平成27年度議事録

平成28年7月27日から30日所管事項に係る県外調査

1 調査箇所
平成27年7月27日(月)
・さいたま市役所(さいたま市浦和区)
    ・鳥取県東京本部(東京都千代田区)
平成27年7月28日(火)
    ・シェア金沢(石川県金沢市)
    ・石川県立工業高等学校(石川県金沢市)
平成27年7月29日(水)
・富山県庁(富山県富山市)
・鳥取県学生寮「明倫館」(東京都世田谷区)
平成27年7月30日(木)
・内閣府(東京都千代田区)

2 調査委員
   内田(隆)委員長、西川副委員長、
上村委員、伊藤委員、稲田委員、濵辺委員、木村委員、福浜委員、松田委員

3 調査内容
○さいたま市役所
    ・小学校1年生における「英語」の教科化の取組について
○鳥取県東京本部
  ・鳥取県東京本部の取組について
○シェア金沢
  ・地方創生の取組(CCRC)について
○石川県立工業高等学校
・石川県立工業高等学校におけるSPHの取組について
○富山県庁
  ・美術館の建築構想について
○鳥取県学生寮「明倫館」
  ・入寮生との意見交換
○内閣府
  ・地方創生総合戦略など地方創生の取組の全体概要及び新型交付金の検討状況
について
    ・日本版CCRCの検討状況について
    ・石破地方創生担当大臣と面談


4 随行者
   議会事務局調査課  黒川課長補佐、遠藤係長

5 調査結果 

今回の調査のテーマは、小学校1年生における「英語」の教科化の取組、県外本部の取組、地方創生の取組(CCRC)、石川県立工業高等学校におけるSPHの取組、美術館の建築構想、首都圏で学ぶ鳥取県出身の学生との意見交換及び地方創生総合戦略など地方創生の取組の全体概要について。

○小学校1年生における「英語」の教科化の取組について
さいたま市では、今年度より「英語」を小学校1年生から正式教科と位置づけ、モデル校数校で先行実施し、中長期的な教育の方向を示すさいたま市教育総合ビジョンに基づいて推進しています。
知、徳、体、コミュニケーションのバランスがとれた子どもを育むことが基本理念であり、特にコミュニケーションを入れているのが、さいたま市の特徴で、論理的な思考でクリティカルシンキングができる子どもたちの育成を目指しています。
新しい英語教育で目指す子ども像は、外国の方と英語で積極的にコミュニケーションを図ることができ、日本やさいたま市の伝統・文化に誇りをもち、将来にわたり、社会に貢献する子どもを育成することであります。
教科として実施するねらいとしては、小・中学校の一貫した指導で繋げることにより身につけさせたい力を着実に育む、児童のモチベーションの保持、知的好奇心を満足させることなどを目指し、小学校1年から取り組む背景として、早期に取り組む方が有利であり、また、英語を学ぶことにより日本語を大切にしていく、誇りをもっていくことに繋げていきたいという思いがあります。
今後のスケジュールとして、今年度はモデルとして5校、来年度はすべての小中学校で実施。小学校の時間数は段階的に増やしていき、平成30年に予定されているカリキュラムの全面実施を予定しておられます。
本県では、平成23年度より、学習指導要領に基づき、小学校5,6年生において「外国語活動(年間35時間)」が必修化され、平成32年度には小学校3年生から「外国語活動」、小学校5年生から教科「英語」の導入に向けた議論が行われているところであります。また、若桜学園と湖南学園で、小学校1年生から「外国語活動」を導入しています。
本常任委員会としても、さいたま市における英語を通じた教育内容なども参考に、今後、人としての学び、つながりやコミュニケーションを大切にする子どもたちの育成を目指す取組を積極的に応援してまいります。

○鳥取県東京本部の取組について
首都圏は情報発信の影響力が大きいため、マスメディアの活用、イベントでのPR、食材を使った料理の提供など、特に力を入れているが、地方創生など、ますます首都圏での各地方自治体間での情報発信競争が激しくなることから、さらに効果的な情報発信を実施する必要があります。
アンテナショップ・ビジネスセンター運営事業については、岡山県と連携し、県産品の展示販売、県産食材の料理の提供により、認知度向上が図られています。移住・定住等関する夜間・休日の相談会開催やセンター利用県内事業者に対し、首都圏消費者の感想・意見を返すなどの取組を行っています。
また、鳥取県ゆかりのアーティスト、マスコミ、店舗などと連携して意見交換、情報発信を行ったり、若い方に気軽に集まってネットワークづくりできるような取組など、首都圏おけるゆかりネットワークの構築を進めています。
本常任委員会としても、首都圏の拠点となる東京本部での取組が着実に推進されるよう、引き続き取組を応援してまいります。

