組織犯罪対策要綱の制定について(例規通達)

組織犯罪対策要綱の制定について(例規通達)

平成23年8月26日
鳥組例規第8号・鳥県民例規第5号・鳥生企例規第30号・鳥少例規第3号・鳥生環例規第4号・鳥刑企例規第20号・鳥捜一例規第8号・鳥捜二例規第5号・鳥交企例規第12号・鳥交指例規第4号・鳥備一例規第14号・鳥備二例規第3号
改正  平成24年2月1日鳥組例規第2号・鳥県民例規第1号・鳥生企例規第1号・鳥少例規第1号・鳥生環例規第2号・鳥刑企例規第2号・鳥捜一例規第2号・鳥捜二例規第1号・鳥交企例規第1号・鳥交指例規第1号・鳥備一例規第2号・鳥備二例規第1号、令和元年鳥務例規第7号

対号 平成17年3月24日付け鳥組例規第1号外共発 組織犯罪対策要綱の制定について(例規通達)
組織犯罪対策については、対号例規通達に基づき推進してきたところであるが、組織犯罪をめぐる情勢は、暴力団が市民生活の大きな脅威となっているほか、犯罪のグローバル化の進展、あらゆる犯罪の分野における犯罪インフラの構築、根強い薬物需要と薬物供給の安定・拡大等がみられるなど、依然として激しいものがあり、こうした情勢に的確に対処し、効果的な組織犯罪対策を推進するため、対号例規通達を全部改正し、別添のとおり「組織犯罪対策要綱」を制定し、平成23年8月26日から施行することとしたので、この趣旨を踏まえた効果的な施策を講じ、組織犯罪対策の実効を期されたい。
別添
組織犯罪対策要綱
第1 要綱の目的
この要綱は、組織犯罪が治安に重大な影響を与えるものであることに鑑み、県警察が一体的に犯罪組織の実態を的確に把握し、所要の対策を講じ、効果的な打撃を与えることにより、犯罪組織の弱体化及び壊滅を図り、もって市民生活の安全と平穏を確保するため、必要な基本的事項を定めることを目的とする。
第2 組織犯罪対策の基本姿勢
組織犯罪対策を推進するに当たっては、収集した犯罪組織に関する情報を集約し、及び分析してその実態を解明するとともに、分析結果に基づく犯罪組織の弱体化及び壊滅に向けた統一的な戦略を立案した上で、当該戦略に基づき、犯罪組織に対し、激しい対決姿勢を堅持し、一体的な取締りその他の諸対策を実施することを基本姿勢とする。あわせて、不断に創意工夫を図り、効果的かつ適切な情報収集活動の推進、捜査手法の高度化、県民各層、関係機関、関係団体等との幅広い連携等に努めることにより、悪質化し巧妙化する、又は新たに出現する犯罪組織に対して戦略的な対策を実施するものとする。また、組織犯罪は、社会・経済の変化に応じて常に変化していくものであることから、広い視野での情報の収集・分析に努め、治安の脅威となっている犯罪組織やその活動実態を的確に把握し、適時適切な対策を講ずるものとする。
第3 組織犯罪対策を推進するための基盤整備
1 組織犯罪対策の推進体制の整備
(1) 組織犯罪対策を推進するための基盤整備
警察本部において、暴力団対策、薬物銃器対策、国際組織犯罪対策及び犯罪収益対策を一元的に所掌する体制を整備するとともに、警察本部長を長とし、関係部署が参加する「鳥取県警察組織犯罪対策推進本部(以下「推進本部」という。)」を設置し、組織犯罪対策部門を始めとする警察の全ての部門が緊密に連携し、組織犯罪対策を推進すること。あわせて、組織犯罪対策部門と関係部門との間における組織犯罪の捜査に係る調整が円滑に行われるようにし、また、犯罪組織に関する情報の効果的な集約及び分析、他府県警察間との円滑な連絡調整を図るため、その効果的な運用を図ること。
(2) 組織犯罪対策地区取締推進本部の設置
各警察署は、警察本部の体制に準じた組織犯罪対策地区本部(以下「地区本部」という。)を設置すること。警察署長は、地区本部の運営に当たり、各課(係)の連携など警察諸般の機能を有機的に運用し、総合力の発揮に努めること。
2 専門的な技能を有する職員の育成
犯罪組織に関する情報の収集、集約及び分析の手法、警察庁情報管理システムによる暴力団等情報管理業務等の情報技術の活用方法、組織犯罪の取締りに効果的な捜査手法、社会から反社会的勢力を排除するための各種制度等の立案及び運用、疑わしい取引に関する情報の効果的な活用方法、外国人を対象とした犯罪の捜査に必要な語学能力等について、実践的な教養を実施し、専門的な技能を有する職員を育成すること。
第4 組織犯罪に係る情報の収集、分析等
