平成24年度議事録

平成24年10月30日会議録

 開催概要、資料はこちらです。
出席者(9名) 委員長
副委員長
委員
浜田 妙子
砂場 隆浩
森 雅幹
市谷 知子
濵辺 義孝
野田 修
小谷 茂
山口 享
横山 隆義
 
欠席者(なし)
 
 

傍聴議員 福間議員

職務のため出席した事務局職員
  梅林係長、中倉係長  、西村主事
1 開会 午前9時00分
2 休憩 午前10時26分
3 再開 午前10時35分
4 閉会 午前11時50分
5 議会 浜田委員長
6 会議録署名委員 野田委員、濵辺委員
7 付議案件及びその結果
  別紙日程表及び下記会議概要のとおり 

 午前9時00分 開会

◎浜田委員長
 それでは、ただいまから福祉生活病院常任委員会を開催いたします。
 本日の日程は、お手元の日程のとおりでございます。順序に従って議事を進めさせていただきます。
 初めに、会議録署名委員を指名いたします。きょうの会議録署名委員は、野田委員と濵辺委員にお願いいたします。
 では、本日の議題に入ります。
 本日の議題は、とっとりの豊かで良質な地下水の持続的な利用に関する条例(案)についてでございます。
 お手元にもありますように、本日は2名の方々に参考人として順次御出席いただくことにいたしております。
 ここに檜谷治先生に参考人としてお越しいただきました。
 この際、参考人に一言お礼を申し上げたいと思います。
 きょうは、本当にお忙しい中、お時間をつくっていただきまして、わざわざお越しいただきましたこと、心からお礼を申し上げます。委員会を代表といたしまして、感謝を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 では、早速ですが、議事の順序等について申し上げます。
 最初に、私のほうから委員会を代表して総括質疑をさせていただきます。
 その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 参考人におかれましては、意見を求められた事項について発言していただくとともに、発言に当たりましては私、委員長の指示に従ってくださいますようにお願いいたします。
 それでは、私のほうから総括質疑をまずさせていただきたいと思います。
 近年地下水をめぐりましては、日本でもさまざまな動きが活発になっております。私たちの生活や、どのような活動をするにしても基本になるのが水。この命の水、生活の水を求める今、世界で積極的な動きが目につきます。日本も例外ではありません。その結果、地盤沈下や塩水化等の公害、また持続的な水の確保が大きな観点になり、一定の規制を課す条例が全国で相次いで制定されています。鳥取県下も例外ではございません。
 こうした流れを受けて鳥取県では、条例制定を目指しまして、その前提として平成19年度から21年度にかけて鳥取平野と大山南西麓の地下水の貯水量や水収支の現状、地下水の流動機構の実態解明に向けた調査が鳥取大学と共同で行われてまいりました。
 檜谷先生は、この調査の研究リーダーとして活躍していただきましたこと、感謝申し上げます。
 この調査結果から得られた地下水の需給バランスなどに関する所見につきまして、まずはわかりやすく御説明をいただければと思います。
 また、その後の御自身の研究などから得られた知見がございましたら、あわせて御披瀝いただきたいと思います。
 では、よろしくお願いいたします。

