自然保護監視員日記


 中部担当の自然保護監視員が、日々のパトロールの中で発見したこと、感じたこと等を綴りながら、中部地区の魅力的な自然の数々をご紹介します。
 

2016年9月30日

10月は自然歩道を歩こう月間

 二十四節気(にじゅうしせっき)の1つ秋分(しゅうぶん)を過ぎ、朝夕が涼しく感じられる季節になりました。野原のススキが風に揺れる姿を見たり、モズの高鳴きを耳にすると秋の訪れを感じます。

 さて、来月10月は全国・自然歩道を歩こう月間です。これは、「多くの人々が全国の長距離自然歩道をはじめ自然や文化に恵まれた自然歩道を歩くことを通じて、自然とふれあい、自然への理解を深めること」を目的として、環境省が提唱しているものです。長距離自然歩道とは、環境省が計画し、国及び各都道府県で整備しており、全国の総延長は約27,000Kmとなります。

 鳥取県中部地区には、西の琴浦町から東の三朝町にかけて中国自然歩道が車道、歩道を含め約85Km指定されており、標識や階段、展望台等が整備されています。今回は、琴浦町の一向平(いっこうがなる)から大山滝までの中国自然歩道を紹介します。


中国自然歩道
中国自然歩道 琴浦町の一向平から大山滝間

 この区間は、大山道(だいせんみち)の1つ川床道(かわどこみち)として古くから利用されている道で、倉吉市関金町方面より大山へ通じる山道です。拠点となるのが、一向平キャンプ場(標高約560m)です。一向平は、加勢蛇川の上流に位置し、大きな段丘面となっているところで、戦後入植した多くの人々によって開拓されたところです。現在はキャンプ場が整備され、大山の東の玄関口となっています。山陰自動車道からのアクセスは、琴浦東IC出口から県道44号線を南に約16Kmのところにあります。

 大山滝へは、一向平キャンプ場の駐車場に車を止めて片道50分程歩く必要があります。この先トイレはありませんので、お手洗いを済ませておきましょう。大山滝までの道は、舗装されていない自然歩道で、高低差があり、途中には急な階段を下りる必要があります。サンダル、ハイヒールで歩くことは危険ですので、登山靴や運動靴で通行してください。
※加勢蛇川沿いの道路は自然歩道ではなく、工事用道路ですので歩行者は通行できません。

 階段を下り終わると、加勢蛇川にかかる大山滝吊橋(高さ30m,長さ45m)を渡ります。吊橋をすぎると、道は上り坂と平坦な道が交互に続きます。途中、たたら跡の残る旦那小屋や小さな沢の近くには地面に苔むした石畳が見られます。

大山滝までの風景1
琴浦町の一向平から大山滝までの中国自然歩道の風景
 左上から 一向平キャンプ場/急階段までの平坦な道/緑の中の自然歩道
 急階段/大山滝吊橋(下流側より)/大山滝吊橋(正面より)
 吊橋を過ぎた後の上り坂/沢を横切る木橋/大山道の名残を残す苔むした石畳

 平成28年4月に大山山麓地域が日本遺産に認定されましたが、日本遺産のストーリーになっている大山道の1つがこの道で、大山信仰や牛馬市の道として利用されたようです。石畳の道を歩くと、大山へ参拝した昔の人々の苦労を感じます。歩道脇にはお地蔵さんがあり、当時の名残がみられます。

 お地蔵さんを過ぎると大山滝までもう少しです。大山滝の案内看板を左に曲がり、階段を降りると大山滝展望台があります。展望台から大山滝を眺めると2段にわたって豪快に水が落ちる姿を見ることができます。

大山滝までの風景2
琴浦町の一向平から大山滝までの中国自然歩道の風景
 左上から 大山道の名残を残すお地蔵さん/お地蔵さん近くの上り坂/大山滝案内看板
 大山滝展望台/大山滝(9月)/大山滝(10月の紅葉時期)


 大山滝は、水量が豊かな山陰随一の滝で日本の滝百選に選ばれています。一向平キャンプ場の管理棟には、昭和8年の写真がありますが、その当時は3段の滝でした。昭和9年の室戸台風で2段の滝になりました。平成19年には落差が上段28m、下段14mで全長42mでしたが、その後平成23年の台風で下段が土砂で埋まりました。

 大山周辺には、大山滝を上回る落差の滝はありますが、水量があって見ごたえのあるのは今でも大山滝ではないでしょうか。
※平成23年の台風により大山滝周辺の斜面が崩落しました。大山滝展望台から下に降りる道は、中国自然歩道ではなく、管理者がいないため自己責任での通行になります。

 所要時間は、一向平キャンプ場から大山滝吊橋までが片道30分、大山滝吊橋から大山滝までが片道20分です。途中、急階段付近にブナの木、沢沿いにはサワグルミの巨木も見られます。

大山滝までの風景3
琴浦町の一向平から大山滝までの中国自然歩道の風景
 左から 急階段付近のブナ/沢沿いのサワグルミの巨木

 大山滝から西側の中国自然歩道は険しく、急な上り坂になります。この道は広大なブナの原生林が残る大休峠(標高1110m)を経由し、川床まで続きますが、健脚向きのコースであり十分な装備と登山計画が必要です。

 9月中旬、秋雨の中を大山滝まで歩きました。自然歩道を歩く楽しみの1つは、季節の花を観察できることでもあります。この日は、秋の花のツリフネソウやヤマジノホトトギス、オオカニコウモリが咲いていました。注意して歩くと、落ち葉に同化したニホンヒキガエルやヤマナメクジを見つけ驚きました。雨の日に歩くと普段とは違った生き物を見かけます。

9月の大山滝までの風景
琴浦町の一向平から大山滝までの中国自然歩道の風景(9月中旬)
 左上から ツリフネソウ/ヤマジノホトトギス/オオカニコウモリ
 ニホンヒキガエル/ヤマナメクジ

 秋は気候が涼しく、紅葉も見られるため自然歩道を歩くには最適な季節です。歴史に思いをはせながら、大山滝を目指して自然歩道を歩いてみませんか。

 なお、山を訪れる際は、ツキノワグマやマダニ、スズメバチなどに注意しましょう。

関連リンク
 長距離自然歩道を歩こう(環境省ホームページ)
 鳥取県内の中国自然歩道
 大山山麓地域の日本遺産認定が決定(鳥取県教育委員会ホームページ)
 平成28年度 中部総合事務所管内ツキノワグマ目撃情報


 記事内の背景地図等データは、国土地理院の電子国土Webシステムから配信されたものであり、カシミール3Dソフトで作成しています。写真のデータは、拡大をしているためそれぞれの大きさの比較はできません。

中部総合事務所環境建築局 2016/09/30 in 国立公園,植物,中国自然歩道



問合せ先

中部総合事務所 環境建築局 環境・循環推進課

(自然公園担当)
電話:0858-23-3276  Fax:0858-23-3266

(野生鳥獣・狩猟免許担当)

電話:0858-23-3153  Fax:0858-23-3266

  
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