鳥取県視覚障がい者等の読書環境の整備の推進に関する計画 鳥取県 令和3年3月   目次 Ⅰ はじめに 1 計画の趣旨・・・1 2 計画の位置付け・・・1 3 計画の期間・・・1 4 計画の対象・・・2 5 視覚障がい者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題・・・2 6 本計画の周知及び啓発・・・3 7 計画の推進体制・・・3 Ⅱ 基本的な方針 1 アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供・・・3 2 アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上・・・3 3 視覚障がい者等の障がいの種類・程度に応じた配慮・・・4 Ⅲ 施策の方向性 1 視覚障がい者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係)・・・4 (1)アクセシブルな書籍等の充実・・・4 (2)円滑な利用のための支援の充実・・・5 2 インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係)・・・6 3 特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係)・・・7 4 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係)・・・7 5 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係)・・・8 (1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上・・・8 (2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成・・・8 Ⅳ 指標・・・10 Ⅴ 用語集・・・11   鳥取県視覚障がい者等の読書環境の整備の推進に関する計画 Ⅰ はじめに 1 計画の趣旨 令和元年6月28日「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(以下「読書バリアフリー法」という。)」が施行されました。この法律には、視覚障がい者等の読書環境の整備の推進に関する基本理念が定められており、障がいの有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的としています。 本県では、障がいを知り共に生きる社会を目指し、障がいの特性を理解し、その特性に応じた必要な配慮をするとともに、障がいのある人が困っている時にちょっとした手助けを行う「あいサポート運動」をスタートさせ、その運動は国内外に広がっています。その他、障がい福祉サービスの充実や全国に先駆けて手話言語条例を制定するなど、さまざまな取組を重ねてきました。 鳥取県立図書館(以下「県立図書館」という。)では、図書館利用に障がいがある人へのサービスとして「はーとふるサービス」を実施しています。なかでも、視覚による表現の認識が困難な利用者に対しては、録音図書とその再生機の貸出や郵送貸出を行うなどのサービスを実施するとともに、大活字本の充実や拡大読書器の設置などの読書環境の整備にも努めています。また、横断検索システムや県立図書館の物流システムによる配本サービスなど、県内に構築された図書館ネットワークによる、県内全域の市町村立図書館、高等学校図書館、特別支援学校図書館、大学図書館等、図書館相互の連携・協力体制が整備されており、身近な図書館で必要な資料や情報を受け取ることができるようになっています。そしてこのネットワークは、全国1位の資料費(県民1人当たりの資料費)に支えられています。 このように本県では視覚障がい者等に対して様々な取組が行われていますが、読書バリアフリー法の理念をさらに具体化するため、本計画を策定し、障がいの有無にかかわらず全ての県民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恩恵を受けることができる社会の実現に向け、県民の皆さんと一緒に取組んでいきます。 2 計画の位置付け 本計画は、読書バリアフリー法第8条第1項の規定に基づき、鳥取県における視覚障がい者等の読書環境の整備の推進に関する計画について定めるものです。 3 計画の期間 本計画は令和3年度から令和7年度までを対象とします。計画の策定後は、定期的に進捗状況を把握・評価していくものとします。 