●檜谷参考人
 鳥取大学の檜谷と申します。きょうは、参考人ということで、よろしくお願いします。
 まず、鳥取県との共同で実際に地下水が多く利用されている鳥取平野と、それから大山ということを対象にしまして調査を行いました。その結果を述べさせていただきますけれども、まず地下水の面で見ると雨が降った水が地上の下、地下を流れる水は全て地下水と呼ばれているので、とりあえず流域を考えてお話ししたいと思います。例えば千代川流域の一部が鳥取平野ですので、上流も考えないといけないという面があります。大山も大山の流域ですけれども、下流を考えた領域を調査しましたので、その辺の地下水の大まかな話を最初にさせていただきたいと思います。
 一応雨が降って、地下に浸透したものを地下水と呼んでいるのですけれども、土壌の中の空間に入り込む水です。それが一応鉛直方向に浸透していくのですけれども、その浸透する層があり、地表であれば、まずその下の浸透しにくい層に地下水がたまり出すわけです。まず鉛直に浸透していって、そこから流域全体が動き出すという、それが基本的には海に向かって流出していくものでございます。
 浸透しにくい層も一応浸透していくので、またその下に通りやすい層というか、ためやすい層があると地下水の層ができて、流れている層は複数あるわけです。一番現状では浸透しにくい層は岩盤と考えられていまして、それより地表の部分に地下水は流れているということでございます。
 なのでどの層に流れているかは、その地下の構造がわからないと解析できないということで、メンバーは10数名おられますけれども、ほとんどが地下構造の専門家の先生で、私は流域の専門家ですが、まずはその地下を解明していただいて、その結果に基づいて推定したところでございます。
 一般的に山の地下水というのは、すぐ岩盤が出てきますので、表土が風化した数メートルぐらいの層でございます。大体斜面崩壊が起こる層ですが、そこの層にも地下水は流れているわけです。川に入って、川というのは斜面から供給された土砂がたまっていますので、その川の底にも伏流水みたいな形で流れているわけです。それが合流しながら下流に向かって、川の水と一緒に地下水も基本的に流れているということですね。
 日本でいうと平野部は、山の土砂が堆積した層ですので、岩盤は少し深いところにあるわけです。沖積層なり洪積層など、数百万年ぐらいでたまった土砂の層でできているわけです。鳥取平野なんかは、そこに流れ込んだ水を利用されているということでございます。
 一般的な山は、そういう地下水が流れている層は斜面が浅いのですけれども、大山は火山噴火でできたもので表層は100メートル以上堆積していますので、浸透していく水がどこまでも浸透していくという特殊なところです。そこで豊富な地下水があるので、利用されているということでございます。
 先ほども言いましたように、地下の構造については専門ではないので、概略を述べさせていただきたいと思います。県が用意された資料の別冊1の2ページから3ページにわたって共同研究の内容が書いてありますが、どのメンバーが何を担当したかが記載されています。主に地盤の構造の先生が入ってございます。
 あと量だけに関してはそうですけれども、地下に入ると岩石に含まれている成分が溶け出しますので、長い年代かけて、地表に出てくる水の成分は、水質を調べるとわかるということです。なので、水質は衛生環境研究所の人に入っていただいて調査いただいています。
 量を調べるためには雨や雪が基本ですので、そういう量が不足している大山などは県にお願いして装置を設置して、量をはかっていただきました。それから川の水の量も非常に重要ですが、特に大山ははかられていないということで、水位計などを設置して県にはかっていただきました。いろいろなメンバーによって明らかにされた3年間ですけれども、御報告させていただきます。
 まず、3ページが鳥取平野ですけれども、地下構造ですが、大きく分けてそこの右の図に描いてあるような状況です。こういう層になっているのではないかということです。まず、地上に降った雨は、2層が流れにくい層でございます。なので、1層に地下水の層ができるということでございます。それが不圧、地上の圧力で動いている層でございます。その下に浸透した水や千代川の上流から運ばれて、この層に入ってきた水が3番と5番の2つに分かれていますけれども、実際には4から上は人間が区別した時代で言うと沖積層に当たります。一応最後の海面変動、氷河期を経験した層ということで、年代的には一番新しい堆積層です。ということで、滞水層が3番という名前をつけさせてもらっています。一つに数えていますけれども、実際には層が何層にもある可能性もあるので、細かく区別できればいいのですが、ボーリング資料などが少ないものですから、とりあえず1層としている。その下に5層があるのですけれども、これが沖積層です。数百万年かけて流域から出た砂がたまった層でございます。日本では比較的良好な水が堆積しているということで、利用されている層でございます。この5層は、深いところでは100メーターぐらいあって、分布が複雑でボーリングデータも少なく、余りよくわかっていない層でございます。解析では、厚さ的にはみんな同じようですけれども、5層が一番深く、多分何層もあると思うのですが、1層と考えているものでございます。
 このような量、地下の構造に基づいて一応推定、計算、解析を山の部分を除いた鳥取平野だけを対象に行ったのです。中に井戸が数カ所ございますので、例えば5番を抜いている井戸の水位の標高などの情報から解析を行っています。2つ目の丸ですが、一番上の1の層については、はかった井戸で見ると長期的に変動はないということでございます。
 3つ目の丸で5層は比較的昔利用された水ですけれども、若干海面より地下水が下がった状況、時代がございます。最近はまた回復して、海面より上のレベルに戻ってございます。その量が資料がないので正確ではないですけれども、大体日量1万ぐらいの量を抜かれているのではないかと推定しています。どれだけ抜いているのかがわからないため、まずはそういうデータをつくろうというのが条例の目的の一つでございます。一応わかっている情報で考えると1万トンぐらい抜いている、日量1万トンではないかということでございます。
 4番目に鳥取平野では地盤沈下が問題になっていまして、昔調査が行われておりました。現状では、もうおさまったということでございます。
 5番目に塩水化の原因と書いてありますけれども、5層で抜かれているある一部の層、井戸でこのくみ上げが多かった時代に若干塩分の成分が高くなっている時期がありました。その濃度は横ばいになっているのですけれども、現状、それが海水ではないかというのが懸念されまして、一応衛生環境研究所で分析していただきました。海水由来の塩分ではないということで、多分この5層の中のもっと深い層、いっぱいある層の中の深い層にそういう高塩分層があるか、あるいはこの基盤と言われているのが第3期層ですけれども、鳥取温泉は第3期層から水を抜かれているのですが、その第3期層の標高が鳥取駅周辺では高いということです。鳥取温泉も比較的塩分が高い温泉ですので、多分この3期層にある水は高塩分ではないかと。それが多分5層の下のほうにあって、上の層をくみ上げたときに上に上がってきたのではないかと考えていました。現状はそれがずっと上がっていくのではなくて、落ちついていますので、利用量としては現状で大丈夫ではないかと判断いたしました。それが鳥取の調査結果でございます。
 大山のほうについては、先ほど言いましたように地下水を流れている層が同じように、鳥取平野も深いのですけれども、100メートル以上堆積していまして、その下に岩盤層があるということでございます。
 これはもう古い時代の活動によって基盤の起伏ができていますので、それがわからないとどっちに下で流れているのか、普通の山だったら斜面の方向に地下水は流れて、下の岩盤の勾配もそっちに向いているため、大体谷のほうに向かって流れていることがわかるのですけれども、火山の堆積層であり、その噴火した当時どれぐらいたまって、それから川ができて削られ、それがどういう形でおさまったのかは細かく調査しないとわからないです。今の谷が昔の谷とは限らないので、ここに新期大山と旧期大山と2回火山活動起こっていますので、旧期で噴火した後に川ができて、侵食してどういう谷ができたかはボーリングデータが少ないのでわかっておりません。そういう形でボーリングを3カ所ぐらいやらせていただいて、この地下構造を推定しようと試みたのですが、十分な結果までは至っておりません。
 ということで大山のほうは、地上に降る水の量と、あと日野川に流れ込むまでの水の量を観測しまして、河川に流れ込む層ではなくて、もっと深い層に流れ込んでいる量を推定しました。限られたデータや精度でやっていますので、結果的には1年か2年の結果で4万4,400という数字が表に出ていますけれども、これはかなり変動がある、現状で推定した量と考えてください。プラス・マイナスどれぐらいかわかりませんけれども、一応はこれぐらいの量は、地上に入って、この日野川までは出ていないということです。それより下流で日野川に出ているか、海に出ているかわかりません。一応調査の範囲内で表面に出てきていない、湧水で出てきていない量が4万4,000ぐらいあるのではないかということでございます。

◎浜田委員長
 ありがとうございました。
 そして先生には、継続審査になっております条例を前もってお渡しいたしておりまして、もともとこれを前提にした形の調査であったということで、強く関心をお持ちいただいて御意見なども伺っているかと思います。9月定例会で上程されたこの条例をごらんいただきまして、将来にわたって鳥取県の地下水を安定的に持続可能なものにしていかなければならない。それは量も質も両方ということになるわけですけれども、この条例をごらんいただきまして、先ほどまだ未解明のところが非常に多いために、これから調査が必要であり、それが目的の一つにもなるのではないかというお話もあったりしたわけですが、先生がこの条例をどのようにお感じになられているのか、正直なところを伺わせていただきたいと思います。

●檜谷参考人
 先ほども言いましたように、地下水というのは昔は工業水などに使われるところで若干注目されましたけれども、時代的には河川水や温泉水は、水に比べて注目されていなかったので、誰が管理するなどがなかったので、データはほとんど蓄積されていない状況でございます。井戸自体、どれだけ抜いたかなどを余り管理していなかったということで、まずはどれだけ地下水があるかを推定するためには、まず現状どれだけ抜いているかがわからないと検討もできないということです。条例ではそういうのを届け出制にされているようですので、十分かとは思うのですけれども、調査しているときもなかなか解析難しかったのですが、どれだけどの層で抜いているかというデータを集めないと現状がわからないです。浅い層ほど豊富な水があると思うのですけれども、深くなると量が少なくなるのです。それに井戸を掘ると使いたい量だけ、ストレーナーなどと言うのですけれども、井戸の管に穴をあけて、そこから水を出す。しかし、その位置なども正確にわかっていませんし、質も重要ですが、鳥取平野などはいろいろな層の水がありますので、それと含めて把握されることが重要かと思います。今のところ大きな問題は発生していないのですけれども、何かトラブルが起こるとまずそういうデータがないと分析できませんので、長年のデータが必要ですので、今ごろからはかっておかれるのがいいのではないかと感じました。