1 県警察における情報の収集、分析等
(1) 情報の収集
組織犯罪の情報収集は、全ての部門が緊密に連携し、次の情報を収集すること。
(ア) 犯罪組織の実態に関する情報
(イ) 犯罪組織の取締りに資する情報
(ウ) (ア)及び(イ)に掲げるもののほか、組織犯罪対策を効果的に推進するため必要な情報
(2) 情報の分析等
刑事部組織犯罪対策課(以下「組織犯罪対策課」という。)の総括情報官(「組織犯罪対策に係る総括情報官等の設置及び運用について(例規通達)」(平成16年3月23日付け鳥暴例規第1号外共発)に定める者をいう。以下同じ。)は、(1)により収集した情報を集約するとともに、集約した情報について、他の情報との関連付けを図るなど所要の評価・分析を行い、その分析結果を関係部署に適切に還元すること。
(3) 国内関係機関等との情報交換
組織犯罪対策課は、情報の収集、集約及び分析に当たり、国内関係機関等との情報交換を強化すること。
(4) 効果的かつ適切な情報収集活動の推進
組織犯罪対策を効果的に推進していくためには、犯罪組織の実態等組織犯罪対策に資する確度の高い情報を入手することが不可欠であることから、情報収集活動が適切に行われるよう、組織的に検討し、これを推進すること。
(5) 警察庁への報告
総括情報官は、警察庁に対し、次の情報を報告すること。
(ア) 組織犯罪対策に係る全国的な戦略の立案に資する情報
(イ) 組織犯罪対策に係る各都道府県警察の間の調整に資する情報
(ウ) (ア)及び(イ)に掲げるもののほか、警察庁が組織犯罪対策のため必要とする情報
2 警察情報管理システム等の情報技術の活用
効果的かつ効率的な組織犯罪対策を推進するため、犯罪組織に関する情報の収集、集約、報告、分析及び還元に当たっては、警察情報管理システム等の情報技術を積極的に活用すること。
なお、組織犯罪対策課は、情報通信技術を活用するに当たって、中国四国管区警察局鳥取県情報通信部との緊密な連携を図ること。
第5 戦略的な組織犯罪対策の推進
1 統一的な戦略の策定と戦略に基づく対策の実施
警察庁の分析結果に基づいて、全国的な組織犯罪対策のため、対策の重点とする犯罪組織及びこれを支える犯罪インフラ(犯罪を助長し、又は容易にする基盤をいう。)対策の手法等の基本的な考え方を記す統一的な戦略(以下「組織犯罪対策戦略」という。)を策定し、その組織犯罪対策 戦略の下、推進本部及び地区本部においても重点を定めて集中的かつ計画的に組織犯罪対策を実施すること。
2 各都道府県警察間の連携
組織犯罪対策戦略に基づく組織犯罪対策の円滑かつ効果的な実行を図るため、他の都道府県警察と相互に、かつ、緊密に情報交換を行うとともに、合同・共同捜査等の捜査共助を積極的に推進すること。
3 関係部門間の連携
警察の組織力をいかした組織犯罪対策を推進するため、組織犯罪対策部門と関係部門が犯罪組織に関する情報や効果的かつ効率的な捜査手法の共有等を図り、組織犯罪の取締りを始めとする諸対策を連携して推進すること。
4 関係機関及び関係団体等との連携
組織犯罪対策戦略に基づく組織犯罪対策の実施に当たっては、情報提供、指導、広報啓発活動等による関係団体等からの協力の確保に努めるとともに、事件検挙のみならず、他の各種行政施策の推進に当たっても、関係機関の権限の発動を促すなど、緊密な連携に努めること。
5 県民の理解と協力の確保
県民と警察との間の多様なネットワークを効果的に活用するなど、あらゆる機会を通じて、組織犯罪の実態、組織犯罪に対する警察の取組姿勢等に関する積極的かつ効果的な広報を実施することにより、組織犯罪を拒絶する気運の高揚を図り、組織犯罪対策への県民の理解と協力を確保すること。
第6 組織犯罪対策に有効な捜査手法等の積極的活用
犯罪組織の資金源を遮断する事件等犯罪組織の中枢に打撃を与える取締りを推進するため、各種法令の多角的活用を図り、装備資機材の整備及び効果的な運用を推進するとともに、次の点に留意すること。
(1) 組織犯罪の取締りに有効な捜査手法等の積極的な活用
通常の捜査手法のみにとらわれることなく、コントロールド・デリバリー、譲受け捜査、通信傍受等の組織犯罪の取締りに有効な捜査手法を積極的に活用すること。また、組織犯罪対策部門のみによる取締りに固執することなく、関係部門との連携を図ることにより、関係部門に蓄積された技術や情報を積極的に活用すること。