○地方創生の取組(CCRC)について
シェア金沢で目指しているのは、いかに地域のコミュニティーセンターとなっていけるかということであります。
白山市の行善寺の住職が町中の戦災孤児を引き取って暮らしだしたのが始まりで、知的障がい児童が入所できる施設として1960年に社会福祉法人佛子園としてスタートしました。その行善寺に隣接した施設が老朽化して、入所していた子ども達が引っ越してきた先が、シェア金沢であります。
佛子園の取組として、障がい者の働く場の確保等を目的として、ビール醸造を行う日本海倶楽部、JR美川駅の管理・警備・清掃等の指定管理、荒れ放題となった寺を地域のコミュニティーセンターとして整備した西圓寺等があります。
シェア金沢では、障がい者、高齢者、学生等住むエリアが別々ではなく、わざとごちゃ混ぜに配置され、それぞれ自分ができる中での役割を担っています。
本来は近隣に住む高齢者に移り住んでもらう目的でしたが、最終的には首都圏等から引っ越してこられる方が多くなり、また、障がいを持った人、高齢者たちを含めた社会的弱者といわれる人たちが地域の方と関わって、元気に健やかに暮らせるところを作りたいという思いがあり、結果的にCCRCという形となりました。
また、佛子園の本部がある行善寺を中心にして、タウン型CCRCのプロジェクト(B‘sプロジェクト)を進めており、地元の開業医、保育園や学校、行政をと連携し、この人口11,000人が住む3km圏内をタウン型のCCRCの試みに取り組んでいます。これは、白山市の総合戦略にも採用されております。
 本常任委員会としても、鳥取県においては緒に就いたばかりではありますが、CCRCへの取組に対しより一層応援してまいります。

○石川県立工業高等学校におけるSPHの取組について
石川県立工業高等学校には、機械システム科、電気科、電子情報科、材料化学科、テキスタイル工学科、工芸科、デザイン科の7学科が設置されており、卒業後6割の生徒が就職し、社会に最も近い学校として、生徒に職業人としての自覚を持つように指導しています。昨年度卒業生312名のうち195名が就職し、うち95%が県内に就職しています。
平成26年度にSPH事業の指定を受け、3年間の研究を行っています。26年度に工業高校で指定を受けたのは本校を含め2校のみであります。
研究テーマは、高等教育機関と連携したフロンティア職業人材育成プログラムの開発であり、思考力及び科学技術に対して関心を持つ力を育て、高いモチベーションを維持しながら未知の産業技術にチャレンジする人材を育てることが課題となっています。
この課題を解決し、科学技術に対し高いモチベーションを維持しながら問題を発見し、課題を設定する力や総合的に問題を解決する力を身につけた工業技術者を育成することが研究の目的であります。
これらの実現のため、学習課目を設定し、また北陸先端科学技術大学院大学等と連携し、講師の派遣を受けたり、リサーチを行い、校内の体制として、SPH推進室が推進役となって、全部署が組織的に取り組んでいます。
 また、SPH事業を進めるツールとして活用されている遠隔会議システムを実際に体験し、ゼミナール活動の模擬体験なども行いました。
本常任委員会としても、今後、地域の産業を担っていく人材育成の取組を積極的に応援してまいります。

○美術館の建築構想について
建設後40~50年経過し老朽化が進み、耐震が足りていないという課題があり、また、北陸新幹線の開通により県外からの観光客が増えれば、美術館に対するニーズが変わってくるため、県立文化施設耐震化・整備充実検討委員会を立ち上げ、また近代美術館については、別に組織を作って検討することになりました。
最終報告書では、今の美術館は耐震不足等のハード面の整備が足りないため、政府美術品補償制度の対象とならないおそれがあり、また、立地や機能についても課題が出され、このため、移転新築した方が良いとまとめられています。
この提言をもとに、平成25年10月に新県立近代美術館基本計画が策定されました。内容は最終報告をベースにしたものであり、この基本計画をもとに設計を進めています。
新しい美術館は、富山駅の北、富岩運河環水公園の西側に移転を計画し、敷地面積は12,500平方メートルあまり、延べ床面積15,000平方メートル弱、鉄骨造地上3階建で、建物の屋上には公園を整備し、建物の中に103台の駐車場を整備する計画です。
本体工事費は、実施設計時点では76億円でしたが、1回目の入札は不落札となりました。建設需要の高まりから建設費が高騰しているのが原因であり、その後、9億円積み増しし、現在は75億円の建設費で業者が決まり、工事を進めています。
新しい美術館の設置、運営の理念と特徴として、次のようなことを目指しています。
(1) アートとデザインをつなぐ、世界で初めての美術館
(2) 新美術館から立山連峰がよく見える富山の代表的な景色を楽しめる場
(3) アトリエやギャラリーを新たに設け、見る、創る、学ぶと言った双方向で美術を体感できる場
(4) 伝統工芸とコラボしたお土産品を開発す ることにより産業振興にも寄与
(5) 時代が大きく変わりつつある中で、県民に親しまれ愛され、時代とともに成長し価値が高まっていく美術館
今後の予定として、平成28年12月に建物の竣工を予定、29年春には展示室以外をオープン、ゴールデンウィークまでには屋上庭園の開放、秋頃には全館オープンを考えています。
本県においては、博物館は開館から40年経過し、施設の老朽化、収蔵庫の狭隘、未整理資料の存在等の多くの課題が生じている状況の中で、平成11年当時に片山前知事が美術館構想を凍結したが、このたび15年ぶりに凍結解除がなされ、昨年度には、有識者による検討委員会を設置し、見直し議論を開始したところであります。
検討結果報告書を踏まえ、1分野の施設を新たに整備し、現施設は、残る2分野の専用施設として改修する方向で検討することとしています。
本常任委員会といたしましても、魅力ある鳥取県立美術館の建築に向けた取組をより一層応援してまいります。