4 計画の対象 読書バリアフリー法第2条第1項において定義されている視覚障がい者等(視覚障がい者、読字に困難がある発達障がい者、寝たきりや上肢に障がいがある等の理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難である身体障がい者等。なお、ロービジョン者など障害者手帳の所持の有無は問わない。)を本計画においても対象とします。 なお、読書環境の整備に当たっては、視覚障がい者等以外の、読書や図書館の利用に困難を伴う者への配慮も必要です。 また、乳幼児期、青少年期、成人期、高齢期の各ライフステージにおいて必要とされる様々な種類の書籍を考慮しつつ取り組む必要があります。なお、同項において、「書籍」には、雑誌、新聞その他の刊行物も含むこととしています。 5 視覚障がい者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 読書は、乳幼児期から高齢期までの一生涯において、個人の学びや成長を支えるものであり、教養や娯楽を得る手段のみならず、教育や就労を支える重要な活動です。特に、学校教育段階においては、教科書以外にも、副読本、参考書、資料集、学術論文等が、学習や教育・研究に関連する活動の支えとなります。また、中等教育機関、高等教育機関及び職業教育機関への選抜試験の受験、進学や資格取得のほか、就職活動、職業生活等の人生のあらゆる段階において書籍を通じて専門知識を得ることが不可欠です。 一方で、本県において点字図書、拡大図書、音訳図書、触る絵本、LLブック、布の絵本など視覚障がい者等が利用しやすい図書(以下「アクセシブルな書籍」という。)や音声読み上げ対応の電子書籍、デイジー図書、マルチメディアデイジー図書、オーディオブック、テキストデータ等(以下「アクセシブルな電子書籍等」という。)はいまだ十分に普及しているとはいえず、全ての県民が等しく文字・活字文化の恩恵を受けることができる状況とはなっていません。 県立図書館では、図書館利用が困難な利用者に対して行っている「はーとふるサービス」を普及・啓発するために、館内に「はーとふるサービスコーナー」を設置し、点字図書、拡大図書、触る絵本、LLブック、布の絵本、デイジー図書、マルチメディアデイジー図書、オーディオブック等など視覚障がい者等が利用しやすい書籍等を置き、コーナーの一角にはマルチメディアデイジー図書を体験できるパソコンや拡大読書器を設置するなど、サービスの普及啓発や読書環境の整備に努めていますが、これらの資料等を必要としている利用者への周知は十分にできているとはいえません。資料については、県立図書館や社会福祉法人鳥取県ライトハウス点字図書館(以下「ライトハウス点字図書館」という。)において、窓口貸出や郵送貸出により利用者に届けられていますが、身近な図書館でこれらの資料が必ずしも入手しやすいとはいえない状況です。 また、アクセシブルな書籍及びアクセシブルな電子書籍等(以下「アクセシブルな書籍等」という。)の製作等に協力する人材の確保が難しくなってきており、今後の継続的な提供体制に課題があります。 6 本計画の周知及び啓発 本計画は、県政だよりへの掲載やチラシの配布等により広く県民に周知し、本計画の趣旨について啓発に努めます。 なお、周知を行う際は、支援を必要とする視覚障がい者等に情報が届くよう、県立図書館やライトハウス点字図書館などにおいて音声読み上げに対応したWEBページを制作するなど周知方法を工夫します。 7 計画の推進体制 県、市町村、関係団体等で読書環境の整備に関する情報交換を行い、「Ⅲ 施策の方向性」に示す方向性に沿って、視覚障がい者等の読書環境の整備を推進していきます。 Ⅱ基本的な方針 1 アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供 市場で流通している電子書籍等が少なかった時代には、著作権法第37条第1項に基づき製作された点字図書や、同条第3項に基づき障害者施設、図書館、一定の要件を満たすボランティア団体等が権利者の許諾なく製作できる録音図書、拡大図書等の書籍が、視覚障がい者等の読書環境を支える中心となってきました。 今後は、それらに加え、市場で流通する電子書籍等と、著作権法第37条第3項に基づき製作される電子書籍等を車の両輪として、両面から取組を進め、アクセシブルな電子書籍等の普及を図る時代となっています。 合わせて、アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等を整備し、貸出を行うとともに、利用のための研修を行うなど視覚障がい者等がより円滑に使える環境を整備することも必要です。 