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平成29年度政務活動費に関する住民監査請求(却下)

 平成30年10月12日付け及び15日付けで請求のあった平成29年度政務活動費に関する鳥取県職員措置請求(住民監査請求)については、以下のとおり地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条に規定する住民監査請求の要件を欠くと認め、平成30年11月8日付けで却下しました。
  

1 請求の主旨(請求人の主張)

 平成29年度分収支報告書等関係書類中に、本件請求2件に係る議員について地方自治法第100条第14項から第16項に基づく「鳥取県政務活動費交付条例」及び「鳥取県政務活動費交付条例施行規程」、「政務活動費の使途及び支出手続きに関する指針」に反する不当な財務会計上の行為に該当すると思料する支出が見受けられた。
 これらの議員は、政務活動費の使途として不適正なものについては、県に返還する義務がある。
 また、鳥取県議会事務局(知事)及び鳥取県議会議長は、これらの議員に対してその返還請求権(不当利得返還請求権)を有しているところ、その返還請求を怠っている。
 これは地方自治法第242条第1項の「違法もしくは不当に財産の管理を怠る事実」に該当するものであり速やかに、当該議員に対し、利息を付した形で返還請求を行い、その怠る事実が是正されるべきである。

(措置請求)
 監査委員は、鳥取県議会事務局(知事)及び鳥取県議会議長に対し、以下のための必要な措置 を取るよう請求する。
 本件請求2件に係る議員の違法若しくは不当な公金の支出を是正し、県は利息を付した形で返 還請求をすべき。
  
(請求の理由)
(1)ある団体に対する会費の支出について、地方公共団体において政務活動にかかわりがなく不当な支出である。
(2)書籍の購入について、その内容が政務活動に関係がないものと思料され、不当又は不適当ある。
(3)政務活動で会合に伴う飲食費を支出するには、政務活動の目的等を証拠書類に記載することが必要であり、また居酒屋などで政務活動に係る重要な会合を行うということ自体が社会通念に反していることは明らかであり、不当な支出である。
  

2 住民監査請求としての適格性について

<結 論>

 請求人の主張は住民監査請求としての適格性の要件を欠くものと認め、請求を却下する。

<却下の理由>

 請求人の政務活動費の支出が違法又は不当であるとの主張は、法令及び指針に照らして違法性・不当性を具体的かつ客観的に摘示したものとはいえず、住民監査請求の適格性を欠くものであり、受け入れることができない。
  

[実質的要件審査の概要]

1 政務活動費の監査請求の判断基準

 

(1)政務活動費の使途の適否の基準

 政務活動費については、地方自治法(以下「法」という。)第100条第14項において「政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。」と規定されている。
 この規定に基づき、本県では鳥取県政務活動費交付条例(以下「条例」という。)第4条第2項の規定により、「政務活動費の使途及び支出手続きに関する指針」(以下「指針」という。)が定められており、各議員は政務活動費の執行に当たって、指針を尊重することが求められている。
 したがって、政務活動費の使途の適否の判断は、指針によって行うべきものである。
 また、平成21年12月17日の最高裁判決においては、「監査委員を含め区の執行機関が、実際に行われた政務調査活動の具体的な目的や内容等に立ち入ってその使途制限適合性を審査することを予定していないと解される。」と判示されている。
 さらに、平成22年3月23日の最高裁判決においては、「議員の調査研究活動は多岐にわたり、個々の経費の支出がこれに必要かどうかについては議員の合理的判断にゆだねられる部分があることも確かである。」と判示されている。
 これらの法令、指針及び2つの判決から、次のとおり判断すべきものである。

ア 指針において基準が個別・具体的に定められており、収支報告書及び添付された証拠書類の内容から一見明白に違法・不当と判断される場合は、監査の対象とすべきである。
イ 指針において基準が抽象的・概念的に定められており、個別・具体的な定めがない場合は、個々の経費の必要性の判断が議員の合理的判断にゆだねられている部分であり、具体的な目的や内容等に立ち入って違法・不当の審査をすることを予定していない部分であるから、監査の対象とはならないと解すべきである。
  なお、基準に例示事項が示されている場合であっても、抽象的・概念的に規定されていることにほかならないため、例示以外の記載内容を類推解釈又は拡大解釈により適用することはできない。