(2) 資金源を遮断するための取締り等の推進
犯罪組織の資金源を遮断するため、「鳥取県警察犯罪収益対策推進要綱の制定について(例規通達)」(平成21年2月10日付け鳥組例規第1号外共発)の別添「鳥取県警察犯罪収益対策推進要綱」を踏まえ、効果的な犯罪収益対策を推進すること。
(ア) 疑わしい取引に関する情報の積極的活用
犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)第11条第1項の規定により国家公安員会から提供された情報について、分析、関係部署への提供等を行う犯罪収益解明班の体制を確立するとともに、関係部署による主体的な活用を図ることにより、組織犯罪の取締り等に積極的に活用すること。
(イ) 犯罪収益等に着目した取締りの推進
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第9条、第10条若しくは第11条又は国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年法律第94号。以下「麻薬特例法」という。)第6条若しくは第7条に規定する不法収益等、犯罪収益等又は薬物犯罪収益等に係る犯罪の検挙に努めること。また、各種犯罪の捜査において、組織的犯罪処罰法第13条若しくは第16条又は麻薬特例法第11条若しくは第13条の規定による犯罪収益等又は薬物犯罪収益等の没収又は追徴が適切に行われるように証拠の収集に努めるとともに、組織的犯罪処罰法第23条第1項又は麻薬特例法第19条第3項の規定による没収保全命令の請求を積極的に行うこと。さらに、組織的犯罪処罰法第22条第1項又は麻薬特例法第19条第1項の規定による没収保全命令及び組織的犯罪処罰法第42条第1項又は麻薬特例法第20条第1項の規定による追徴保全命令について、検察官による請求が円滑に行われるよう、必要な疎明資料の収集及び提供に努めること。
(3) 組織犯罪に対する加重処罰規定及び両罰規定の積極的活用
組織的犯罪処罰法第3条若しくは第7条、麻薬特例法第5条又は銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)第31条第2項若しくは第3項、第31条の3第3項若しくは第4項若しくは第37条の規定に基づき、組織犯罪に対して適正な刑罰が科されるよう、所要の捜査に努めること。
(4) 捜索・差押え及び証拠品の分析の徹底
組織犯罪の捜査においては、当該犯罪の組織的な背景の解明に資する証拠を収集するため、必要な場所を徹底的かつ広範囲に捜索し、多数の関連証拠品を差し押さえるとともに、これらの証拠品を徹底して分析すること。
第7 組織犯罪対策の重点
1 暴力団対策の推進
(1) 実態解明
ア 実態解明の推進
暴力団対策を効果的に推進するため、次に掲げる者(以下「暴力団等」という。)の活動実態、組織の運営方法及び資金獲得活動の実態を始め、他の暴力団や国際犯罪組織等との人的又は資金的つながり、対立・友ぎ関係等その組織実態の全般を解明すること。
a 暴力団(その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。以下同じ。)
b 暴力団員(暴力団の構成員をいう。以下同じ。)
c 暴力団準構成員(暴力団又は暴力団員の一定の統制の下にあって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがある者又は暴力団若しくは暴力団員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力する者のうち暴力団員以外のものをいう。以下「準構成員」という。)
d 暴力団関係企業(暴力団員が実質的にその経営に関与している企業、準構成員若しくは元暴力団員が実質的に経営する企業であって暴力団に資金提供を行うなど暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し、若しくは関与するもの、又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し、暴力団の維持若しくは運営に協力している企業をいう。以下同じ。)