○首都圏で学ぶ鳥取県出身の学生との意見交換
学生が、東京に来て実感していることは、東京には鳥取にいるときには知ることができない刺激や発見できる機会が増え、多種多様の施設や個性あふれる街があるので、少し足を踏み入れるだけでも、今まで知り得なかったことが目の前に開けており、また学校で学べることも多様で、しかも深みがあるということであります。
他方で、帰省する際には、鳥取の空気のきれいさや人の温かさを感じており、自然や人のつながりは、鳥取ならではの魅力と考えています。
また就職に関しては、地元企業や就職に関する情報があまり手元に届いておらず、奨学金の助成制度など学生のUターン就職を推進するうえでの課題も感じています。
本常任委員会といたしましても、学生に向けた就職等の情報発信や、魅力ある鳥取県づくりの取組をより一層応援してまいります。

○地方創生総合戦略など地方創生の取組の全体概要、新型交付金の検討状況及び日本版CCRCの検討状況について
人口減少対策の取組の前提としては、仕事が必要であるが、若者が働きたくなるような仕事がないというのが大きな問題であり、地域総掛かり(産官学金労言)でしっかり考える必要があります。
そして、頑張る地域にインセンティブを与える、どこもかしこも一律に救うという政策はとりえなくなっている。
限られたパイの中で、企業誘致を自治体間で競い合っても、地域を支えるボリュームはなく、地域の企業を育てる必要があります。観光などの独自化についてブランド力が大事であり、またブランド力がある商品でも売り方が大事であります。
また、大企業で実力を発揮し切れていない人材をいかに地方に環流していくかが重要であります。20代男女及び50代男性を中心に地方の移住希望が高いですが、働き口がない、日常生活の利便性などの不安を持っています。
自治体間における合計特殊出生率の開きが大きく、地域において「見える化」をして、地域の実情に応じて対策をとらなければ意味がありません。企業子宝率は、福利厚生が行き届いた大企業だから高いというわけではありません。子育てに参画しやすい職場環境が影響しています。
新型交付金について、具体的な「成果目標(KPI)」を設定し、どの程度達成できたのか検証する「PDCAサイクル」を確立することが当然の制度の前提であります。
新型交付金は、従来の縦割り事業の補助金でもなく、何でも使える交付税でもありません。支援対象としては、先駆性のある取組や、今までの制度を使ったのでは突破できなかったところに新型交付金を充てることにより次の段階に進んでいける、また、先駆的・優良事例を広げていく取組などを想定されています。
地方交付税でも、地方創生を相当意識して今年制度をつくっており、地方創生の指標を使って算定し、まち・ひと・しごと創生事業費で1兆円あります。
日本版CCRCは、希望に応じ地方やまちなかに移り住み、ビジネスを創出したり、他世代と交流しながら健康的に暮らし、必要な医療・介護を受け尊厳のある生活を送っていただく。これらが新たな雇用を創出し、若い世代の呼び込みに繋がっていきます。
意義として、高齢者の元気な生活への希望の実現、多様な年齢層の地方への人の流れの推進があり、結果として東京圏の高齢化問題に対応できるものです。
ハコ物の建設よりよりソフトをつなぎ合わせてまちづくり、コミュニティー、地域社会を形成していくことが大切ですが、様々な機能、施策があり縦割りとなってしまいます。これらをつないでいくことが大切で、CCRCは司令塔機能をいかに発揮するかということが重要であります。
本常任委員会といたしましても、引き続き鳥取県における地方創生に係る取組を積極的に応援してまいります。

 

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