◎浜田委員長
 ありがとうございました。
 それでは、委員の方々の御質問がありますの、それお受けいただけますでしょうか。
 それでは、皆さん、どうぞ。

○山口委員
 全国的に近時この地下水に対する関心が非常に強まってきておりまして、それに対して相当、32府県、それから各自治体がこの地下水に対する条例を設定しているわけでございますけれども、問題はどのあたりからこれスタートして、どういう対策を今後とらなければならないという形でこの条例を設定したかと、こういう意義と、将来に対する不安があるとか、こういう動機は共通してどういうことにあるのでしょうか。

●檜谷参考人
 水が非常に容易に取れるというのは限られた国しかないですので、日本の水が国際的に注目されているのが1つあると思います。日本では普通の水道水は1立米が10円ぐらいですし、工業水はもっと安いですけれども、ペットボトルにすると1リットル1,000円になり、結構高い水になっているのです。外国は、それぐらいの水を飲み水として使っていますので、そういう観点から注目されているのが1点あると思います。
 もう1点は、井戸を掘る技術が発達して、簡単に深いところの水が利用できるようになってきているのが2つ目の側面ではないかと思います。そういうことで保護、保全していかないといけないという県がふえているのではないかと思っています。

○山口委員
 将来枯渇するのではなかろうかというおそれもありますし、それから今の経済情勢ですけれども、工業は工業用水という専用の用水を確保しているわけですが、地下水を利用するとコストが安くなる。今、日本の企業はそういう形で動く気配もないわけではないわけですが、今のような状態なら保全はできるけれども、将来にわたって続きますと工業用水との関係をどういう形で対応するかも問題だと思います。また、単価の問題もありますし、それから工業用水は利用しやすいけれども、地下水のほうが単価が安いということで、経済、利益を追求してそういう方向に走られたら大変だと思いますが、いかがでしょうか。

●檜谷参考人
 専門的でないですし、経済などが入っているので難しいと思いますけれども、今まで特に大山なんかは利用されていなかった。枯渇と言われますけれども、海に流れていた水ですので、海には影響はあると思うので、それも考えると将来はいけないとは思うのです。陸上で利用できれば、その辺の兼ね合いが難しいですけれども、利用できれば利用されてもいいのではないかと思います。何に影響があるかという、一応石油みたいにたまっている地下水は少ないと思いますので、もしかして海に入らないような器が大山の下にあるのかもしれませんけれども、そういうところでない限りは基本的には海に流れています。深い地下水は、最終的には海に影響はあると思いますけれども、川の水もほとんど海に供給されていますので、今の時点ではそんなに影響はないのではないかと考えます。

○山口委員
 この地下水のくみ上げと地盤沈下の関係ですけれども、こういう事例はあるところはあるのでしょうか。
 それと河川に流出する量として地下に浸透する地下水ですけれども、この量は地形や下の層によって違うのでしょうけれども、どういう形なのでしょうか。
 もう1つ、私どもが一番注目している鳥取市ですけれども、地盤沈下が安定してきたということですが、今まで沈んでいた原因は何であったかと、安定したのは何で安定したかと。ただ調査した流れの結果から安定してきたと、こういう数値的なことからか。

●檜谷参考人
 地盤沈下の話と、あとは……。

○山口委員
 地下水の吸い上げと地盤沈下の問題。

●檜谷参考人
 3ページを見ていただければわかるかと思うのですけれども、その3番目のところにこの原因が書かれてございます。この2と4という層が難透水層と書いてありますけれども、鉛直方向に浸透しにくい粘土成分みたいな層なのです。それの中にも水が含まれています。昔堆積した層なので、そこでその周辺の地下水をくみ上げると圧力の関係でそこの2や4の層にある地下水を引っ張ってしまうということです。それによって空隙みたいなのが縮む。水で圧力を耐えていたのが水がなくなるために、層が薄くなり、それによって地上が下がってくると。専門家的には、圧密などと表現していますけれども、そういうことで発生しました。全国的にもです。なのでその層が締まれば終わりますし、抜く量を制限すればとまりますということで、詳しくは把握しておりませんけれども、今の状況は圧密が終了したということで鎮静化しているのではないかということでございます。
 ほかにもそういう難透水層と書いてある層がある平野部は、今まで利用されていない地下水があっても利用され出すと同じようなことが起こる可能性はあります。なので、地下水を利用されるのであれば、こういう層がどこにあるかを把握することも重要かと思います。

◎浜田委員長
 もう1件、河川に出る量と浸透する量。

●檜谷参考人
 これも先ほど言いましたけれども、山地部ではほとんど河川水が流れておりまして、その下に伏流水が合わさった形で流れております。なので比較的上流部では湧いた量が多いですけれども、伏流水のほうに斜面から来た量が行きますので、だんだん流量が伏流水の層にふえてくるということです。雨が降っても水があるというのは、河床から湧いてきて川の流れを形成しているということです。その水がずっと平野部に流れてくると今度はその水がまた横に流れていくというか、平野部に流れていくということで、川のそばは一体として流れていますけれども、千代川に供給したり雨降っているときは供給されないと。河川水の量が少ないのであんまり変化はわかりませんけれども、詳細にはかれば川の中の水は平野部の中で違ってきていると思います。そういう関係はございますので、抜き過ぎると河川の水が全部一番上の不透水層みたいなところに流れ込んで河川水に影響が出るという可能性もございます。

○山口委員
 一番心配しておりますのが都市部ですけれども、私どもが小さいときは鳥取市周辺も水田だったのです。農産物の耕作地だったわけですけれども、今はほとんどと言っていいほど道路が舗装されたり、ちょっとの洪水が降りますとオーバーフローしてしまって地下水には浸透しなかったりという状況です。それから、地下水をこれから利用する量がふえますと逆に渇水になるわけですけれども、鳥取市の平野はそういうことも含めて総合的に勘案すると、地盤沈下というのはそれほど心配することはないと判断していいのでしょうか。

●檜谷参考人
 千代川周辺で抜かれていますけれども、抜かれているところは鳥取平野の一部で、それ以外に抜かれているとすれば地盤沈下の可能性はあります。地盤の専門家ではないので、2や3、4の層がどういうふうに、昭和40年ごろに一番地盤沈下したのは利用された駅より北のほうということで、抜いた井戸の周辺です。よって、湖山方面などで多量な水を抜いた経験は多分ないと思うので、今後その辺を抜かれると可能性はあるのではないかと思います。
 あと委員が言われました河川にも影響は多分あるのです。でも影響は少ないので無視しているのが現状で、多分一番上が河川水ですので、多かれ少なかれ影響は必ずあるのです。基盤の中にも温泉水みたいな地下水は流れています。多分それにも影響は与えているのです。よって、地下水だけではなくて、河川や温泉の水にも影響は与えますので、その辺もあわせたモニタリングを考えないといけないと思います。