e 総会屋等(総会屋、会社ゴロ等企業等を対象に不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。以下同じ。)
f 社会運動等標ぼうゴロ(社会運動若しくは政治活動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。以下同じ。)
g 特殊知能暴力集団等(aからfまでに掲げる者以外のものであって、暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的なつながりを有し、構造的な不正の中核となっている集団または個人をいう。以下同じ。)
イ 指定資料の確実な整備
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。以下「暴力団対策法」という。)に基づく暴力団の指定が適切に行われるよう、指定に必要な資料を確実に整備すること。
(2) 暴力団に対する取締り
ア 資金獲得活動に打撃を与える取締り等の推進
(ア) 資金獲得犯罪の取締りの推進
暴力団の主要な資金源の把握に努めるとともに、これを封圧し、収益の剥奪等を図るという観点から、暴力団の主要な資金獲得活動を担う構成員、傘下組織及び暴力団関係企業について、幅広い犯罪態様を視野に入れて資金獲得活動に伴う各種違法行為の取締りの徹底を図ること。
(イ) 暴力的要求行為等に対する取締りの推進
暴力的要求行為等の暴力団対策法に違反する行為の積極的な把握に努め、各種命令を迅速かつ的確に発出すること。特に資金獲得を阻止する効果が高い再発防止命令を積極的に活用するなど、命令の効果的な運用を図るとともに、当該命令の遵守状況を把握し、違反行為の徹底検挙に努めること。
(ウ) 様々な手法を駆使した資金源対策の推進
暴力団の資金源活動に効果的に打撃を与えるため、暴力団関係企業等については、事件検挙のみならず、各種業・取引からの排除を徹底するほか、威力利用資金獲得行為に係る不法行為について、暴力団対策法第31条の2の規定による指定暴力団の代表者等に対する損害賠償責任の追及を支援するなど、様々な手法を駆使して暴力団の資金剥奪に努めること。
イ 人的資源に打撃を与える取締り
(ア) 首領等の検挙及び長期隔離の推進
暴力団に対する内偵体制を確立するなどして、組織の首領等に係る犯罪を徹底して掘り起こして検挙するとともに、組織犯罪に対する加重処罰規定を積極 的に適用するなどして、その長期隔離に努めること。
(イ) 暴力団員及び準構成員の大量反復検挙
暴力団の弱体化及び壊滅を図るため、暴力団員及び準構成員の大量反復検挙を図るとともに、暴力団を利用する者についても取締りを徹底すること。
ウ 対立抗争事件に対する取締り
対立抗争要因の早期把握に努め、先制的検挙等によりその未然防止を図ること。事件発生時においては、事案の解明と拡大防止のため、速やかに被疑者を検挙するとともに、集団警備力による効果的な警戒活動の実施、暴力団対策法第15条第1項又は第2項の規定による事務所の使用制限命令の発出、抗争団体の暴力団員の大量集中検挙等による地域住民の安全の確保に努めること。また、暴力団対策法第30条の5第1項の規定による賞揚等禁止命令の効果的運用を図るとともに、地域住民による事務所撤去運動や暴力団対策法第31条の規定による指定暴力団の代表者等への損害賠償責任の追及等を積極的に支援すること。
エ 県民に危害を与える犯罪の取締り
暴力団による県民に危害を与える犯罪については、徹底した捜査により被擬者の早期検挙を図り、その全容を解明し、再発防止を図ること。
(3) 暴力団関係企業等に対する取締り
市民生活の安全に対し脅威を与え、又は暴力団との関係を背景に違法又は不当な行為を行う暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ及び特殊知能暴力集団等に対しては、暴力団と同様に、資金獲得活動及び人的資源に対して打撃を与える取締りの徹底を図ること。
(4) 共生者等対策
