DNA型鑑定の運用に関する要領の制定について(例規通達)

DNA型鑑定の運用に関する要領の制定について(例規通達)

平成22年12月2日
鳥科例規第1号外共発

 このたび、DNA型鑑定資料及び鑑定書等をより一層適切に取り扱い、将来の公判等における鑑定結果の信頼性を確保するため、別添のとおり「DNA型鑑定の運用に関する要領」を制定し、平成22年12月2日から施行することとしたので、本要領の趣旨を十分理解し、その運用に遺漏のないようにされたい。

別添
   DNA型鑑定の運用に関する要領
第1 目的
  この要領は、DNA型鑑定に関して必要な事項を定め、もってDNA型鑑定の適正な運用を図ることを目的とする。
第2 DNA型鑑定の意義及び活用の目的
 1 意義
   DNA型鑑定は、ヒト身体組織の細胞内に存在するDNAの塩基配列の多型性に着目し、これを分析することによって、個人を高い精度で識別する鑑定法である。
   なお、この鑑定は、遺伝病等の特定の遺伝形質の有無やその内容を分析するものではなく、また、そのようなことが可能な鑑定法ではないことをよく理解しておかなければならない。
 2 活用の目的
   DNA型鑑定は、血痕等の現場資料からの被疑者の特定、被疑者でない者の捜査対象からの除外等の個人識別に活用するものとする。
   なお、「被疑者でない者の捜査対象からの除外」とは、容疑者全てについてDNA型鑑定を実施しなければならない旨を意味するものではなく、誤逮捕の防止や被疑者の絞り込み等に活用する等DNA型鑑定の有用性を意味するものである。
第3 鑑定員
  DNA型鑑定は、警察庁科学警察研究所の法科学研修所において所要の研修課程を修了し、DNA型鑑定に必要な知識及び技能を修得したと認められる者に対し、科学警察研究所長が交付するDNA型鑑定資格認定書(以下「認定書」という。)を有する鑑定技術職員が行うものとする。
  なお、認定書を有しない鑑定技術職員が検査補助者として作業に当たることは差し支えないものとする。
第4 鑑定資料
 1 鑑定対象資料
   DNA型鑑定の対象となる資料(以下「資料」という。)で、その主なものは次のとおりである。
 (1) 血液((2)に掲げる血液を除く。)・血痕、精液・精液斑、精液及び膣液等の混合液・混合斑、唾液・唾液斑、毛根鞘の付いた毛髪、皮膚、筋、骨、歯、爪並びに臓器等の組織片
 (2) 被疑者、被害者等から提出を受けた口腔内細胞及び被疑者の身体から採取した血液
 2 鑑定資料取扱上の留意事項
 (1) 採取時等の留意事項
    資料の採取等に当たっては、次に掲げる事項に留意するとともに、採取状況、採取経過を明らかにする等証拠の証明力の確保に努めるものとする。また、資料を取り扱う際には、直接手指を触れないように留意する等その取扱いを厳格にしなければならない。
   ア 乾燥血痕等の採取
     凶器や着衣等、持ち運びが容易なものに付着した血痕や精液斑等は、可能な限り、付着したままの状態で採取すること。ただし、持ち運びが困難なものに付着している等これにより難い場合で、乾燥して血粉状又は鱗片状を呈する等剥離可能なときは、剥がし取って採取すること。
     なお、これらの方法がいずれも困難な場合には、蒸留水で湿らせた綿棒等にできる限り濃く転写して採取すること。
   イ 未乾燥血液等の採取
     未乾燥血液又は流動性を有する血液(1(2)に掲げる血液を除く。)、精液等は、滅菌済みの注射筒等を用いて資料を容器に入れて採取すること。
   ウ 毛根鞘が付いている毛髪の採取
     毛根鞘が付いている毛髪は、1本ごとに個別に採取し、適切な容器等に入れる等して毛根鞘の脱落防止を図ること。
     なお、容器等については、毛根鞘が密着して剥離が困難となるものは避けなければならない。
   エ 死体からの資料の採取
     死体の心臓血及び筋、臓器(心臓、肝臓、腎臓等)等の組織片については、損壊していないものを採取すること。
   オ ルミノール試薬等の使用限度
     血痕を検索する際に使用するルミノール試薬、精液斑を検索する際に使用する試薬等の噴霧は、DNAを破壊するおそれがあるため、その使用は必要最小限度にとどめること。
     なお、「必要最小限度」とは、2回程度をいう。
   カ 口腔内細胞等の採取
     資料として被疑者、被害者等から口腔内細胞の提出を受け、又は被疑者から血液を採取する場合には、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号。以下「刑訴法」という。)等に定めるところによるほか、次に掲げる事項に留意すること。