また、障がいの状況によって端末機器等を使えない場合や、紙や布といった現物の書籍が必要とされる場面・ニーズもあるため、引き続きアクセシブルな書籍の提供を継続するための取組も必要です。更に、書籍利用のためのアクセシビリティのみならず、書籍の入手や利用に係るアクセシビリティの改善・向上にも合わせて取り組む必要があります。 2 アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上 利用者の視点から、アクセシブルな書籍等の「量的拡充」及び「質の向上」を図る必要があります。 「量的拡充」は、今後のアクセシブルな書籍等のニーズの拡大に対応するため、公立図書館(県立図書館及び市町村立図書館のことをいう。)、ライトハウス点字図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館において、各々の果たすべき役割に応じ、アクセシブルな書籍等を充実させることが重要です。また、アクセシブルな書籍等を県内の視覚障がい者等に届けるため、県内の図書館ネットワークを活用するとともに、サピエ図書館等の全国的なネットワークを利用して、製作されたアクセシブルな書籍等の共有と提供を図ることが重要です。 「質の向上」については、製作に従事する者の研修が必要です。 また、「量的拡充」及び「質の向上」のいずれにおいても、これまでに製作された書籍等について、書籍・電子書籍等の形態を問わずアクセシブルなものにすることが効果的です。特に、教育や研究に必要とされるアクセシブルな電子書籍等がニーズに比して不足しており、この分野の取組が喫緊の課題です。 なお、書籍等のコンテンツや用途によって、「正確性」が求められる場合、「速報性」が求められる場合など様々であり、双方の観点のバランスを取りながら進めていくことが必要です。 3 視覚障がい者等の障がいの種類・程度に応じた配慮 視覚障がい者等の障がいの種類及び程度によって、アクセシブルな書籍等の提供媒体及び利用方法は異なります。このため、個々の障がいに対応したニーズを的確に把握し、拡大読書器などの読書支援機器の設置、点字やピクトグラム表示の活用など読書環境の整備に努めるとともに、障がいの特性に応じ、適切な形態のアクセシブルな書籍等を用意することが必要です。 なお、視覚障がい者等が、著作権法第37条第1項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな書籍(以下「特定書籍」という。)及び同条第2項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな電子書籍等(以下「特定電子書籍等」という。)の利用を希望する場合、これらの特定書籍・特定電子書籍等を視覚障がい者等の利用に供する機関においては、公益社団法人日本図書館協会の「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」を参考にするなど、障害者手帳や医学的診断基準に基づく診断書の有無に限ることなく、他の根拠資料を用いる等、柔軟な対応により障がい等の確認を行うことが適切です。 Ⅲ施策の方向性 1 視覚障がい者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 【基本的考え方】 県立図書館は、市町村立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館(以下、「市町村立図書館等」という。)及びライトハウス点字図書館と連携することにより、アクセシブルな書籍等の充実やその円滑な利用のための支援を充実するとともに、視覚障がい者等がこれらの図書館を利用しやすくなるような県内の体制整備を図ります。  また、ライトハウス点字図書館については、アクセシブルな書籍等の充実、県立図書館、市町村立図書館等に対する利用に関する情報提供、視覚障がい者による十分かつ円滑な利用の推進を図ることが必要です。 (1)アクセシブルな書籍等の充実 ・県立図書館は県内の市町村や関係機関の実情に配慮しながら、ライトハウス点字図書館や市町村立図書館等及びボランティア関係団体とも連携し、出版情報を共有するなどアクセシブルな書籍等の充実に努めます。 ・ライトハウス点字図書館が、今まで培ってきたノウハウを生かし、引き続き障がいの種類及び程度に応じたアクセシブルな書籍等が充実するよう、ライトハウス点字図書館による製作が必要です。 (2)円滑な利用のための支援の充実 ・ライトハウス点字図書館と県立図書館、市町村立図書館等とのネットワークを構築し、連携会議の開催、図書館間での蔵書の交換の実施等により、視覚障がい者等が身近にある図書館を円滑に利用し読書ができる環境づくりを進めます。 ・あいサポート運動をはじめとした共生社会実現に向けた取り組みの一つとして、県立図書館の「はーとふるサービス」等、視覚障がい者等が図書館で読書ができる環境等の周知を図ります。 また、県立図書館及びライトハウス点字図書館は、市町村立図書館等における障がい者サービスを推進するため、情報提供や研修の実施に努めます。 ・県立図書館は、閲覧室内の「はーとふるサービスコーナー」において、アクセシブルな資料を充実させるとともに、マルチメディアデイジーを視聴体験するためのパソコンや拡大読書器を設置します。また、ピクトグラムや分かりやすい表現を使用した利用案内や、音声読み上げに対応したホームページを作成するなど、利用者のニーズの把握に努めながら、施設の整備や設備、情報提供体制など必要なサービスの充実を図ります。 ・学校における学校図書館を活用した支援を充実するため、県立図書館内の学校図書館支援センターが中心となって研修等を実施します。また、設置者である各教育委員会等に対し、司書教諭・学校司書の配置や、司書教諭をはじめ学級担任や通級担当教員、特別支援教育コーディネーター及びLD等専門員等の教員間の連携の重要性について周知するなどして支援体制の整備を図ります。 ・インクルーシブ教育システムの理念にのっとって、視覚障がい等のある児童生徒及び学生等が在籍する初等中等教育機関及び高等教育機関において読書環境を保障することが重要であり、以下の取組を推進します。 ①ライトハウス点字図書館及び県立図書館と市町村立図書館及び学校図書館の連携を図り、視覚障がい等のある児童生徒を支援するための取組を進めます。 ②県及び市町村教育委員会を通して、各学校に対し、視覚障がい等のある児童生徒が生涯学習の場である図書館の利用について学ぶ機会を設けることの重要性及び具体的な利用方法について周知を図ります。 ③県内大学の学生支援センターなど大学等の障がい学生支援を担う施設は、大学図書館に類する役割や機能を有する施設であれば、著作権法施行令(昭和45年政令第335号)において視覚障がい者等のための複製が認められる者として位置付けられていることについて大学等に周知するとともに、大学等の図書館と学内の障がい学生支援担当部局等の関係部局との情報共有を促進し、相互の連携を強化することが必要です。 ・ライトハウス点字図書館は、公立図書館等との連携を図り、視覚障がい者等に対し、様々なアクセシブルな書籍等や端末機器を活用して読書の機会を提供するとともに、点字・録音図書等の郵送サービスを含む地域の視覚障がい者に対するアクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援を引き続き実施することが必要です。 ・ライトハウス点字図書館が担ってきた音訳図書の製作やアクセシブルな書籍等の利用に関する情報提供などの機能は、視覚障がい者以外の視覚による表現の認識が困難な者の読書環境の整備の推進に役立つものであることから、県立図書館や市町村立図書館等との連携を推進します。また、市町村や関係団体等と協議しながら、ライトハウス点字図書館の利用対象者の範囲について、アクセシブルな書籍等を必要とする方が利用できるよう、受入れ環境の整備及びアクセシブルな書籍等の充実を図ることが必要です。 2 インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) 【基本的考え方】 県立図書館、市町村立図書館等及びライトハウス点字図書館は、平常時はもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症のような外出が困難になる状況でも読書を楽しめるよう、国立国会図書館やサピエ図書館のインターネットを利用したサービスの提供について周知を行い、アクセシブルな書籍等の十分かつ円滑な利用を促進します。 また、県立図書館、市町村立図書館等、ライトハウス点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の間の連携強化を図り、国立国会図書館及びサピエ図書館が提供するインターネットを利用したサービスの提供体制の強化を図ります。 ・国立国会図書館の視覚障がい者等用データやサピエ図書館の十分な活用を図るため、視覚障がい者だけでなく視覚による表現の認識が困難な者も利用できることも含め、関係機関・団体間の連携等を通してこれらシステムの周知を図ります。 ・ライトハウス点字図書館と県立図書館、市町村立図書館等との連携を図り、国立国会図書館やサピエ図書館のサービスについての周知や連携に必要な情報提供を研修会の開催やリーフレットの作成等を通じて行い、多くの視覚障がい者等が視覚障がい者等用データの送信サービスやサピエ図書館を利用できるような環境の整備を進めます。 ・このような取組を進めていく中で、視覚障がい者等の障がいの特性に応じた利用しやすいサービスが提供できるよう、ライトハウス点字図書館、県立図書館、市町村立図書館等が連携して、サービス内容や提供体制等を充実します。 3 特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 【基本的考え方】 特定書籍・特定電子書籍等の製作支援のため、質の向上を図るための取組に対する支援を行います。 ・ライトハウス点字図書館におけるアクセシブルな電子書籍等の充実及び質の向上を図るため、製作手順や仕様の基準についてサピエ図書館を運営する者と情報交換を行い、特定書籍や特定電子書籍等の製作を行う者への製作手順等の共有を図ります。 ・ライトハウス点字図書館、県立図書館及び市町村立図書館等が連携し、特定書籍や特定電子書籍等の製作のノウハウや製作された書籍等に関する情報を共有し、製作の効率化を図ります。 ・ライトハウス点字図書館及び県立図書館は、郷土出版物を刊行する出版者と、特定書籍及び特定電子書籍等の製作に関して質の向上を図るための取組に資する情報交換を行います。 ※特定書籍・特定電子書籍等 著作権法第37条により、視覚障がい者等のために著作権者等の許諾なく点訳・音訳等により複製された書籍・電子書籍等。 4 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 【基本的考え方】  アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等、これに関する情報及びこれを利用するのに必要な情報通信技術について視覚障がい者等が入手及び習得するため、必要な取組を行います。 ・視覚障がい者等によるアクセシブルな書籍等の利用を促進するため、端末機器等の利用に当たり、支援の必要な者が必要な支援を受けられるよう、以下の取組を推進します。 ①ライトハウス点字図書館と公立図書館が連携し、視覚障がい者等に対して、様々な読書媒体の紹介やそれらを利用するための端末機器等に関する情報を提供します。なお、読書困難者の読書を支援する拡大読書器、ルーペ等の拡大補助具、点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の機器について、個々の状態に応じた活用となるよう留意します。 ②ライトハウス点字図書館、公立図書館が連携し、サピエ図書館及び国立国会図書館の視覚障がい者等用データの送信サービス等にかかる、パソコン、タブレット、スマートフォン等を用いた利用方法に関する相談を受けるとともに、訪問による支援の実施や講座の開催などにより機器活用方法の習得を支援します。また、端末機器の貸出等をすることにより、送信データの活用推進を図ります。 ・上記の取組を推進するため、ライトハウス点字図書館、公立図書館等が連携し、視覚障がい者等が身近な地域において端末機器等の利用に係る講習会等の支援を受けることが可能となるよう、端末機器等の習得支援等を行う県立図書館及び市町村立図書館等の職員等に対する研修を実施します。 ・小・中・高等学校、特別支援学校の学習指導要領において、「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」と規定しており、また、現在、学校におけるICT環境整備が進められていることも踏まえ、県立図書館内の学校図書館支援センターが中心となって、各教育委員会の指導主事等に対してその趣旨を説明する等、その周知を図ります。 5 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) 【基本的考え方】  特定書籍・特定電子書籍等の製作及びアクセシブルな書籍等の利用のための支援に関する人材について、これらの養成、資質の向上及び確保に係る支援を行い、円滑な利用を促進します。  また、県立図書館及び市町村立図書館等において、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実のため、司書等を対象とした研修及び養成において、視覚障がい者等に対する図書館サービスについて取り上げ、司書等の資質の向上を図ります。 (1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上 ・司書及び司書補(以下「司書等」という。)、司書教諭及び学校司書並びに職員、ボランティア及び図書館協力者(以下「職員等」という。)