暴力団に利益を供与することにより、暴力団の威力、情報力、資金力等を利用し、自らの利益拡大を図る者(以下「共生者」という。)は、暴力団と共に健全な経済社会に寄生し、これを侵食していることから、このような共生者と暴力団との共生関係を解明し、その事件検挙を積極的に推進することのほか、鳥取県暴力団排除条例(平成23年鳥取県条例第3号。以下「暴力団排除条例」という。)、公共事業や企業活動からの暴力団排除の枠組み等を効果的に活用するなどして、共生関係の瓦解を図ること。また、暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者については、暴力団がその関係を利用して社会・経済に不当な影響を及ぼすおそれがあることに加え、その関係が共生関係へと変化するおそれもあることから、暴力団員に対する取締りや暴力団排除活動等を通じてその実態を的確に把握し、公共事業や企業活動からの暴力団排除の枠組み等を効果的に活用するなどして、暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者を通じた暴力団の社会・経済への不当な介入や影響の抑止を図ること。
(5) 暴力団排除活動
ア 暴力団排除活動の配意事項
暴力団排除活動は、一般的な世論の喚起にとどまることなく、暴力団等の組織又は活動に打撃を与えるよう、取締りと有機的に連動させつつ、特定の職域や地域を対象として個別的かつ具体的に行うこと。また、共生者等の暴力団と密接な関係にある者に対しては、事件検挙はもとより、暴力団排除条例、公共事業や企業活動からの暴力団排除の枠組み等を効果的に活用するなどして、社会に暴力団と関係を持つことが不利益につながるとの認識を浸透させ、社会全体で暴力団を排除する機運を高めること。さらに、暴力団排除活動を推進するとともに、県民を暴力団員等(暴力団員、準構成員、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ及び特殊知能暴力集団等をいう。以下同じ。)による違法又は不当な行為から守るため、警察の保有する暴力団に関する情報の積極的かつ適切な部外への提供を行うこと。
イ 関係機関と連携した資金獲得活動の封圧
あらゆる警察活動を通じて収集した資料に基づいて、営業許可、公共事業の発注等に関係する行政機関の権限の発動を捉し、暴力団関係企業を許可等に係る営業、公共事業等から排除すること。また、関係機関と連携して、公的給付及び公益事業に係る暴力団員等による違法又は不当な行為を防止するとともに、公共施設、公営競技、露店営業等から暴力団等を排除すること。
ウ 職域及び地域における暴力団排除活動に対する支援
暴力団員等による不当要求を受けやすい風俗営業、性風俗関連特殊営業、建設業等の営業所に対する暴排ローラー(営業所を網羅的に訪問して行う実態把握活動をいう。)を実施することにより、暴力団員等による潜在する不当要求事案を掘り起こし、その拒絶を捉すなど、職域及び地域における暴力団排除活動に対する適切な支援を行うこと。また、関係機関等と連携し、地域住民による暴力団排除活動の指導及び支援を行うことなどにより、暴力団事務所の撤去及び進出阻止並びに義理掛け行事の阻止を図ること。
エ 行政機関等及び企業に対する違法又は不当な行為の排除
暴力団員等が、不正な利益を得る目的で、地方公共団体等の行政機関等又は企業(その職員を含む。)を対象として行う違法又は不当な行為を排除するため、財団法人暴力追放鳥取県民会議(以下「県民会議」という。)や鳥取県弁護士会(以下「弁護士会」という。)と連携し、行政機関等、企業、業界団体、鳥取県企業防衛対策協議会等との連絡体制の確立、職員に対する責任者講習の実施及び適時適切な支援措置等の対策を講じること。また、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の別紙「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の普及に努めるとともに、各種業界団体との連携を図りつつ、契約約款等への暴力団排除条項の導入を推進するなど、暴力団等との関係遮断に取り組む企業等に対して、適切な支援を行うこと。
オ 暴力団への人的供給の遮断と暴力団からの離脱・社会復帰の促進
少年に対する加入強要、暴力団員の脱退妨害等に対する暴力団対策法の規定による命令の発出等の措置を講じるとともに、暴力団からの離脱者に対しては、関係機関等と連携し、社会経済活動への参加を確保するための支援を行うこと。
(6) 暴力団被害の防止及び被害者への支援
