中部総合事務所農林局のホームページ
日時:平成30年11月27日 午後3時~4時
場所:JA鳥取中央 中央営農センター会議室(倉吉市横田)
講師:(一社)鳥取県農業会議会長 兼 (公財)鳥取県農業農村担い手育成機構理事長
上場 重俊(うわば しげとし)氏
テーマ:勝ち残る産地、繋ぐ産地、希望のある産地を目指して攻めの挑戦を


<要旨>
・コップの水を半分「しか」残っていないと思うのか、半分「も」残っていると思うのか、人それぞれ様々な捉え方があるということを前置きしておきたい。
・先日出席したJAとっとりの大会で3年間の活動方針が決められたが、「食料自給率向上」という自分的にはおかしなテーマ設定と感じた。JAの使命は農家のもうけが最大限になるように、そのために協同の力を発揮することだと思う。自給率向上はその結果としてついてくれば良いもの。
・倉吉スイカの16億円も、はじめはなんだこの中途半端な数字はと思ったが、長田部長らに経緯を聞いてなるほどと思った。内輪ではわかるものだが、外の人が聞いたらわからない。これから研修に来てもらおうという人は、どう捉えるか。「16億なんてすごい!」と思うか、「16億のために使われる」と思ってしまわないだろうか。
・産地を拡大していこうという想いはわかる。目的は「勝ち残る産地」とかにして、そのための数字目標を「16億」とするのはどうか。
・「呼び込む」というテーマをもらったが、呼び込むだけでは居酒屋のキャッチと同じで誰でもできること。呼び込んでからどうするか、どうやって相手を幸せにするか。そういった感性を養ってもらいたい。自分の基盤が整っていないのにプロポーズするようなもので、無責任なこと。
・倉吉はこれから勝ち残っていける産地だと思っている。極端なことを言ったが、頑張ってほしい。
 
・いくら販売単価が良くても年には勝てない。やめていく人もいる。
・10億円達成したが、130人の中で全員が儲かったか、点検が必要だ。
・どこの業界も人が集まらず困っている。
・これから産地は縮小する傾向にはあるが、その中でも頑張ってほしい。
・認定農業者の販売額の目安は1500万。新規就農者の場合は上手にやるものなら3年目くらいで1000万を超え、7~8年目にこのくらいになってくる。
・上手に農業をやる人は家族としっかり話ができている。家族経営協定を結んでいたり。
・夫婦ですることが違っている人、例えば夫がハウスを閉めた後で妻が開けて、また夫が閉めて、というところがあったが研修生はどう指示に従うか迷い、良い研修が受けられない。これはすなわち夫婦間で意思疎通が取れていないということであり、夫婦仲が良いというのも重要な要素。
・従業員を「使う」と書いているが、上手な経営者は従業員をしっかり育てて、その従業員がしっかり作る。1人で500万でも売り上げを出すようになる。そうすると20代で200万の給料が30代300万、40代400万、50代500万と上げていける。だから人が定着する。
・従業員が作った売り上げから、経営者はいくらかピンハネする。それが企業の内部留保であったり次の投資に使えるものになるのだが過ぎると従業員に良くない。バランスが難しい。
・境港で売上1億の白ネギ農家がいる。良いところも悪いところも平均して反当120万円くらい、毎年きちんと取れている。規模が大きいだけでは所得はあがらない。
・白ネギ改良協会の50周年行事で、就農7年目の青年が、「ネギが良く育って、その前でタバコを吸うと気持ちが良い」と話していた。「俺はやったぞ」という空気がみなぎることが良いことだ。
・倉吉は黒ボクで水もあって、畜産があるから堆肥も入れられる。全国でもそうないくらいの優良な農地だ。
・「農地は天からの預かりもの」だと思っている。今の農地が先人の努力で成り立っているように年が来たら誰かに渡さなければならない。誰に引き継ぐかを考えねばならない時がくる。
・産地がどうなるかは、新しい人が来ることもだが、今の130人がどうやって上を向くか、関わる人間が所得が上がって幸せになるように、関係機関が腹決めをしてやれるかにかかっている。
 