◎浜田委員長
 ほかの方、いかがでしょうか。

○市谷委員
 市谷と申します。今の話に関連して、鳥取平野のことですけれども、最初のお話では西と違って鳥取の場合は、基本的には山の水は川に流れていると。だから鳥取平野、平野部については地下水だということで、これまでは平野部の調査だったというお話ですけれども、先ほどの説明を聞きますと要するに河川水、表流水、それから地下水とセットで見ていかないと、お互いに水が行き来している関係にあるということでよろしいのだと思うのです。そうしますと鳥取市は飲み水を河川、表流、伏流水から取っておりますし、それから今、殿ダムなんかもできて、それとの関係で飲み水も工業用水も表流水から取っていることになっています。そうしますと、地下水との影響もあることになると量などについてもきちんと見ていく必要があるということですね。

●檜谷参考人
 そうです。

○市谷委員
 それと、先ほど鳥取市の地盤沈下の原因について明確にお話がなかったのですけれども、別途以前常任委員会でいただいた資料の中では、これは以前の地盤沈下が鎮静化した要因として近隣での地下水採取の中止、平成12年と考えていると記述があるのですけれども、それの具体的な中身はわかりますか。

●檜谷参考人
 北側で抜かれていた上水の井戸をやめられたということではないかと思います。

○市谷委員
 わかりました。地下水と地盤沈下の関係では、そういう関係にやっぱりあるという、要するにくみ上げれば地盤沈下する関係に鳥取平野の場合はあるということですか。

●檜谷参考人
 そうですね。

○市谷委員
 今鎮静化はしておりますけれども、そういう関係にあるということですね。
 次に、それからやはり全体的に水のくみ取り量といいますか、取っている量を見ていくことが必要だというお話だったのですけれども、今つくられようとしている県の条例の中では新規の参入者しか届け出の対象にしていないのです。そうなりますと、要は全体像をまず把握しなければ、今後、どういう影響が出て、どういう規制をという話にならないのですが、新規の届け出者だけしか対象にしないことになっていると、これは全体量がつかめないことになってしまうのではないかと心配もしていますし、今の話からいってもそうかなと思うのです。その点がどうかということと、それからその対象が水をくみ上げるときの管の太さ、県の条例は14平方センチを超えたものしか対象にしていないのですけれども、大山町や日南町は6平方センチという管の大きさにしております。これは、工業用水か何かの関係でそういう基準があるからということで6平方センチにしているのですけれども、全体量をつかむことになるとこの管の大きさについても、もっと広く拾えるものでないといけないのではないかと、細いものも含めてと思うのですけれども、その辺はどういうふうに考えられるかを教えていただきたいと思います。

●檜谷参考人
 新規の例で書いてありますけれども、新規だけではなくて既存のものも一応報告することではなかったかと思うのですが。

○市谷委員
 県条例で届け出するのは、これから始めるところだけです。(「違う」と呼ぶ者あり)

●檜谷参考人
 既存のも含めてと伺っておりましたけれども。

◎浜田委員長
 私も既存のものについてもデータは出すと理解しているのですけれども、このところがはっきりしないと、先生としては全てのデータが必要であるということでございますか。

●檜谷参考人
 そうですね。

◎浜田委員長
 そうしないと地下のこともわからないし、今後に向けてもわからないことになっております。そこの辺はこちらのほうで調べてみたいと思います。
 では、管の太さ。

●檜谷参考人
 管の太さの例として水質汚濁の話であれば、多分問題が起こったときに最初は個別規制みたいな形で大型排水者を規制するところから始まって、最終的には総量規制みたいな、流域でどれぐらい排出できるかみたいな量を決めて規制します。ということは、同じ地下水もまずは大型の利用者から規制をかけて、それから鳥取平野は鳥取平野全体の内容がわかってくればその量として規制していくということで、普通の民家の井戸を含めての規制に将来はなっていくのではないかと思います。まずは、大型のくみ上げ者という意味だと思います。

○市谷委員
 私が言った今の管の太さなり届け出の事業者ですけれども、要はこの条例の対象になっているのがそういう一定の管の太さで水をくみ上げるところ……。

●檜谷参考人
 トータルの管の太さだと思いますけれども。

○市谷委員
 トータルでね。そうですそうです。

●檜谷参考人
 だから太さが太いほど多く揚水している管であるということで、大型揚水されている業者が対象ということですね。

○市谷委員
 そうですね。

●檜谷参考人
 多分現状で調査されているのではないかと思うのですけれども、どれぐらいの管で抜かれているかということですか。

◎浜田委員長
 先ほどのお話ですけれども、委員会資料の2ということになりますが、8ページのところに既存事業者の取り扱いがございます。表になっておりますが、これは60日以内に届け出となっておりますので、既存事業者も対象になっていることを御理解いただきたいと思います。後ほどこちらのほうで詰めていきたいと思います。

○森委員
 私は米子市の出身でして、今回の条例のもともとは、ペットボトルの水事業者が鳥取県に入ってきて、急にこの10年間で水の採取量がふえたということが契機だったと思うのです。そこのところが一番の問題点で、今回の先生の調査で年間4,400万立米の供給があるのだというお話でございます。これは毎年4,400万立米が入って海に出ているというものでしょうか。

●檜谷参考人
 日野川に入る前の面積に降った水の量が日野川までに地上に出ない量です。地下から地上に出て川の流れができていますので、それの量を引いたもの、あと蒸発散で地上に返るものもありますけれども、そういう量として推定しています。

○森委員
 というと4,400万立米が蒸散量を引いて、それで河川の表面流を抜いて、それが入っているということですが、いわゆる流動として4,400万立米が上から降ってきて、地下を通ってどこかに行っているということですか。

●檜谷参考人
 そうです。

○森委員
 流動システムとして、こういうふうにあるのでないかという推計ですね。
 そこで流れるスピードなり、大山でどんどんどんどん地下水を抜いていますので、一番地下水をくみ上げているのは米子市の水道局です。その次には、王子製紙なり、今度新しくできるニッポン高度紙工業などが水をがんがん抜こうとしているのですけれども、そういうのが一番影響wp与えるとは思うのですが、大山の一番上で抜いてしまうことの影響が例えば下流部にいつごろ出てくるかは、わかりますでしょうか。

