第13回鳥取県教育審議会総会の概要

1 日時

平成25年6月4日(火)午後1時15分~3時35分

2 場所

白兎会館「飛翔の間」

3 出席者

教育審議会委員(25名)、委員長、教育長、教育次長、次長、関係各課長 他

4 概要

「次代を担う生徒を育成するための魅力と活力にあふれる本県高等学校教育の在り方について」

・「高等学校教育の在り方」については集中的に審議をする必要があるため、分科会での審議とすることで承認。審議会条例第10条に基づき、学校等教育分科会で審議することとする。
・学校等教育分科会は「高等学校の在り方」について平成26年9月を目途に答申することとする。
・今回の答申内容については、適宜審議経過を報告していただくが、最終的には学校等教育分科会の議決事項とすることで承認。

「次代を担う子どもたちに身に付けてほしい力」について

 

アートが拓く教育のイノベーション

 ~これからの日本経済を支える人材育成に向けて~

吉本光宏委員(ニッセイ基礎研究所)

◯「次世代を担う子どもたちに身につけてほしい力」ということについて、非常に大きな命題であり、話題提供ということで聞いていただきたい。

◯日本経団連が毎年実施しているアンケート調査結果において、「日本企業が選考にあたって特に重視する要素」のトップはコミュニケーション能力、次が主体性、協調性、チャレンジ精神、誠実性、一番低いのが責任感となっている。日本企業がどういう人材を求めているかということを端的に語っている。

◯コミュニケーション能力を学校教育において育むためには、
・自分とは異なる他者を認識し、理解すること
・他者認識を通して自己の存在を見つめ、思考すること
・集団を形成し、他者との協調、協働が図られるような活動を行うこと
・対話やディスカッション、身体表現等を活動に取り入れつつ、正解のない課題に取り組むこと

 などの要素で構成された機会や活動の場を意図的、計画的に設定する必要があるというふうに文部科学省では言っている。

◯この政策に基づいて、全国各地の学校で、アーティストが出向いて様々な活動を行うという、いわゆるアウトリーチと言われる取組が全国で展開されてきている。最近では学校と芸術の現場を結びつけるようなNPOというのが全国で出来ており、活躍している。
こうした活動は日本だけではなく、全世界でトレンドになっている。

◯音楽を教える、美術を教える、つまり芸術を教える教育は学校教育の中でも当然あるが、先ほど紹介したような活動というのは、「芸術を通して学ぶ」という考え方であり、教育における芸術の可能性をさまざまな形で追求をしていこうということを指している。
こうした考え方は、アメリカでは全州政府の芸術評議会が推進をしているし、アジア近郊ではシンガポール、あるいは韓国などでも大変熱心にやっている。

◯アーティストが学校に出向いて行うような授業は、子どもたちのどのような能力や心を育むことに効果があるかというアンケート結果や様々な海外の事例によると、
・自信の回復、自己肯定感
・創造力、想像力、批判的思考力(自分で考えて自分で判断して自分で決める能力)
・社会性、協働作業、グループワーク、責任感
・基礎学力の向上(芸術の教育を受けた子どもたちの方が国語や理科、算数の成績が高いという調査結果が出ている。)

 こうしたことに効果があったと言われている。

◯鳥取県が教育施策としてこのようなことに前向きに取り組むというような政策を打ち出されれば、必ずさまざまな成果が生み出されると思うし、全国を牽引するような教育になるのではないか。

今後の県立学校のあり方への意見

浅野良一委員(兵庫教育大学)

◯高等学校の使命とは何か
・卓越した存在。一部の学校が何か優れているということではなく、それぞれの学校がそれぞれのレベルで卓越していること。卓越性とは、何か際立った良さを持つこと。
・公平性。置かれた状況にかかわらず機会が保障されていること。どこかの高校だけが非常に優遇されている感じではなく、いろんな学校に進学した生徒が県から大切にしてもらっていると感じられること。
・多様性。いろいろな考えを持つ生徒、あるいはいろいろな状況にある生徒を一人一人大切にしているということ。共生。

 県立学校に関係する県民すべてが、この3つのキーワードで示すような教育を提供することで、社会全体やその高校を卒業した一人一人など、そういう人たちの幸福追求に貢献をするということだと思う。

◯県立高校でどのような人材をゴールとして目指すべきか
・グローバル社会で活躍できるリーダー層
・鳥取を支える人材
・置かれている環境にかかわらず自立して生きていく、たくましい人材

 そのような人材が必要と考える。

◯今、グローバル社会と言われているが、グローバルなセンスを持ちながらローカルのセンスを持っていること、そういうものを掛け合わせた人材が求められる人材ではないか と思う。将来の職業の見通し等を見ると、グローバルだけでは厳しい気がする。

