松くい虫の生態と被害のメカニズム

  

松くい虫とは

松くい虫の写真
【写真】マツノマダラカミキリ

 松くい虫とは、松を枯らす原因となる「線虫類」を運ぶ虫のことを言い、マツノマダラカミキリ(体長3cm程度)という昆虫のことをさしています。マツノマダラカミキリの標準的な一生は約1年で終わります。 生態は次のとおりです。

  1. 6月から7月上旬にかけて枯れた松から8mm程度の穴をあけて外に飛び出します。
  2. 飛び出した後、枯れていない健全な松の1年~3年生の若い枝の表面をかじって栄養を取ります。(これを後食(こうしょく)といいます。)
  3. 7月上旬から8月末にかけて交尾を行い、枯れた直後の松に卵を産み付けます。(メス1匹は、約100個の卵を産み付けます。)
  4. 卵は1週間でふ化し幼虫となり、はじめは樹皮部分を食べているが成長につれて材部の表面を食べるようになり、さらに松の体内に穴をあけて部屋を作り、そこから出入りしながら材の表面を食べます。
  5. 11月頃になり、気温が下がると松の体内の部屋にこもり、穴の入り口に木くずを詰めて越冬します。
  6. 体内の部屋で越冬した幼虫は、5月頃に蛹になり約20日間で成虫となり、その後1週間程度で枯れた松から外に飛び出します。

松が枯れる原因

 枯れる原因としては、マツノザイセンチュウ説、大気汚染物質説、酸性雨説、菌類説などいろいろな説がありますが、激害的な松枯れの主な原因はマツノザイセンチュウであるとされています。マツノザイセンチュウが松の体内に入ると、松の生体反応から水を吸い上げる働きが阻害され枯れてしまうのです。

マツノザイセンチュウ

マツノザイセンチュウの写真 北アメリカ原産の線虫で、明治時代に品物を輸入する時に使われる梱包材と一緒に日本に入り込んだとされています。 体長は約1mm程度の小さな線虫ですが、卵で生まれて親になるまで3~5日しか必要とせず、メスは約100個の卵を生むため松の体内で莫大な増殖が行われます。

被害のメカニズム

 松くい虫被害とは、マツノザイセンチュウが松の体内に入り水分の通導を阻害し、松を枯らしてしまうことを言いますが、マツノザイセンチュウは自分で松から松へと移動できません。
 松の体内に潜入し松を枯らしたら、他の昆虫の力を借りて次の松に移動します。
 このマツノザイセンチュウを運ぶ「運び屋」が、「マツノマダラカミキリ」なのです。次にマツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの関係のサイクルをご紹介します。

サイクル1

サイクル1のイメージ 
 枯れた松の材の中で越冬したマツノマダラカミキリは、春から初夏にかけて蛹になり羽化して成虫になります。そのときマツノザイセンチュウはカミキリの体に乗り移り、線虫を抱えたカミキリは直径1cm程の穴を開けて外へ飛び出していきます。

サイクル2

サイクル2のイメージ 
カミキリは5月から7月頃にかけて、健全な松から松へと飛びまわり、松の若枝の樹皮を食べます。

サイクル3

サイクル3のイメージ
 そのとき、カミキリの体内に潜入していた線虫は、カミキリの食べた樹皮の傷口から松の材の中に侵入、急激な生理異変をもたらし、松を枯らしてしまいます。

サイクル4

サイクル4のイメージ
 そしてカミキリは・この線虫1こよって衰弱した松の木を探し出して樹皮にかみ傷をつくり、そ排卵管を差し込んで卵を産みつけます。

サイクル5

サイクル5のイメージ
 卵からふ化したカミキリの幼虫は、樹皮の下で柔らかい皮を食べながら成長し、夏の終わり頃から秋の間に成長した幼虫は、材に深く穴を開けその申で越冬します。そしてまたサイクル1へとつながっていぎます。

松くい虫被害の診断方法

地域によって多少の差はありますが、通常8月から9月頃、葉が赤くなって枯れ始めます。また、寒い地方では感染した翌年に枯れることがあります。
 松くい虫被害にあった松の特徴には次のようなものがあげられます。

1 松ヤニの流出が少なくなる。

 松は、ヤニが多い木ですが、マツノザイセンチュウが潜入するとヤニの流出が少なくなります。春から秋の間に、ナイフで樹皮に傷をつけても、傷口からヤニの流出が少ないようであれば松くい虫被害木です。(下図参照)

松ヤニの流出を調べる

2 古い葉から枯れる

 松くい虫による松枯れは、先に古い葉(2~3年目の葉)が、その後新しい葉(今年生えた葉)が色あせて、一部は垂れ下がり、短期間のうちにあざやかな赤褐色に変色してしまいます。
 乾燥が原因で枯れるときは、新しい葉が先に灰褐色に変わりますし、また、大気汚染(亜硫酸ガス)が原因で枯れるときは、新しい葉と古い葉が同時に赤褐色にかわりますので、枯れ方を見れば枯損原因が分かります。(下図参照)


松枯れの様子
  

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