●檜谷参考人
 その辺はわかっておりません。一応、サントリーの工場などまでに流れてくる水については、公開していいかどうかわかりませんけれども、サントリーさんが何年ぐらいかははかられていますけれども、それ以外の情報は実際に解析しておりませんので、現状ではわかりません。
 4ページに模式図を描いてございますけれども、これはある断面を切ったものでして、一番深い層であるナンバー(5)からも日野川に全て出ている感じで書いてありますけれども、これがどこに出ているかは不明です。一部高いところがあるので、そういうところの模式図を描いていますけれども、日野川の水がかなり流れていますので、箕蚊屋平野はそこの堆積物でできた平野です。千代川の鳥取平野と一緒でございますので、供給源は主には上の層ですあり日野川です。それは昔調査しましたけれども、毎秒1トンぐらい、箕蚊屋平野の最上流から入っているということです。流量が少ないときにも川の水をはかった経験がありますけれども、川の水が1トンぐらいなくなっている、供給されているということです。そういう水を昔の水道水の源泉では利用されたのではないかと思いますけれども。

○森委員
 昔は割と浅い、30メートルぐらいの井戸を使っていたのですけれども、今は80メートルぐらいの深井戸を使ってきているのですけれども、その80メートルぐらいの深井戸でも日野川のいわゆる扇状地の一番端から入っていった水が、80メートルぐらいの深いところにも行くということですか。(発言する者あり)そうですか。
 それで4,400万立米の大きな水のタンクがあるということではなくて、いろいろな流れといいますか、いろいろな谷がある。その谷を通っていく水脈がいろいろあって、その水脈が最終的には低いところに流れていって海に流れているということだと思うのです。それで水脈があるところを探して井戸を掘って水を現在抜いて使っているわけです。そうすると、今の話で上流部にある大山の奥大山などでたくさん水を抜いているわけですけれども、そこのところの影響が下流部のところでいつ影響が出るのかがわからないと。一つのお盆でないがために、大きい水脈なり小さい水脈などがあると思うのですが、そういう中で例えば上流部で井戸を掘ってくんでみたけれども、1週間は何の影響もなかったものの、下流部の一番水をたくさん使っている米子市周辺では2年後に影響が出るのか、10年後に影響が出るのかどうかはわからないと。

●檜谷参考人
 そうです。わかりません。

○砂場副委員長
 今言われたことを少し確認したいのですけれども、4ページに断面図は描いてあるのですが、大山の南西山麓は、ほぼこういう地層が平均的に分布しているのですか。それともそうではなくて、ストリームといいますか、地下水脈という形でできているのかは現実にはわかっていないので、それの調査は大変なものでしょうか。水脈調査というのは、空から見てわかるものなのか、それとも実際にメッシュを切ってボーリングしなければわからないものなのか、どうなのでしょう。

●檜谷参考人
 水脈というのは、わかりません。一応地層構造については、今のこのメンバーの中で推定していただいて、ある断面ではこういう模式図のような形になっているのではないかということでございます。実際にボーリングを密に、例えば1キロ平方ぐらいに掘っていけば最終的にはわかると思いますけれども、その中を水が入っていっているかどうかは、わかりません。多分、構造はわかりますが、上にちょっとでも堰があると下流には流れませんので、その場の地下構造だけではわからないということです。

○砂場副委員長
 そうすると、これから地下水のくみ上げについて検討しなければいけないのですが、水の流れていうのは複雑なわけですね。例えばここでくみ上げますとした場合、このくみ上げたことの影響を調べるためには、先生の知見では、どれくらいの範囲でどれくらいのモニタリングをすれば把握できるということがわかるのでしょうか。もちろん鳥取県は経済状況が弱いですから、持続可能な利用であればいいのですけれども、環境に影響を与えてはいけないですし、下流で現に井戸を使っている人たちの生活が困ったらいけないものですから、ここで掘った、取水したことに影響がないとわかるためには、どれくらいの範囲でどれくらいのモニタリングをすればいいか、過去の経験なり科学的な分析などでわかるのでしょうか。

●檜谷参考人
 なかなか難しい問題です。場所によって違うと思います。参考にしていただきたいのは、江府町にあるサントリーが今やられていますけれども、年に1回か2回データを出していただいて監視する委員会ができています。それには周辺の井戸や河川の水位なり、それから水質なども含めてデータを出していただいて、町がはかっているデータもございますし、サントリーが提出しているデータもございますけれども、それらを総合して影響がないかどうかを長期的に監視しているということです。それらを参考にされればいいのではないかと思います。

○砂場副委員長
 では、条例でモニタリングを位置づけようとすると、適正なモニタリングがどれぐらいかはやはりある程度科学的知見がないと、適当でというわけにはいかないのですけれども、そういうことを出していただけるのはなかなか難しいわけですね。例えばこの地域のこれくらいの揚水量であれば何キロ範囲内で何カ所、下流域に何カ所という設定、科学的に理由がついて事業者に納得できる科学的知見が出せれば納得されると思うのですけれども、とりあえず5カ所掘って、10カ所掘ってというのであれば納得されないと思います。先生たちのほうで江府町なども参考にしながら、そういう指針みたいなものをつくるのは、現時点では難しいですか。

●檜谷参考人
 工場、公共構造物を建てるときのアセスみたいな形の方法をとればできるかもわかりませんけれども、影響があるかどうかなりモニタリングする方法も事前に業者が考えることを公表して、それを外部委員がチェックするみたいな形でやれば、ある程度はできるとは思いますが、そういう形にしないままやろうとすると場所によって地下水は違いますので、どの辺の層までの地下水を対象にするのかにもよると思います。

○野田委員
 今のに関連するわけですけれども、私どもは地下水を将来にわたって持続的に利用できる環境の保全という中で、この条例づくりに取り組もうとしているわけです。その中できょうも傍聴に来ておられる福間議員先生は、2007年には3万トンだった採取量がペットボトルを採取し出したら4年間で10倍になったと。さらに今後もこれがまた30万トンが100倍になり、3,000万トンにでもなる可能性も十分あるではなかろうか。さらには現段階でも上水道や簡易水道、水道水、産業水を合わせただけでも恐らく3,000トンか4,000トンぐらいは使っているのではなかろうか。そうすると、本当に現段階で大山の水を守れるかどうかという心配があって質問されたと聞いているものですから、先ほども砂場委員がモニタリングでこういうことができないものかとお話をなさった。しかし、なかなかできない。さらには先生が最初からお話しなさったように、現状でどれぐらいの水がためてあるかどうかがわからないのであれば、条例づくりもなかなか難しいのではないかな、という思いで聞かせていただきました。
 ここの中にある年間降水量2,300ミリ、さらには深部地下水層4,400万立方というものがあるにもかかわらず、何でこれがわからないのかなという部分が理解できないし、今後も条例づくりに大切な部分ですから、わかる範囲で答弁をいただきたいと思います。

