ整備に関する公共事業予算が不足していることが考えられます。日本からのJICA(国際協力機構)や世界銀行、ADB(アジア開発銀行)からの支援を受けてもまだ十分ではありません。インフラ整備は海外からの投資を呼び込むには不可欠であり、整備の遅れは経済成長の足を引っ張る要因になるので、今後は官民連携制度を導入し、外資の民間資本の受け入れが待たれるところです。

ビジネスのしやすさランキング

国・地域名 2017年 2018年 2019年
シンガポール 2位 2位 2位
マレーシア 23位 24位 15位
タイ 46位 26位 27位
日本 34位 34位 39位
ブルネイ 72位 56位 55位
ベトナム 82位 68位 69位
インドネシア 91位 72位 73位
フィリピン 99位 113位 124位
カンボジア 131位 135位 138位
ラオス 139位 141位 154位
ミャンマー 170位 171位 171位

データ出所:世界銀行

3.国際社会から非難を浴びるロヒンギャ問題

 「ロヒンギャ問題」とは、仏教徒が多くを占めるミャンマーにおいてイスラム系少数民族であるロヒンギャ族が差別や迫害を受けている問題です。2017年8月にミャンマーとバングラディシュの国境付近で、ロヒンギャ族の武装組織が警察施設を襲撃したことをきっかけに各地で武力衝突が発生、ミャンマー軍は軍隊を出動させて掃討作戦を開始し、武装組織や暴徒化したロヒンギャ族の村人だけでなく、一般市民も巻き込んで虐殺したと報じられています。この掃討作戦により、6000人を超えるロヒンギャ族が死亡したとされていますが、ミャンマー政府は一般市民に対する攻撃を否定し、死亡者数も400人程度と主張しました。この事件後、迫害を恐れたロヒンギャ族がバングラディシュをはじめとした近隣諸国へ避難し、大量のロヒンギャ族が難民となってしまいました。その数は70万人とも90万人ともいわれています。

 国連はこの一連のミャンマー政府・軍の対応を「民族浄化」と非難し、人権を重視する欧米ではミャンマーへの批判が強まり、EUは特恵関税の停止をほのめかしています。欧米やイスラム教徒が多い中東、アフリカからの旅行者数も大きく減少し、観光業界にも大きく影を落とすこととなりました。

 ロヒンギャを巡る問題の根底には、半世紀以上前から続く深い差別意識があります。仏教徒が9割を占めるミャンマー国民の大部分が、イスラム教徒であるロヒンギャ族を「不法移民」とみなし、ミャンマー政府はロヒンギャ族に対してミャンマー国籍を認めていません。ミャンマー国民のロヒンギャ族に対する反感は根強く残っており、2017年11月にミャンマーとバングラディシュの両政府間でロヒンギャ難民の帰還に関する合意が結ばれましたが、当のロヒンギャ族が「戻ればまた迫害されるのではないか」という恐怖心により帰還を拒否するなど、事態打開の目処が立っていません。強力な指導力を期待されるスー・チー国家顧問も、民主化したが故に国内世論と国際社会との板ばさみ状態にあり、またいまだに治安維持についての実権を握る軍部からの反発を恐れ、問題解決に向けて大きな動きが取れないというのが実情です。

4.諸外国からミャンマーへの投資額

 ミャンマー投資企業管理局(DICA)の統計によると、2018年の外国直接投資認可額(ティラワSEZ<経済特区>を除く)は36億ドルとなり、前年比36%減少となりましたが、件数ベースでは製造業の件数が増加し、過去最高の224件となりました。業種別では製造業13億ドル(前年比26%減)、運輸・通信業10億ドル(10%増)、不動産開発3億ドル(73%減)が上位となっています。製造業については、2017年にセメント製造や内需向け生活用品製造で1億ドルを超える大規模投資が5件あった一方、2018年は縫製業などの比較的小規模の認可件数が多くなりました。不動産開発については、民政移管が実現した2011年から2013年にかけて不動産バブルが発生し、ヤンゴンの家賃価格は急上昇しましたが、今ではピーク時の30%前後下落し、不動産市場は落ち着いたようです。

 国・地域別の投資額では、シンガポール18億3千万ドル(26件)、中国5億5千万ドル(97件)、香港3億1千万ドル(28件)、英国1億8千万ドル(5件)、タイ1億6千万ドル(8件)、日本1億5千万ドル(11件)の順となっています。

 DICAが公表する上記の統計には、多くの日本企業が投資するヤンゴン近郊のティラワSEZへの認可件数やシンガポールなどの第三国を経由する投資は含まれていませんが、ティラワSEZへの日本企業の投資は1億2千6百万ドル、第三国経由の投資が9千7百万ドルとなり、すべて合計すると3億7千5百万ドル(前年比75%減)が日本企業から投資されました。投資認可額減少の主な要因としては不動産開発案件の減少によるものと思われますが、ティラワSEZでの製造業認可については安定して推移しています。

5.まとめ

 これまで述べてきた通り、ミャンマーは多くの問題点やマイナス要素はを抱えていますが、それでもこの数年は経済成長率は5%~8%をキープし、IMFによる2019年の予測も6%台後半を維持しています。2018年8月には会社法が約100年ぶりに全面改正されて、外資会社の規定が緩和(旧法:1株でも外資が入っていれば外資会社 新法:外資比率35%以下の場合は内資会社)されるなど、ミャンマー政府も徐々にではありますが投資環境の整備に乗り出していますので、これからも注目すべき市場であることは変わりません。

10月~12月に行われる主な展示会・見本市

タイ

  • ASEANBIKE
  • Worlddidac Asia 2019
  • STYLE BANGKOK October 2019
  • COSMEX 2019
  • ACCS 2019 - 5th Asia Cold Chain Show
  • METALEX 2019
  • CEBIT ASEAN Thailand
  • Asia-Pacific Metal Industry Exhibition (METAL AP)

インドネシア

  • International Indonesia Seafood & Meat Expo
  • Refrigeration & HVAC Indonesia
  • IFMAC and WOODMAC 2019
  • HOSPITAL EXPO 2019
  • Hospitality Indonesia 2019
  • ALLPACK INDONESIA 2019 The 20th International Exhibition on Processing, Packaging, Automation, Handling for Food & Beverage, Pharmaceutical and Cosmetic
  • JIPREMIUM 2019 Jakarta International Premium Products Fair
  • Glasstech Asia 2019 17th International Glass Products, Glass Manufacturing, Processing & Materials Exhibition
  • SIAL INTERFOOD 2019
  • PLASTICS & RUBBER INDONESIA 2019
  • MANUFACTURING INDONESIA 2019

ベトナム

  • VIETNAMPLAS 2019 19th Vietnam International Plastics & Rubber Industry Exhibition
  • METALEX Vietnam 2019
  • MTA HANOI 2019
  • VIETWATER 2019
  • MARINE VIETNAM 2019
  • Vietnam Foodexpo 2019
  • VIJF 2019 The 28th Vietnam International Jewelry Fair 2019
  • VTG 19th Vietnam Int'l Textile & Garment Industry Exhibition
  • The 8th International Plastics & Rubber Technologies & Materials Exhibition for Vietnam
  • HARDWARE & HANDTOOLS EXHIBITION IN VIETNAM
  • Vietnam Medipharm Expo-The 26th International Medical, Hospital & Pharmaceutical In HANOI
  • VIETBUILD HOME 2019

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