ア 県民の立場に立った暴力相談の実施及び相談への適切な対応
暴力団員等による違法又は不当な行為の被害者等が相談しやすい環境を確保するとともに、相談の内容に応じ、事件検挙、暴力団対策法による命令の発出又は暴力的要求行為等の相手方に対する援助の措置を行うように努めること。警察としての対応が困難であると思われる事案についての暴力相談であっても、被害者等の意向の正確な把握に努めた上で、被害者等に対して暴力団員等への対応要領の教示を行うほか、民事上の措置が執られるよう県民会議や弁護士会に引き継ぐなどにより、被害の未然防止と被害者等の保護及び救済を図ること。
イ 民事訴訟支援
暴力団犯罪の被害者等の被害回復を図るため、県民会議や弁護士会と連携し、暴力団員等を相手方とする損害賠償請求訴訟、事務所撤去訴訟及び街宣禁止の仮処分を求める訴訟等に対する支援に努めること。特に、対立抗争等や威力利用資金獲得行為に係る不法行為に対しては、暴力団対策法第31条又は31条の2の規定による指定暴力団の代表者等に対する損害賠償責任の追及を積極的に支援すること。
ウ 保護対策等
暴力団犯罪等の被害者、暴力団排除を推進する地域住民や事業者等に対する危害行為を防圧するため、暴力団の動向を十分に把握し、必要な体制の確立や資機材の有効活用により保護対策を徹底するとともに、暴力団対策法第30条の3又は第30条の4の規定による損害賠償請求等の妨害行為の中止の命令等の効果的な運用を図ること。
2 薬物対策の推進
(1) 薬物対策の重点
ア 供給の遮断
(ア) 供給源対策の推進
薬物の密造地及び仕出地である国や地域における密造関連情報の収集を行うなど、国際刑事警察機構(以下「ICPO」という。)等の国際機関及び外国の関係機関との連携を強化し、我が国への薬物の供給を遮断すること。
(イ) 密輸入事犯取締りの強化
薬物の密輸入関係者の行動特性、搬入方法等に関する情報収集を強化して密輸入の実態解明に努め、国内外の関係機関等との連携の下に、水際検挙の徹底を図ること。
(ウ) 密売事犯取締りの強化
薬物の密売組織全体の壊滅を目標として、密売網の全容解明に努め、密売事犯の徹底検挙を図ること。
イ 需要の根絶
薬物の需要が薬物犯罪組織の維持及び拡大を支え、また、薬物乱用が社会的に悪影響をもたらすことから、末端乱用者の徹底検挙により薬物乱用を拒絶する規範意識を形成し、及び維持し、薬物の需要を根絶すること。
ウ 薬物乱用を拒絶する社会の形成と県民の協力の確保
県民一人一人が薬物の有害性及び危険性に関する正しい知識や薬物犯罪の重大性に関する正しい認識を有し、かつ、薬物乱用を許さないという確固たる意志を持つことができるよう、広報啓発に努め、薬物乱用を拒絶する規範意識が確立された社会の形成を推進するとともに、県民からの薬物に関する情報提供等の捜査協力の確保を図ること。
(2) 薬物事犯の取締りの強化
ア 薬物犯罪組織の実態解明による突き上げ捜査の徹底
専従班の設置等により薬物犯罪組織に対する視察内偵等を強化するとともに、広範な情報収集のための体制を確立し、あらゆる薬物に関する情報を集約し、分析することにより、組織実態の解明に努め、組織の中枢の検挙に向けた突き上げ捜査の徹底を図ること。
イ 薬物犯罪組織を壊滅するための捜査手法等の積極的な活用
密輸・密売ルートの解明を進めるとともに、薬物犯罪組織に人的及び資金的な面から打撃を与え、薬物犯罪組織の壊滅を図るため、薬物犯罪組織に係る捜査に当たっては、第6に掲げる捜査手法等を積極的に活用すること。
ウ 末端乱用者の取締りの徹底
薬物の需要を根絶させるため、組織犯罪対策部門による取締りに加え、地域部門等による街頭活動、生活安全部門等による相談業務等各部門による様々な活動を通じて、薬物犯罪組織を支える薬物の需要を生み出している末端乱用者の発見に努め、その取締りを徹底すること。
エ サイバー空間からの薬物密売事犯の根絶
インターネット上の薬物関連違法情報等の収集及びインターネットを利用した薬物密売事犯(その助長行為等を含む。)の取締りを強化するとともに、官民連携によるサイト管理者対策を推進し、サイバー空間から薬物密売事犯を根絶すること。
オ 薬物事犯の取締体制の強化
薬物事犯の取締りを徹底するため、捜査指導体制及び専従取締体制の強化を図ること。
(3) 国際協力の推進