●檜谷参考人
 大山ということでよろしいでしょうか。

◎浜田委員長
 大山に限定してよろしいですね。

●檜谷参考人
 こういうものを推定するためには、まずは井戸規制をしないといけないと思うのですけれども、現在表流水として利用されている量もまだわかっていないのです。特に、大山は苦労して水を使われていますので、農業取水をすごい流域を挟んだりして使われています。どこの水が最終的にどこに配水されているかもわからない現状ですので、まずそういうことが明確にわかった上でないと最終的に精度がいい推計はできないと思います。多分、一番影響が出るのは大山の表流水ですが、ここでは5番目の層ぐらいまでは日野川の合流点に近いところで湧いていると推定していますので、その正確な量を推定するためにはどれぐらいの量を利用されて、どこでどういうふうに配水されているかを報告書にも書かせていただきましたけれども、その辺全部の水を上流で取って、下流で田んぼなどに入れて配水されていますので、細かい流量チェックをまずしないと何が出たときに影響したというのを判断するのができないのが現状です。それが先だと思います。一応量はこれぐらいはあると推定していますけれども、それがどこに流れているかというよりもまず現状で使っている水の精度を上げないといけないと思います。

○横山委員
 空から降ってくる水は年間降水量で2,300ミリと供給はわかりますが、需要が超えると渇水になるでしょ。簡単に言うと上から落ちてきた水よりたくさん使うと枯れてしまうわけです。ということから考えると、素人なのでいいぐあいにわからないですけれども、小学生や中学生でもわかる問題かなと思うのです。簡単にわかるのに、先生の研究ではここら辺までは大丈夫ですよという目安はわからないですか。

●檜谷参考人
 目安の量として何を推定、ここの4,400万のことですか。

○横山委員
 だから、地下水層へ供給されている4万4,000立方メートルですか。(「4,400」と呼ぶ者あり)4,400万を超えれば枯れるわけです。

●檜谷参考人
 枯れるというか、全て取れるかどうかの問題ですけれども。

○横山委員
 そこら辺でいうと足し算と引き算の問題ですから、引き算でいうとこれを超えると完全に枯渇するという。そうすると枯渇する量は大体推定できてしまうのではないですか。

●檜谷参考人
 これだけ取ればほとんどなくなるのですけれども、河川の流量もなくなると思います。

○横山委員
 だから川はみんな枯れてしまう。

●檜谷参考人
 かもしれません。だから、抜くところによっては下流で出ている地下水もあるわけです。その層を抜いてしまうと下流で出ている水がなくなりますので、川が枯れることになります。地上から降っている量の推定は可能ですけれども、雨量計がついているのはばらばらで、かなり離れています。平野部はいいですけれども、特に大山周辺は雪が降りますので、雪の量を推定できているといわれれば、できていないのが現状だと思います。それが地下に入るためには解けないといけないですが、その一番上の表層が問題です。もしコンクリートだったら、みんな川に流れてしまうわけです。それが解けたときにどれだけ浸透するかが問題なのです。地下に入ってくれないと川に流れていくのです。なので、山林などを保全して地下に浸透しやすい地層を水質もよくて浸透させていくことが非常に大事だと思うのです、1つ目としては。保全という意味ですが、なかなか難しいです。雨が簡単と言いますけれども、はかっている箇所は面的にははかっていないので。

○市谷委員
 先ほどの届け出の件で失礼いたしました。届け出は既存事業者も新規の方もということですけれども、その新規と今やっている方との違いは事前影響調査結果をつけて届け出するかどうかの違いがありますが、先ほどの事前影響調査の結果というものが非常に難しいというお話です。既にやっているサントリーの話があって、そういうものも出していただいたほうがいいと思っているのですが、その影響調査の結果をつけて出すことの意味はありますよね。何か既にしているところは出していただいたほうがいいなと思うのですけれども、教えていただけませんか。

●檜谷参考人
 江府町でやられている例でいくと周辺で影響を受けるであろう項目はいろいろあります。河川の水なり井戸水などをはかっていなかったですよね。まずそこから設置して、維持管理しながらデータをとっていくことを江府町がやられているのですけれども、そういうものもやらないといけないということです。それから抜き出すということですので、事前状況を把握しないと影響が出たかどうか判断できませんので、数年間はそれをはかってはかり出しということになるのです。今ははかり出してからの状況を監視しているという状況です。なのでなかなか財政的にも難しい。細かい川まで川の水もそういう精度ではかっていませんので、それをどなたが今後担当していくのかなり、雨のデータも必要ですが、そういう地域だと雪が降るところではどういうふうにするかなどをあわせて考えていかないと、運用面でも難しい問題はまだあると思います。

◎浜田委員長
 時間が迫ってきておりますので、意識してください。

○森委員
 先ほどから江府町の話をしているのですけれども、江府町のサントリーや伯耆町のコカ・コーラにしてもかなり深井戸で掘っていると思うのです。そうすると深井戸で揚げた水の影響が出るのはまず周りの表流水であろうというお話ですけれども、いわゆる80メートルなり100メートルなどといった江府町のところでさえ、深い井戸で掘った影響が表流水に出てくるのはどれぐらい下を調べたらいいということになるのですか。影響が出てくるのは、どこの表流水になるのでしょうか。

●檜谷参考人
 それはモニタリング委員会で多くの先生が考えられて、ここに設置したほうがいいのではないかを検討しています。実際には、下蚊屋のところの第1で抜かれていますので、100メーターといっても沢は50メーターぐらい下に川はありますので、抜いている地点と比べるとそんなには標高は差がないし、河川水にも影響が出るのではないかということで観測しています。一般的な山だと多分影響は出ないと判断して河川水は調査しないと思うのですけれども、どこの地下水かによると思います。

○山口委員
 問題は、こういう条例をつくろうとする現状があって、将来本当に良質な水が保たれるだろうかと心配しているわけです。近年の降雨、降雪量がどんどん減ってきているではないか、あるいは地球温暖化がどんどん進んでいるではないかということで、良質な水を守らなければいけないと。こういう視点で条例や規制をつくろうとしているわけですけれども、地下水そのものが一般家庭などに利用されたのは私どもの時代だと思いますけれども、これの商品化が進んでいると。

◎浜田委員長
 商品ですね。お金にかえる。

○山口委員
 これが一つ大きな問題であって、そういうものがどんどんやられると全体の環境を守れないではなかろうかと、こういう視点がこの条例の趣旨ではなかろうかと思っているのですが、違うでしょうか。将来に向けて安定して安全で水を提供しなければならないと、後世にわたってのそういう持続可能な環境を守らなければいけないというのが趣旨だと思っておりますので、全体を見ながら本当に対応する必要があると思いますが。