を対象に、県立図書館が中心となってライトハウス点字図書館とも連携し、障がい者サービスに関する内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器の使用方法に習熟するための研修等を実施し、資質の向上を図ります。また、公立図書館においては、障がい当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備を行います。 (2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 ・ライトハウス点字図書館、県立図書館、市町村立図書館等及びそこで活動するボランティア団体等における点訳、音訳、アクセシブルな電子データ製作等に携わる人材について、製作基準の共有やノウハウ等の習得に係る研修を実施し、質の向上を推進します。 ・点訳や音訳、アクセシブルな電子データ製作に携わる人材の不足が課題となっており、この分野における人材の確保が必要となっています。このため、ライトハウス点字図書館、県立図書館及び市町村立図書館等並びに県及び市町村が連携して、人材の募集や養成、活動支援等に計画的に取り組みます。 なお、製作人材の確保に関しては、ボランティアのみに頼ることなく、様々な方策を関係者間で検討していく必要があります。 ・新たな端末機器やソフトウェア、合成音声の活用等、技術の進歩に応じてアクセシブルな書籍等の製作を行う人材や体制の確保にも努めます。 Ⅳ 具体的な指標 区分 「視覚障がい者等による図書館の利用に係る体制の整備等」関連 指標 県立図書館のアクセシブルな書籍等の所蔵冊数 現状(令和元年度) 15,354冊 目標(令和7年度) 18,500冊 県立図書館のアクセシブルな書籍等の年間貸出冊数 現状(令和元年度) 15,638冊 目標(令和7年度) 28,000冊 県立学校図書館、県立大学図書館のアクセシブルな書籍等の所蔵冊数 現状(令和元年度) 1,895冊 目標(令和7年度) 貸出に必要な数 県立学校図書館、県立大学図書館のアクセシブルな書籍等の年間貸出冊数 現状(令和元年度) 233冊 目標(令和7年度) 500冊 ライトハウス点字図書館のアクセシブルな書籍等の所蔵冊数 現状(令和元年度) 8,446冊 目標(令和7年度) 貸出に必要な数 ライトハウス点字図書館のアクセシブルな書籍等の年間貸出冊数 現状(令和元年度) 11,004冊 目標(令和7年度) 13,200冊 県立図書館の「はーとふるサービス」利用登録者数 現状(令和元年度) 66人 目標(令和7年度) 120人 ライトハウス点字図書館の利用登録者数 現状(令和元年度) 327人 目標(令和7年度) 400人 区分 「インターネットを利用したサービスの提供体制の強化」関連 指標 サピエ会員(個人会員)の登録者数 現状(令和元年度) 80人 目標(令和7年度) 150人 ライトハウス点字図書館、県立図書館及び特別支援学校の国会図書館障がい者等用データの送信承認の登録率 現状(令和元年度) 10% 目標(令和7年度) 100% 区分 「特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援」関連 指標 県内のアクセシブルな書籍等(点字図書、デイジー図書)のサピエ図書館への年間アップロード数 現状(令和元年度) 64本 目標(令和7年度) 120本 区分 「端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援」関連 指標 県立図書館のアクセシブルな書籍等を利用するための端末機器の所有数 現状(令和元年度) 43台 目標(令和7年度) 貸出に必要な数 指標 県立図書館のアクセシブルな書籍等を利用するための端末機器の貸出数 現状(令和元年度) 270台 目標(令和7年度) 500台 指標 ライトハウス点字図書館のアクセシブルな書籍等を利用するための端末機器の所有数 現状(令和元年度) 2台 目標(令和7年度) 貸出に必要な数 ライトハウス点字図書館のアクセシブルな書籍等を利用するための端末機器の貸出数 現状(令和元年度) 6台 目標(令和7年度) 60台 区分 「製作人材・図書館サービス人材の育成等」関連 指標 点訳・音訳奉仕員(ボランティア)の数 現状(令和元年度) 213人 目標(令和7年度) 310人 Ⅴ 用語集 用語 視覚障がい者等 説明 視覚障がい、発達障がい、肢体不自由その他の障がいにより、書籍について、視覚による表現の認識が困難な者(読書バリアフリー法第2条第1項)。 