ア 国際的な薬物犯罪組織を壊滅するための捜査協力の推進
共同オペレーションの実施等により国際的な薬物犯罪組織の壊滅を図るため、国際情報収集体制を整備し、警察庁を通じ、外国の関係機関との緊密な情報交換を行い、国際的な捜査協力を推進すること。
イ 薬物の密造地又は仕出地となっている国に対する技術協力の推進
薬物の供給の遮断と需要の根絶に国際的な貢献をするため、海外協力体制を整備し、薬物の密造地又は仕出地となっている国の取締能力向上のための技術協力を推進すること。
ウ 国際機関との連携
国際的な捜査協力及び技術協力を推進するため、警察庁を通じ、外国の関係機関との協力に加え、ICPO、国連薬物犯罪事務所(UNODC)等の国際機関との連携を図ること。
(4) 関係機関及び関係団体等との協力関係の強化
薬物の密輸入等に関する情報収集及び取締りを推進するため、税関、入国管理局、海上保安庁等の関係機関及び航空事業者、港湾関係者等の関係団体等との協力関係を強化すること。また、青少年等に対する薬物乱用防止に関する教育の推進を図るため、鳥取県教育委員会等の関係機関との協力関係を強化するとともに、薬物乱用防止活動等の推進を図るため、鳥取県福祉保健部等との関係機関との協力関係を強化すること。
(5) 薬物乱用防止のための取組の推進
関係機関との連携を強化して、青少年に対する薬物乱用防止教育や各種キャンペーンを強化するなど薬物乱用防止活動を推進するほか、マスメデイア、インターネット、広報誌等の様々な媒体、地域、学校等における各種行事等の機会を活用するなどした薬物乱用防止のための広報啓発活動を積極的に推進すること。また、薬物乱用防止に関する相談員の設置、相談電話の活用等を図るとともに、薬物乱用防止に向けた取組についても関係機関、団体と連携して推進すること。
3 銃器対策の推進
(1) 銃器対策の重点
ア 銃器摘発の強化
暴力団等の犯罪組織が組織的に管理し、又は隠匿している銃器の摘発を強化し、犯罪組織からの武器を剥奪するとともに、組織の中枢の検挙に向けた突き上げ捜査を徹底し、犯罪組織の壊滅を図ること。また、市民生活の安全に脅威を与える銃器犯罪を防止するため、インターネットを利用した銃器密売事犯等の取締りを含め、一般社会における違法銃器の拡散を念頭に置いた取締りを強化すること。
イ 供給の遮断
銃器の不正取引に関する情報収集及び国内外の関係機関等との連携を強化し、水際における密輸事犯並びに密売事犯及び密造事犯の摘発を徹底するとともに、これに関与する犯罪組織等及び密輸・密造ルートを解明し、国内外からの銃器の供給を遮断すること。
ウ 違法銃器及び銃器犯罪を拒絶する社会の形成と県民の協力の確保
県民一人一人が銃器の危険性及び反社会性に関する正しい知識を有し、かつ、違法銃器及び銃器犯罪を許さないという確固たる意志を持つことができるよう、広報啓発に努め、違法銃器及び銃器犯罪を許さない社会の形成を推進するとともに、県民からの銃器に関する情報提供等の捜査協力の確保を図ること。
(2) 銃器摘発の強化
ア 犯罪組織による銃器の管理、隠匿等の実態解明による突き上げ捜査の徹底等
専従班を設置するなど広範な情報収集のための体制を確立し、各種事件の被疑者、関係者等からの核心を突く情報収集活動により、犯罪組織に対する視察内偵等を強化するとともに、拳銃110番報奨制度を活用するなどあらゆる機会を活用して収集した銃器に関する情報を集約し、分析することにより、犯罪組織による銃器の管理、隠匿の実態の解明に努め、組織の中枢の検挙に向けた突き上げ捜査の徹底を図ること。
イ 捜索活動の徹底による違法銃器の発見
地中拳銃検索装置等の装備資機材を有効に活用した緻密な捜索活動を徹底するとともに、波状的な捜索の実施により、違法銃器の発見に努めること。
ウ 犯罪組織を壊滅するための捜査手法等の積極的な活用
密輸・密売ルート及び組織管理の解明を進めるとともに、犯罪組織に人的及び資金的な面から打撃を与え、犯罪組織の壊滅を図るため、犯罪組織に係る捜査に当たっては、第6に掲げる捜査手法等を積極的に活用すること。
エ 国際的な捜査協力の推進
国際情報収集体制等を整備し、警察庁を通じ、外国の関係機関との緊密な情報交換を行うとともに、ICPOとの連携を図ることにより、国際的な捜査協力を推進すること。
オ 銃器事犯の取締体制の強化