●檜谷参考人
 難しい問題ですけれども、いろいろな面があり、さっきも言いましたように地下水を保全するためには地上からの浸透が重要ですので、浸透していくところは全てですので、さっき都市部の都市化の影響も全て同じぐらいの面積割で地下に入っていくことも考えながら、鳥取県の地下水を保全していただきたいと思います。

○砂場副委員長
 鳥取県の条例の場合、採取量をしっかり監視していこうというところで、そこは先生の御意見と一緒だとわかりました。もう1つは、問題が起こったときに制限区域を決めて制限をかけていこうということが防止策ですけれども、先生の話でいくとここで問題が生じたとしてもその原因の井戸が、揚水がどこであるかは非常に特定しにくいわけですか。大体わかるものなのですか。

●檜谷参考人
 難しい問題です。周囲ではかっていれば多分わかると思います。問題は、10年間ぐらい継続して観測した鳥取県の井戸のデータがないことです。国土交通省ではかっている井戸はありますけれども、それ以外の場所ではないのが一番問題です。

○砂場副委員長
 そうすると大口の取水をする人間については、周辺で何カ所かモニタリングさせて、そういうデータを蓄積することが大事になってくるわけですか。それとも余り意味はない。

●檜谷参考人
 そうです。モニタリングを誰がするかが問題ですけれども、流域内にそういう井戸を持っておくことが大事です。

◎浜田委員長
 私も関連してですが、モニタリングの場所とチェックの仕方をどの範囲でどれだけやっておけばこれからデータが確実にとられていって、そして先の予測ができるのか。その前に環境影響調査が当然必要になってきますが、こうした課題が見えて、それから涵養の問題です。山の管理の問題に余り多くは触れられていない状態になっています。ここの問題についてはどのようにお考えになりますか。

●檜谷参考人
 現状ないので、とりあえずまずはどこかに設置することから始めて、そのデータが出始めて皆さんでいろいろと考えられて、だんだん改良していく方向がいいのではないかと。最初に完全なものはできないと思うので、鳥取県の皆さんが考えられて、徐々に改善されていくのが一番いいのではないかと思います。

◎浜田委員長
 わかりました。
 時間が過ぎております。どうしてもという方がいれば。

○横山委員
 例えば山がはげ頭みたいになると雨水がばっと流れてしまう。そうすると保水能力を向上させる施策と連動しないと、地下水がふえたり減ったりするので、いまだに保水能力が低いと思うのです。そういうことと連動して持続的な水脈につなげていただきたいなと思うのですが、研究しておられるとそういうことに突き当たってくるのではないかと思うですけれども、それについてはどう考えられますか。

●檜谷参考人
 もう委員さんの言われるとおりですね。(発言する者あり)

○横山委員
 そうですか。(発言する者あり)

●檜谷参考人
 鳥取県では別にもうやられていますよね。それを推進していただきたいと思います。

◎浜田委員長
 時間が5分ばかり過ぎております。まだまだこの問題は判断するに当たってはもっと深く勉強していかなければいけないですし、それからチェックポイントも随分示していただけたと思います。
 今傍聴されています、特に地下水の質問などしてこられた福間議員がおられまして、一言おっしゃってください。

○福間議員
 済みません。結局、私はこう思うのです。制限問題や、それから届け出は将来的には許可制が一番いいのでしょうね。いずれにしても、今時点で4ページにある共同研究をされた先生がお書きになっています課題としてあるものが理想であり、基本的に独立して把握できるシステムが一番理想的ですが、なかなかそこまで到達できないので、当面地下水利用協議会を設置して、その中でそれぞれ届け出させる条例の組み立てになっていますよね。先ほど先生がおっしゃったように、今の時点ではこの部分からとりあえず組み立てて、それから逐次改善を図っていくと。知見が何にもないわけですから、降る雨の量にしても10億トンぐらい降るかもしれないし、推測しかないし、どういう流れになっていくのかも、先生方がされたこの大山南西麓の共同研究が初めてです。そういう意味ではきちんとしたものがないから、とりあえずはできるものからスタートするという考え方でいくしかないということですか。

●檜谷参考人
 そうだと思います。

○福間議員
 利用協議会の届け出にちょっと腹立たしさがあるのです。といいますのも、先に出られたサントリーやそのほかにはぜひ雇用対策で出てきてほしいといって出てきてもらっておいて、その後で、いやいや、だめだという条例をつくろうとしているわけですから、後出しじゃんけんというところもあるのです。ただ、それが届け出制でも利用協議会の中で出してもらっていろいろな情報を蓄積しながら、次のステップに進むという今の方法しかないのかなと思ったりするのですが、そんなのでいいでしょうか。

●檜谷参考人
 そのとおりでございます。

◎浜田委員長
 わかりました。
 引き続き勉強を続けていかなければなりませんので、今後も檜谷先生にはお力をいただくことになろうかと思いますが、きょうは時間をオーバーしてまでいろいろお話いただきまして、感謝申し上げます。本当にありがとうございました。委員を代表しましてお礼を申し上げます。
 それでは、35分まで休憩とさせていただきます。

                                午前10時26分 休憩
                                午前10時35分 再開

◎浜田委員長
 再開させていただきます。
 引き続き、とっとりの豊かで良質な地下水の持続的な利用に関する条例(案)についてを議題といたします。
 ここに創価大学法学部教授でいらっしゃいます宮崎淳先生に参考人としてお越しいただきました。一言御挨拶を申し上げます。
 きのうからこの鳥取県にお入りいただきまして、先ほどは檜谷先生のお話にも宮崎先生しっかり耳を傾けていただきまして、随分長時間にわたっておつき合いいただき、本当にありがとうございます。
 きょうは、民法上から派生して水の法律という問題で宮崎先生に御指導いただけること、とても感謝申し上げたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。
 それでは、早速ですが、議事の順序等について申し上げたいと思います。
 最初に、私のほうから委員会を代表いたしまして総括質疑をさせていただきます。
 その後、各委員の質疑にお答えください。
 参考人におかれましては、意見を求められた事項について発言していただくとともに、発言に当たりましては私、委員長の指示に従ってくださいますように御協力お願いいたします。
 それでは、私のほうから総括質疑をさせていただきます。
 先ほども申し上げましたけれども、宮崎先生は国内外の水、特に地下水に関する動きを法律的な観点から広い視野で研究してこられました。
 一方、熊本を初め他県、また市町村の条例制定の動きについてもかかわりを持ってきておられます。
 水法の専門家としてお話を伺わせていただきたいと思いますが、鳥取県議会の中でも、水の質問がございました。特に法律論も出てきたわけです。公水、私水の問題に見られるように、この地下水に関してどのような受けとめ方でどういう立場に立ってこの条例に向き合っていくのかが大きな論点でございました。今の民法の中では、所有権の規制をどこまで探っていって、そして規制がかけられるのかの難しい判断に迫られる状況でもあるわけです。
 宮崎先生には、水資源の利用と保全が第一の観点でございますので、法理論などについてこれまでの判例や学説も含めまして、さまざまな自治体とのかかわり合いの中でごらんいただいた上で、この水条例に対してのお考えを御披瀝いただければと思います。まずはそこの総論のところからお話を伺わせてください。

