自然保護監視員日記


 中部担当の自然保護監視員が、日々のパトロールの中で発見したこと、感じたこと等を綴りながら、中部地区の魅力的な自然の数々をご紹介します。
 

2010年12月24日

船上山の山焼き

  農作業に牛馬が欠かせなかった頃、山間部のどの村にも草刈場がありました。餌や茅葺屋根の材料を採るためには広い面積の草原が必要だったのです。

 昭和も30年代後半になると農家は競って耕運機(トラクターではありません。テイラーと呼んでいました。)を購入、たちまち牛小屋は耕運機置場へと主が入れ変わってしまいました。茅葺の民家が次々と姿を消していったのもこの頃です。

 毎年春には火を入れることにより維持されてきた草原は役割を終えて雑木林やスギ、ヒノキの造林地になり、今どこを見ても質は別にして山は「木だらけ」状態です。

 このように減少著しい草原ですが、県中部では近くに2ヵ所残っています。船上山とお隣の県の蒜山です。

草原にそそり立つ船上山の岩壁。後醍醐天皇が立てこもったとされる天然の要害 今はよく伸びたススキやササ。このまま放っておくと、やがてコナラなどの雑木林に 雪がすぐ近くの勝田ヶ山まで迫る。船上山がすっぽりと包まれるのももうすぐ

 近くの農家によって毎年火を入れていた船上山ですが、現在は琴浦町が観光振興を目的に3年に1度焼いており、来年がその年に当たります。多くの人手を要し、危険が伴う大変な作業です。

 蒜山の山焼きについては12/11、県立博物館で鳥取大学農学部佐野教授の講演がありました。草原はもはや生活に必要ではなくなったが、特有の動物や植物の貴重な生息地となっている、さらには山焼きが村を結束させる伝統行事ともなっているとのお話しでした。

 草原を彩る生き物たち
女郎花(オミナエシ)、盆の生花に、屋内では少し臭う 竜脳菊(リュウノウギク)、竜脳の香りがする可憐な野菊 吾亦紅(ワレモコウ)、この花は漢字で書くのが似合う 南蛮煙管(ナンバンギセル)、ススキの根元にひっそりと
草原は蝶やバッタ、昆虫少年にとっても天国、ヒキオコシに止まったキチョウ 名前も分からないバッタがあちこちで飛び跳ねる ウラギンヒョウモン?豹のような模様を持つので豹紋 アカタテハ、成虫で越冬し暖かい日は冬でも飛んでいる

 知り合いの日本野鳥の会の会員も、絶滅危惧種のイヌワシには狩場として開けた草地が必要だ、草原をいつまでも守ってほしいと話していました。

 最近、「はげ山の存在を許してなるものか、山にはとにかく広葉樹を!」と何が何でも木を植えたがる環境保護原理主義者のような人が増えたように感じます。もう少し柔軟に考えてほしいものです。(自然保護監視員 浜辺正篤)

 

中部総合事務所環境建築局 2010/12/24 in 県立自然公園,国立公園,植物,中国自然歩道,野鳥



問合せ先

中部総合事務所 環境建築局 環境・循環推進課

(自然公園担当)
電話:0858-23-3276  Fax:0858-23-3266

(野生鳥獣・狩猟免許担当)

電話:0858-23-3153  Fax:0858-23-3266

  
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