銃器事犯の取締りを徹底するため、捜査指導体制及び専従取締体制の強化を図ること。
(3) 関係機関及び関係団体等との協力関係の強化
銃器の密輸入等に関する情報収集及び取締りを推進するため、税関、入国管理局、海上保安庁等の関係機関及び航空事業者、港湾関係者等の関係団体等との協力を強化すること。
(4) 違法銃器及び銃器犯罪根絶のための広報啓発活動の推進
民間団体と連携しつつ、キャンペーンを実施するほか、マスメデイア、インターネット、広報誌等の様々な媒体、各種行事等の機会を活用するなどして、違法銃器及び銃器犯罪根絶のための広報啓発活動を積極的に推進すること。
4 国際組織犯罪対策の推進
国際犯罪組織の弱体化及び壊滅を図るため、犯罪のグローバル化に対応し、効果的な国際組織犯罪対策を推進すること。
ア 実態解明及び取締りの強化 
国際組織犯罪対策においては、実態解明班を中心として、国際犯罪組織の活動実態、組織の運営方法及び資金獲得活動の実態を始め、他の国際犯罪組織や暴力団等との人的又は資金的つながり、対立・友ぎ関係等その組織実態の全般を解明するとともに、犯罪のグローバル化対策室等における情報共有及び分析を行い、組織の基盤に打撃を与えるよう、組織実態に即した効果的な取締りを重点を定めて行うこと。特に、様々な犯罪インフラの存在は、不法入国・不法滞在や国際犯罪組織等が犯罪を繰り返し行うことを助長し、又は容易にするものであることから、地下銀行、偽装結婚、偽装認知、旅券等偽造、不法就労助長等の犯罪インフラ事犯を積極的に検挙するとともに、これらの犯罪に関与するブローカーその他の国際犯罪組織の壊滅に向けた実態解明及び取締りを強化すること。また、多くの不法滞在者の存在は、国際組織犯罪等の温床ともなり得ることから、入国管理局との連携により不法滞在者の摘発を推進すること。
イ 水際対策の推進 
国外逃亡のおそれがある被疑者については、迅速かつ的確な国際海空港手配等により、その国外逃亡を阻止するとともに、警察庁情報管理システムによる事前旅客情報照合業務及び外国人個人識別情報認証業務を活用して、指名手配被疑者の発見・逮捕に努めること。また、税関、入国管理局等国内関係機関と平素から積極的に情報交換を行うとともに、定期的な会議の開催や合同訓練を実施するなど、関係機関と連携した水際対策を推進すること。 
ウ グローバルな捜査協力の推進 
世界的規模で犯罪を敢行する国際犯罪組織については、捜査が海外に波及する可能性を迅速かつ的確に見極め、警察庁を通じたICPOルート等に基づく関係国の捜査機関との捜査協力及び外交ルートや刑事共助条約(協定)に基づく捜査共助の実施による被疑者の人定・所在地の確認、関係する証拠の取得等を行うなど、外国捜査機関との迅速な共同オペレーションを積極的に推進すること。また、外国の関係機関からの捜査協力の依頼についても、相互主義の観点から、誠実かつ迅速に対応すること。
エ 関係機関及び関係団体等との連携の推進 
偽装滞在者や偽装滞在を組織的に助長する者に対する実効ある対策を推進するため、各種届出の窓口となる市町村や鳥取地方法務局等関係行政機関との間で定期的な会議を開催するなど連絡体制を確立して緊密な連携を図るとともに、偽装滞在に関する情報を共有し、必要な助言・援助を行うこと。また、外国人を雇用し、又は雇用することが予想される企業等に対して、不法就労を防止するための気運の醸成を図るとともに、外国人労働者の適正な管理を促すよう、不法就労防止協議会、風俗環境浄化協会その他の関係団体と連携し、不法滞在及び不法就労防止のための指導啓発活動を効果的に推進すること。さらに、関係機関及び関係団体等との連携の中で偽装滞在等に係る犯罪の端緒を認知した場合には、積極的な捜査を推進して検挙に努めること。
第8 表彰
警察職員の士気高揚を図り、より効果的な組織犯罪対策を推進するため、組織犯罪対策に係る功労について積極的な表彰を行うこと。
表彰を行うに当たっては、事件検挙に関する功労及び各種施策の推進に関する功労のみならず、犯罪組織の実態解明に関する功労、適宜適切な合同・共同捜査の実施に関する功労及び事件検挙等の過程における疑わしい取引に関する情報の積極的な活用に関する功労についても考慮すること。 
  

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