 なお、従来から指針は政務活動費の透明性を高めるため改善が図られているが、平成29年度の政務活動費の使途の判断基準としては、当然のことながら平成29年度に適用されていた指針を用いることとなる。
 

(2)住民監査請求としての摘示の要件

 法第242条に定める住民監査請求は、当該地方公共団体の執行機関又は職員による違法又は不当な財務会計上の行為若しくは怠る事実があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し監査を求め、必要な措置を講ずべきことを請求できる権能を認めたものである。
 なお、平成2年6月5日の最高裁判決においては、「監査請求の対象が(中略)具体的に摘示されていないと認められるときは、当該監査請求は、請求の特定を欠くものとして不適法であり、(中略)監査する義務を負わない。」と判示されている。
   

(3)本件請求への適用

 以上のことから、本件請求に対しては、次のとおり適用することとする。

ア 基準が個別・具体的に示されている事項について、請求人が個別・具体的に摘示している事案については、違法・不当と言える場合には監査を実施し、その他の場合は却下する。
イ 基準が抽象的・概念的に示されている事項については、監査の対象としえないため却下する。 

 

2 住民監査請求としての適格性について

(1)請求期間の適法性について(1号請求、2号請求)

 住民監査請求は法第242条第2項により「当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし正当な理由があるときは、この限りでない」とされている。本請求に関し請求人がその事実を知ることができたのは鳥取県議会のHPに掲載された本年7月2日以降であることが確認できたことにより、同条同項ただし書きの適用により請求期間については適法である。

(2)「指針」に基づく適格性について

 (ア)書籍の購入について(1号請求)

    指針では、次のとおりとされている。

【資料購入費】
  (1) 領収書による実費とすること。
  (2) 政務活動に必要なものに限るが、実績等を考慮の上、経費を按分し、証拠書類に按分の根拠を明示すること。 

  ・確認された事実
   (1)については、領収書の写しが添付され記載された金額と整合していることから、指針に合致している。
   (2)については請求人が記載した理由は、指針には個別・具体的な定めがない。

 

 (イ)会費の支出について(1号請求)
    指針では、次のとおりとされている。
 【会費】
会費の支出対象である団体の活動内容や実態が、政務活動として適当であることが必要であること。
(備考)
・団体が主催する会議等に参加し団体構成員等と意見交換等を行う、あるいは政務活動に資する会報等資料の取得等を主たる目的とするものであることとし、以下を添付すること。
○団体等の性格、目的、活動内容及び県政への関連性 などがわかる概要資料
○会費の支出根拠(案内文書、請求書等)

・次の会費は、政務活動費として支出するのは不適当であること。
(1)団体の活動が政務活動に寄与しない場合、その団体に対して収める年会費月会費
(2)個人の立場で加入している団体などに対する会費等
(例)町内会費、公民館費、壮年会費、PTA会費、婦人会費、スポーツクラブ会費、商工会費、同窓会費、老人クラブ会費、ライオンズクラブ・ロータリークラブの会費等
(3)政党(県連)本来の活動にともなう党大会、党費、党大会賛助金等
(4)議会内の親睦団体(議員野球部、ゴルフ部等)の会費
(5)他の議員の後援会や政治資金パーティーなど選挙活動のための会合に出席する会費
(6)宗教団体の会費
(7)冠婚葬祭の経費(結婚式の祝儀、会費、香典、祭祀・祭礼の経費等)
(8)飲食・会食を主目的とする各種会合の会費

・ 会派(議員連盟)での合同調査活動等に充てるため、会派(議員連盟)に拠出した経費については、「調査研究費」の項目に計上すること。(「政務活動費に係る使途基準の項目別経費の例示」(別紙)を参照のこと。)
 なお、証拠書類として、会派(議員連盟)において作成した支出項目別に仕分けした決算書を提出すること。