・新規就農者が来る動機だが、以前は長男が継ぐという世襲制が当たり前にあった。いまはそうではなく、農高や農大を出てもみな一度は就職する。それから戻ってくる場合は、良い話を聞いたから戻ってくる人と、挫折し拠り所を求めて親元に戻ってくる人がいる。
・日南町には東京からUターンしてトマトを作っている青年がいる。一流企業に勤務しており、親は戻ってきてほしくなかったが、同窓会で会った友達がすごく輝いて見えたから就農を決めたそうだ。
・北栄町では親元就農が7人もあって、県の補助金がなくなってしまった。これにはわけがあって、以前に北栄町農業委員会会長と「スイカでどのくらい儲けてるか、息子と話をしているか」と話をした。どのくらい儲かるか、話をしなければいけない。
・彦名のニンジン農家は、婿養子夫婦に家を建てたが、支払いは婿にさせた。市役所勤めだからすごく儲かっていると思っていたが、その実20代の公務員はとても給料がすくない。逆に婿夫婦は農業がとても儲かっていると思っていた。そういったところにも行き違いがある。まずは話をしてみることから。
・帰ってくる人には、妻が鳥取出身(看護師が多い)とか、孫ターンがある。孫の場合は住宅、農地等の権利関係や相続が大変なこともある。「旅行で来てよさそうだったから」というパターンは注意が必要だ。
・先輩就農者の生き生きした姿を見たから、というのは工業系に多い。大学工学部から一部上場企業に勤めていた人もいた。ガソリンスタンドや養護教諭で、仕事をしていても反応がないから、ネギなら反応するからやりがいがあると言った人もいた。
・農業のアルバイトをして、という例もあり、これはひきこもりやフリーターが多い。船乗りや長距離ドライバーなど、長期間家族と会えず、子どもと当たり前に晩御飯が食べたい、人間らしい暮らしをしたいという理由で入ってくる人もいる。
・農業の良さはお金だけではない。そういったメリットを発信してほしい。
・なぜスイカを作るのか?ある研修生に聞いたら、答えられなかった。できたスイカがうまかったからでもなんでもいい。何が良いのかを伝えられるようにしておかねばならない。
・全国で就農者の確保に取り組んでいる。頑張らないと香川とかに取られて出て行ってしまうばっかりになる。ここが分かれ目だ。
 
・うまくいかないケース、「農業くらいならできるだろう」これは考え方が甘い。心身の問題、躁鬱でまっすぐ歩けなかった例もあった。体や心のバランスは付き合ってみないとわからない。資金面について、自己資金はせめて300万、理想は700万ほしい。大学卒業したての22、3歳だと貯金もない。アパート借りると月5~6万でもかかってしまう。制度があっても当面の生活資金、運転資金は必ず必要である。サラ金でブラックリストに載っていて、就農できなかったケースもあった。
・有機やネット販売をやりたいという人も危ない。みんなと仲良くしてJA組合員になってやるのが近道だ。
 
・アグリチャレンジ研修は25名定員で年3回、今年で4年目になった。多くは法人就農。自営に向かいたい人にはアグリスタート研修と先進農家実践研修がある。どちらも毎月12万くらいの給料と、親方に4万円の手当がある。集合研修もしている。農の雇用もあるが、受け入れの時の見極めは機構ではできない。
・受け入れ農家の選定について、研修生受け入れ担当の役員を組織図に加えたらどうか。
・夫と妻のいうことが違うと、研修生にしわ寄せがいく。
・研修生を育てず使い捨てにしてしまう人もダメ。生産者に話を聞きながら進めていく。
・研修生と性格が合わないこともある。
・だいたい5~6人をリストアップして、最後は理事長が決裁する。
・違う人が家に入ることになるのですごく大変だ。昼をどこで食べるのかとか、家の中でしっかり話ができていないといけない。
・こっちに決まりかけてたのにあっちとか、いくらかは揺らぎがある。
・スイカは2月の研修スタートから、2作は作らないとわからない。
・家はまだなんとかなるが、作業場がなかなかない。農地の近くにないといけない。
・研修先から「この畑を貸しちゃる」と言われることもあるが、それがあまり良くない場所だったということもあった。相対で借りてしまわず、機構を通して借り受けさせるようにしている。
・成功するためには、良い畑で、少ない面積で立ち上がらせること。地域で一番いい畑を、30aでも50aでも良いから。広げるときは機構が間に入りながら、中間管理を使ってやる。
・酪農の畑が近くにあれば、ドリフトの問題も出てくる。市がやっていかないといけない。地震があってやむを得ないのだが、チーム会議がほかの市町村より3年遅れている。
・山形の「おしんの会」は町が作業場付きの宿泊所を作って、タダで入っていいとやった。琴浦も日南も、小学校を整備して使えるようにした。新見のブドウ団地は、夫婦で1千万持ってくれば所得500万を保証する、として廃園整備をしている。
・がんばる地域プランを、琴浦も北栄も三朝もやっている。湯梨浜もナシの継承でこれから始まる。市にも頑張ってほしい。
・今までは農地確保など、就農に向けては自分でしなければならなかった。
・条件の良いところに人は流れていく。
・農地は宝物だ。これからの倉吉スイカの発展を期待している。

Copyright(C) 2006~ 鳥取県(Tottori Prefectural Government) All Rights Reserved. 法人番号 7000020310000