◯県立高校の在り方を考える論点
・社会のリーダー、あるいはグローバルな人材、そういう人たちに必要な資質・能力の育成
・多様な学習や進路選択が可能な学習メニューが提供されること
・専門高校においては、専門性をさらに深化する部分と、あるいはその専門性をさらに上級学校で磨いていくという進学の部分についても目配りが必要
・セーフティネットとセカンドチャンスとして、何かの事情でつまずいた生徒たちに対して、就学機会を確保したり、学び直しのチャンスを提供すること
・キャリア教育、自立を支援する教育カリキュラム、つながりを育む学校づくり、学習環境の整備、教職員の資質向上
 
 このようなことを実現するためには、生徒数の減少もあり、県立高校の再編というもの がどうしても必要であり、やむを得ないという気がする。

◯学校の特色や地域の特性を踏まえて検討をする必要があり、志願動向だけで判断をするのではなく、その学校の役割や使命といったものが明確で、かつそれが今後必要とされているのかどうかということで評価をすべきと思う。

◯高校の再編については、いろいろな観点で考えて、ベストチョイスというのはないと思うが、ベターな結論に導いていければと思う。

委員からの主な意見

◯高校では知的な学習が必要と学校現場で言われており、社会教育に自然体験が大切だ、体験学習が大切だと言っても、順番としては後回しになってしまうという現実がある。学ぶ能力を喚起させることが大切であるが、その学ぶ能力というものがコミュニケーション能力や学習意欲であることから考えれば、野外教育はすごく大切であり、切り離せないものだと思う。

◯これから大人になって生きていく子どもたちにつけるべき力は、みんなの幸せのため、そして社会で自分たちが幸せに生きていけるための基本的な力である。その目的で各学校がその地域や学校の特色をいかしてどういう力をつけるかを考えていけばよい。

◯グローバルな人材を育成していくと、人口減少にさらに拍車をかけるのではないかという懸念がある。どこでも生きていくことができる優秀な人をつくっていかなければならないということも事実であるが、地域に残って地域を支えていく人間をつくることも大切である。高校再編においてもそれぞれの地域が残るような学校の在り方にしてほしい。

◯今の子どもたちは困難な壁を乗り越えることなく、気付いたら18、19歳の社会人になってしまっている人もあり、技術的に仕事ができるとかできないということ以前に、社会で生きていく上での最低限の力が備わっていない感じがする。小中学校段階からの問題がある。

◯今、目の前にいる中学生をどう教育するかということについて、この子どもたちが20歳になり社会に出て行くときに、逆にどのような力がなければならないのかということを考える。その中でやはり家庭教育との連携が必要であり、知・徳・体のバランスを考えると、特に徳育については学校の中で様々な体験、道徳の授業等々を使いながら教えていくわけだが、本当に定着させるためには家庭教育の力が必要である。

◯日本経団連の「日本企業が選考にあたって特に重視する要素」の結果は、足りないものが求められているということだと思う。要するに、責任感はみんな持っているので、言われたことはできる人間が多いが、自分から発信していく力が弱い。コミュニケーションというのは他者に合わせるという能力だけではなく、自分の思っていることをしっかりアピールをして、相手の様子をうかがいながら着地点を見出すこと、これもコミュニケーションで非常に必要なところである。残念ながら今の若い世代は、なかなか自分の言葉で発信することができない。

◯大学へ入ってゴールインという考え方が保護者には強いが、社会に出た子どもがどのように社会に通用していくのかということが大切だと思う。子どもたちの可能性を見出して、そこを支援していくという観点で、高校教育を見直していかなくてはならない。

◯少子化の問題が最初に出たが、とにかく魅力をつくるということ、学校も先生自身の魅力をどんどん前面に出して生徒を集めて、県外からでも生徒が集まってくるような学校をつくること、私たちの地域がいかにすばらしいかということを絶えず学校としても発信していくということが人口を増やしていくために大事なことではないかと思う。

◯自らが幸せになると同時に周りを幸せにするというのは、まさにこれは志だと思う。世の中にどのように自らが役に立ち、世の中をよくしていくかとか、そういう意味ではその志といったものを育む教育がキャリア教育であり、そこにアートをはじめとした様々な体験活動が絡んでくるのかなと思う。

◯何歳になったら自分はどうなっていたいのかということを一生懸命伝えて、目標を持たないと、あなたは自分でやっていけないよ、というような話を子どもたちにしている。その目標を持たせるということが、算数、国語よりも、自分がどう生きていくのかということに繋がっていくので、一番大事なことではないかと思う。

◯自立と貢献の基礎を培うところに小学校の意義はあると思う。高校、大学を卒業して社会人になるときに、自分の生き方を選択できる力、自己を振り返って何か得意なことや自分がしたいことを総合的に考えて自己決定できる力をつけておく必要があると思う。今、小学校の学校教育の中で特に大事なのは、ただ知識を吸収するだけではなく、その知識を得るために自分がいかに能動的に働きかけていくかというところに大きなポイントがあると思っており、授業でもそういった学習過程をみんなでつくっていこうと考えながらやっている

  

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