  ・確認された事実
   指針の備考のとおり「団体等の性格、目的等がわかる概要資料」及び「会費の支出根拠」が添付されており、指針に合致している。また、請求人が不当であるとして記載した理由は、指針には個別・具体的な定めがない。
 
 (ウ)飲食代金の支出について(2号請求)
    指針では、次のとおりとされている。
【食糧費】
 県政に関する政務活動のために出席する懇談会等の経費で、その費用が会議等の主催者によって事前に定められている場合を除き、5,000円を上限とすること。
(備考)
・政務活動としての懇談会等での飲食経費について、自己負担分を食糧費として支出することは可能であること。この場合、会食等を伴う政務活動の目的等を証拠書類に記載すること。
 ただし、飲食・会食を主目的とする各種会合又は、バー、クラブなど会合を行うのに適切な場所とは言えない場所での飲食費は除く。
・会派(議員連盟)での合同調査活動等に充てるため、会派(議員連盟)に拠出した経費については、「調査研究費」の項目に計上すること。なお、証拠書類として、会派(議員連盟)において作成した支出項目別に仕分けした決算書を提出すること。 

  ・確認された事実
   支出金額については、指針に定められた5,000円の上限を超えておらず、指針に合致している。
   また、請求人が添付した甲第1号証外の書面は、意見交換会が飲食・会食を主目的とするものではないことを示す証拠書類及び支出項目別に仕分けした決算書として添付されていると認められる。
   なお、請求人が不当であるとして記載した理由は、指針には個別・具体的な定めがない。

   以上のことから、請求人の政務活動費の支出が違法又は不当であるとの主張は、法令及び指針に照らして違法性・不当性を具体的かつ客観的に摘示したものとはいえず、住民監査請求の適格性を欠くものであり、受け入れることができない。

3 監査委員の除斥

 なお、本件請求において議選委員2名は、法第199条の2の規定により関与しなかった。

 

[参考]

 (1)地方自治法(住民監査請求)

第242条 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
   
   

(2)地方自治法(調査権・刊行物の送付・図書室の設置等)

第100条 (略)
14 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。
15 前項の政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。
     
     

(3)鳥取県政務活動費交付条例

(政務活動費の使途等)
第4条 議員は、政務活動費を、県政に関する調査研究その他議会の審議能力の強化に資するため必要な経費であって、別表に定めるものに充てなければならない。
2 議長は、政務活動費の使途及び支出手続に関する指針を定めるものとする。
3 議員は、政務活動費の執行に当たっては、前項の指針を尊重しなければならない。

 


          別表 (第4条、第5条関係)

 使途区分

内容

 調査研究費  実地調査及び調査委託に要する経費
 研修費  研修会等への参加に要する経費
 会議費  各種会議の開催に要する経費
 資料作成費  資料の作成に要する経費
 資料購入費  図書、資料等の購入に要する経費
 広報費  広報活動に要する経費
 事務所費  事務所の設置及び管理に要する経費
 事務費  事務遂行に要する経費
 人件費  補助する職員の雇用に要する経費
               
    
 (4)平成21年12月17日最高裁判決

 政務調査費条例及び政務調査費規程の定め並びにそれらの趣旨に照らすと、政務調査費条例は、政務調査費の支出に使途制限違反があることが収支報告書等の記載から明らかにうかがえるような場合を除き、監査委員を含め区の執行機関が、実際に行われた政務調査活動の具体的な目的や内容等に立ち入ってその使途制限適合性を審査することを予定していないと解される。

 
(5)平成22年3月23日最高裁判決

 議員の調査研究活動は多岐にわたり、個々の経費の支出がこれに必要かどうかについては議員の合理的判断にゆだねられる部分があることも確かである。
   

(6)平成2年6月5日最高裁判決

 住民監査請求においては、対象とする当該行為等を監査委員が行うべき監査の端緒を与える程度に特定すれば足りるというものではなく、当該行為等を他の事項から区別して、特定認識できるように個別的、具体的に摘示することを要し、(中略)、監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合しても、監査請求の対象が右の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは、当該監査請求は、請求の特定を欠くものとして不適法であり、監査委員は右請求について監査をする義務を負わないものと言わなければならない。

  

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