     なお、資料の採取に当たっては、鑑定に必要な量を採取するものとする。
   (ア) 口腔内細胞の提出を受ける際の措置
      口腔内細胞の提出を受ける際は、滅菌等された適切な採取キットを使用するとともに、付属の説明書に記載されている指示に従って採取させた後、提出者の面前で密封を行うこと。また、採取資料を汚染することのないよう十分注意すること。   
   (イ) 血液の採取時の措置
      血液を採取する際は、必要以上に採取しないように心掛けること。採取した新鮮血については、検査の容易性を考慮して、凝固防止剤(EDTA等)を用いて凝固防止に努めるものとする。
      なお、被疑者の身体からの採血は、その形態にかんがみ、鑑定処分許可状の発付を得て行うこと。さらに、採血に際して被疑者の抵抗が予想される場合など、直接強制が必要なときは、鑑定処分許可状と併せて身体検査令状の発付を得て行うこと。
   キ 鑑定嘱託されるまでの措置
     採取等した資料は、鑑定嘱託されるまでの間、冷凍庫又は超低温槽(以下「冷凍庫等」という。)を活用し、資料の変質防止等に努めること。また、他の資料との接触及び混同を防止するため、採取等年月日、事件名、資料名等を記載したラベルを貼付するなどして個別の容器等に収納保存すること。
 (2) 現場資料の鑑定及び鑑定後の留意事項
   ア 鑑定はなるべく資料の一部をもって行い、当該資料の残余又は鑑定後に生じた試料(刑事部科学捜査研究所(以下「科捜研」という。)において鑑定に使用するため資料から採取等して分離した物をいう。以下同じ。)の残余は、鑑定嘱託をした警察署等へ返却し、再鑑定に配慮し、保存すること。この際、冷凍庫等の活用を図ること。
     なお、鑑定後に生じた試料の残余で再鑑定が可能と認められれば、試料の残余のみ冷凍庫等で保存することできる。
   イ 資料の残余又は試料の残余は、他の資料との接触及び混同を防止するため、個別の容器等に収納保存すること。
     なお、容器等は凍結破損しないものを使用すること。
   ウ アの保存に当たっては、資料の残余については採取・保存年月日、事件名、押収した際の資料名等を、試料の残余については同表記に加えて資料の残余との同一性を明らかにする事項を記載したラベルを貼付するなどして分類保存するとともに、保存簿冊を備え付け、保存の状態を明らかにしておくこと。
 3 口腔内細胞等の資料の措置
   1(2)に掲げる資料について、鑑定後に残余が生じた場合には、次により措置するものとする。
 (1) 被疑者、被害者等から任意提出を受けた資料については、任意提出書の提出者処分意見欄の記載に従って措置することとなるが、警察の処分に委ねられている場合はこれを廃棄すること。
 (2) 鑑定処分許可状等により被疑者の身体から採取した血液については、廃棄すること。
第5 保管申請等に関する手続き
 1 資料等の保管申請手続き
   重要事件の再鑑定可能な資料又は試料(以下「資料等」という。)の保管について、警察署等の冷凍庫等で保管が困難な場合、警察署長等は、DNA型鑑定資料(試料)保管申請書(様式第1号)により、科捜研の所長(以下「科捜研所長」という。)に申請することができる。この場合において、警察署長等は、科捜研所長と協議を行い、その結果、科捜研所長がDNA型鑑定用の超低温槽で保管が適切であると認めた場合は、当該資料等を速やかに送付するものとする。
なお、科捜研において資料等を保管する場合、科捜研所長は、資料等ごとに分類保管するとともに、DNA型鑑定資料(試料)保管簿(様式第2号)を備え付け、保存の状態を明らかにしておくものとする。
 2 資料等の返還手続き
   科捜研のDNA型鑑定用の超低温槽に保管依頼している資料等を保管する必要がなくなった場合、警察署長等は、DNA型鑑定資料(試料)返還依頼書(様式第3号)を作成し、速やかに科捜研所長に送付しなければならない。この場合において、科捜研所長は、DNA型鑑定資料(試料)返還通知書(様式第4号)とともに当該資料等を速やかに返還するものとする。
第6 鑑定書等の取扱い及び保管
   鑑定書その他鑑定結果又はその経過等が記録されている書類については、他の捜査書類と同様に刑訴法等の定めに従い適切に取り扱うとともに、将来の公判等に備えて適切に保管しなければならない。
なお、「その経過等が記録されている書類」とは、鑑定に用いた検査方法やその経過の記録(ワークシート等)、鑑定結果に関わる各種分析データ等を意味するものである。

様式 省略

  

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