具体的には、視覚障がい者、読字に困難がある発達障がい者、寝たきりや上肢に障がいがある等の理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難である身体障がい者等。なお、ロービジョン者など障害者手帳の所持の有無は問わない。 用語 ロービジョン 説明 何らかの原因により視覚に障がいを受け「見えにくい」「まぶしい」「見える範囲が狭くて歩きにくい」など日常生活での不自由さをきたしている状態。 用語 書籍 説明 雑誌、新聞その他の刊行物も含む。 用語 アクセシブルな書籍 説明 視覚障がい者等が利用しやすい書籍(読書バリアフリー法第2条第2項)。 視覚障がい者等がその内容を容易に認識することができる書籍。 例えば、点字図書、拡大図書、音訳図書、触る絵本、LLブック、布の絵本等。 用語 点字図書 説明 点字によりつくられた図書。 用語 拡大図書 説明 視力が低下した人や、高齢者などにも読みやすいように、文字の大きさや行間等を調整し、大きな活字で組みなおした「大活字本」や、既存の本を読みやすい大きな文字に書き直して作られた「拡大写本」のこと。 用語 音訳図書(録音図書) 説明 耳で聴いて読書できるように朗読し、その音声を収録したもの。 用語 触る絵本 説明 指で読むために作られた絵本。本の挿し絵は様々な材料で作られており、盛り上がった形となっている。 用語 LLブック 説明 読むことに困難を伴いがちな青年や成人を対象に、生活年齢に合った内容を、分かりやすく読みやすい形で提供すべく書かれた本。 用語 布の絵本 説明 厚地の台布に、絵の部分をアップリケし、マジックテープやスナップ、ボタン、ファスナー、紐で留めたり、外したり、結んだりできるようにし、文の部分を手書きした、絵本と遊具の性質を兼ね備えた手作り図書。 用語 アクセシブルな電子書籍等 説明 視覚障がい者等が利用しやすい電子書籍等(読書バリアフリー法第2条第3項)。 電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録…(略)…であって、電子計算機等を利用して視覚障がい者等がその内容を容易に認識することができるもの。 例えば、音声読み上げ対応の電子書籍、デイジー図書、オーディオブック、テキストデータ等。 用語 デイジー図書 説明 視覚障がい者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためにカセットに代わるデジタル録音図書の国際標準規格。読みたい任意のページに飛んだりできる。 用語 マルチメディアデイジー 説明 本文のテキストに音声データと見出し等の文書構造や画像を付加したもの。章や節、任意のページに飛ぶことができる機能を付加しているほか、音声を同期させることで、読み誤りなく作成できる。 用語 オーディオブック 説明 書籍等の文章を読み上げ又は口演し、必要に応じて効果音及びBGM 等を付与することにより、利用者が耳で聴くことを通じて情報を得られる形式の電子音声コンテンツ。 用語 テキストデータ 説明 文字コードだけで構成された文字列や文書のデータ。ワープロデータのように書体や行間などの情報を含まないもの。 用語 アクセシブルな書籍等 説明 アクセシブルな書籍及びアクセシブルな電子書籍等。 用語 特定書籍 説明 著作権法第37 条第1項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな書籍。 用語 特定電子書籍等 説明 著作権法第37 条第2項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな電子書籍等。 用語 サピエ図書館 説明 視覚障がい者及び視覚による表現の認識に障がいのある方々に対して点字データ、デイジーデータ等を提供するネットワーク。日本点字図書館がシステムを管理し、全国視覚障害者情報提供施設協会が運営を行っている。正式名称は「視覚障害者情報総合ネットワーク」。 用語 公立図書館 説明 県立図書館及び市町村立図書館 用語 市町村立図書館等 説明 市町村立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館。 用語 インクルーシブ教育システム 説明 人間の多様性の尊重等の強化、障がい者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組み。 用語 司書等 説明 司書及び司書補。 用語 司書教諭等 説明 司書教諭及び学校司書。 用語 職員等 説明 職員、ボランティア及び図書館協力者。 用語 ピアサポート 説明 同じ課題や境遇を持つ人が、互いに支え合い、助け合うこと。