平成23年度議事録

平成23年7月11日~7月13日・所管事項に係る県外調査

1 調査日時・箇所・内容

7月11日(月)
○石川県庁(石川県)
  ふるさといしかわ子育てファンドについて
  子育て応援エンゼルネット事業について
○加賀市役所、小規模多機能ホームききょうが丘(石川県)
  地域包括ケアシステムの概要について
7月12日(火)
○富山県庁(富山県)
  障がい者の自立支援について
  マイ保育園事業について
○社会福祉法人フォーレスト八尾(やつお)会(富山県)
  社会福祉法人のまちづくりについて
○富山県民間保育連盟(わかくさ保育園)(富山県)
  マイ保育園事業について

2 調査委員

浜田委員長、砂場副委員長、山口委員、小谷委員、野田委員、横山委員、市谷委員、濵辺委員、森委員

3 随行者

鳥取県議会事務局議事調査課 前田副主幹、伊藤副主幹

4 調査報告

 今回は、障がい者の自立支援、高齢者福祉及び子育て支援をテーマに調査を行った。
 障がい者自立支援分野において、フォーレスト八尾会は、障がい者と健常者の距離感を縮めるため、既存の“作業所”の枠を超え、誰でも出入りできる“単なる事業所”を目指し、和紙を使った土産品の制作、紙風船を活用したまちづくり、空き店舗を活用した喫茶店の運営、桑畑の再生を通じた製薬会社との連携など、障がい者や社会福祉法人が地域資源を活かしながら地域を巻き込んでまちおこしに取り組んでいることに特徴がある。
 高齢者福祉分野において、加賀市の地域包括ケアシステムは、“いかにも施設”といった雰囲気を出さないよう、大規模事業所を整備せず、生活圏域単位で、少人数の介護を行う小規模事業所を、街中の既存施設の改修により整備することに特徴がある。
 施設があればあるほど、在宅でも可能な方が施設に頼ってしまう傾向があり、結果的に待機者が減らない状況にあることから、施設サービスに比べて空きのある在宅サービスをベースとした24時間サービスの可能性を探っているところ。
 また、子育て支援分野において、石川県の「ふるさといしかわ子育て応援ファンド」は、石川県内の6金融機関が金利を店頭より高く設定した定期預金・投資信託を販売、運用益の一部を子育てにやさしい企業推進協議会に寄付し、これを原資に子育て支援事業を実施。金融機関には少なからず負担感があるものの、社会貢献を目的として取り組んでおり、行政としては、如何にビジネスに繋がるものにしていくかが課題となっている。
 同じく「子育て応援エンゼルネット事業」は、子育て家庭、地域住民、ボランティアなどが相互に子育てを応援しあい、感謝の気持ちを表すエンゼル券を受け渡し、地区に助成金として還元する仕組み。一歩一歩、着実に社会全体で子育てを支援する機運が醸成されつつあるようだ。
 また、富山県の「マイ保育園事業」は、「かかりつけの保育園」として、育児に係る講座・教室、相談会、体験会や一時保育を行うなど、子育ての不安軽減に好評。平成23年度からは公立保育園にも門戸を広げるなどしている。
 何れもユニークな取り組みではあるが、話を伺う中で、改めて考えさせられた点もある。印象に残った言葉をいくつか紹介させていただく。

○障がい者自立支援
  • 障がい者の親も高齢化する。障がい者本人が地域で生きていかないといけない。若いうちに作業所に通い、店番をする中で地域と交わりを持つようになる。(富山県)
  • 施設では衣食住全てが満たされるが、24時間見えない檻の中。”家”ってすごい。蚊に刺されるし、待遇は良くないのに「家に帰りたい」。施設は、本人にとっては”会社”。(フォーレスト八尾会)5か年で工賃の倍増を目標に取り組んでいるが、現実は目標に程遠い。内訳を見ると、下請型事業所ではリーマンショックの平成21~22年度で工賃が落ち込んだのに対し、パンや地域に特化した商品などの自主製品型事業所では工賃が伸びている。(富山県)
  • 法律は高いところでつくられる。障害者自立支援法では「利用料払って働くの?」日払いなので電卓を弾く。これは福祉じゃない。福祉はもっと温かいはず。(フォーレスト八尾会)
  • (作業所の)後継者がいない。喰っていけない。生活を保障できない。仕事の質を高めるには相応の報酬を払わないといけない。(フォーレスト八尾会)
○高齢者福祉
  • 地域や家族と離れずに暮らすための支援を行うための立地を重要視し、地域の様々な人が集える場へとすべく、立地の重要性や様々な社会資源との連携の可能性を念頭に置いている。(加賀市)
○子育て支援
  • 親がリフレッシュすることはとても大事。「葬儀が理由なら預けてもOK、映画が理由なら預けては駄目」とならないように。(富山県)
  • 放課後児童クラブは国基準で18時までだが、富山県では以降分を単県で対応。(富山県)

 障がい者福祉においては、施設のあるべき姿をどう描くか、如何に早いうちから社会参画を意識付けるか、マーケティングの重要性に気づいているか、行政の関わり方に問題はないかが、高齢者福祉においては、ケアのあるべき姿をどう描くかが、子育て支援においては、子育て支援の精神・思想の持ち方、顧客ニーズを如何に掴むかが、それぞれ問われている。

 最後に、公的資源配分のあり方について。
 富山県民間保育連盟で伺ったのは、「公的な支援は、連盟や協会よりも現場(園や地域)に必要」との声。しかし、それ以上に切実なのが障がい者のための作業所への支援のあり方。
 経済産業省の「ソーシャルビジネス55選」にも選出されたフォーレスト八尾会でさえ、“高いところでつくられた”制度に翻弄されているのが実情。
 現行の法や予算のあり方など諸問題も踏まえつつ、公的資源配分のあり方について、改めて振り返ってみることも必要であろう。

 

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