●宮崎参考人
 創価大学の宮崎でございます。私は、民法を研究領域としております。その中でも土地利用と水利用、特に水源地や地下水保護の法理論を研究しております。本日は、この法理論の視点から当該条例についての意見を述べさせていただきたいと存じます。
 法律は、言葉の学問でして、一つ一つの文言にこだわったり、できるだけ誤った解釈がなされないように配慮しておりますもので、委員の方々の御理解の一助とするためにレジュメを作成させていただきましたので、資料5に沿いながらお話をさせていただければと存じます。
 タイトルは、先ほどの総括質問を受けまして、「地下水保全条例に関する法理論上の問題点」と題しまして、順にお話を進めさせていただければと存じます。
 皆様御存じのように、地下水一般について採取規制を定めた法律はございません。ただ、特定地域内において特定用途に供される地下水の採取制限を定めたものは2つございます。1つは、昭和31年に制定されました工業用水法であります。もう1つは、昭和37年に制定されたビル用水法と通称呼ばれております建築物用の地下水の採取の規制に関する法律の2つがあるにすぎません。
 このような事情から、地方公共団体が地下水を保全する必要があると判断した場合には、みずからが地下水採取を制限する条例を制定することによって、地下水を公的管理のもとに置いているところも多数見受けられるところであります。
 この鳥取県においても当該判例、条例においてそのようにしていこうという第一歩を踏み出されたものと理解しております。
 しかしながら、実はこの条例レベルでの地下水の採取規制を法的に支える理論はまだ確立しておりません。法学者の間においても、まだ議論の途上だと理解していただければと存じます。
 そこで、私は、今回条例の制定によって土地所有権を制限できるのか。まさしく、今回上程されましたこの条例の正当性について、まず取り上げたいと存じます。
 次に、地下水の法的性質、土地所有者が本当に自由に採取できるのかどうかという問題を扱いたいと思います。
 そこからいかに地下水の採取規制の理論を導き出していくかというこの大きな3つの問題に焦点を絞りましてお話させていただきたいと思います。
 まず、条例制定の正当性の問題ですけれども、これは民法206条、207条に関連する問題でございます。民法206条は、「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分する権利を有する。」と定めております。
 また、民法207条も「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と規定されております。
 この両条文を見れば明らかなように、「法令の制限内において」という文言が重要になってくるわけであります。この法令の制限内、この法令には条例が含まれるのかどうかでございます。
 この法令とは、法律及び法律の委任を受けた命令、この命令は政令や省令のような国の行政機関が制定する法規範であると言われるのが一般的です。支配的な見解、通説と言っても構いませんけれども、この法令は法律及び法律の委任を受けた命令のみを指すと考えるのが一般的な考え方でございます。
 例えば先ほど申しました工業用水法やビル用水法、そして温泉法や鉱業法がこれに当たります。温泉法第3条に、温泉を掘削するには知事の許可が必要と定めておりますし、鉱業法も、国が鉱物を掘採し、取得する権利を付与する権能を国が有するのだ。したがって、土地所有権の効力は鉱物には及ばないということを2条で明定しております。このような法律があった、また法律の委任を受けた命令のみがこの法令に当たるのだということが、今の法学者の一般的な見解であります。
 というと、条例では土地所有権の制限ができないのではないかという議論になるわけでございます。しかしながら、一般的にはこのように解釈されていても地下水の場合には、立法上な特殊な事情を考慮する必要があると思います。それはかつて昭和30年代後半から40年代にかけて、この一般的な地下水の採取を規制しようという法律が各省庁の間で具体的に活発化いたしました。しかしながら、形成過程において頓挫したいきさつがございます。
 また、現在も本年の1月24日に地下水の利用の規制に関する緊急措置法案が衆議院の国土交通委員会に付託され、現在審査中となっております。きのう国会が招集されましたので、またこの動きがある可能性がございます。この法案は、地下水の利用に関する規制が総合的に講ぜられるまでの間の緊急措置として、特定の地域内における地下水利用にかかる必要な規制について定めることを趣旨としております。したがって、立法府も既に地下水の利用規制の必要性を認識していると解されます。
 このような事情のもとにおいては、一旦地盤沈下のような地下水障害が生じた場合には、これを原状に復することが極めて困難でありますので、国会の制定法を前倒しして地方公共団体が条例によって地下水採取の規制をすることは許されると考えることも可能であると思うのです。
 また、法令を法律、法律の委任を受けた命令及び条例と解することによって、真正面から条例による所有権の制限を認める解釈ができないわけでもありません。しかしながら、この考え方は少数説でございます。
 すなわち法の欠缺、法の空白について、所有権の制限を絶対的に認めない趣旨と解するのではなく、法律によって土地所有権を全国一律に制限することは適切ではない。したがって、当該地域の判断、地方公共団体の判断に委ねると解釈するわけでございます。
 つまり地域の事情によっては、条例を制定して制限してもよいと考えるのでございます。
 地下水の事情は、地域によってさまざまに異なることは申すまでもございません。このような地下水をめぐる特殊な事情を念頭に置くならば、このように解釈することも一定の合理性があると考えられなくもございません。
 したがって、このような2つの解釈のどちらによったとしても地方公共団体が条例によって地下水の採取規制を定めることは、法に抵触するものではないと解されると思います。
 次に、公共の福祉の文言について言及させていただきます。
 憲法第29条第2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けまして、昭和22年に改正されました民法第1条第1項は「私権は、公共の福祉に適合しなければならない。」と定めております。
 そこで地下水利用の観点から見た土地所有権における公共の福祉の解釈とはいかなるものかについて考えたいと思います。
 それは健全な水循環を確保することであると解されます。なぜなら健全な水循環を確保しなければ持続的な地下水利用ができなくなるとともに、地下水障害の発生により土地本来の機能が発揮できなくなるからでございます。土地本来の機能というのは、地盤支持機能と考えていただければよくわかると思います。
 このことを法規範としてあらわせば、土地所有権の行使として健全な水循環を損なうような地下水利用は認められない。もう一歩換言するならば、土地所有権の行使として健全な水循環を損なわないように地下水を利用しなければならないというルール化ができると思います。
 そしてその健全な水循環を確保するという公共の福祉を具体化したものが、今、鳥取県議会で審議していただいております地下水保全条例であると考えております。
 次に、地下水は、土地所有者が自由に採取することができるのかという問題について言及したいと思います。本当に土地所有者が自由に採取することができるのでしょうか、それとも河川水と同様に扱われるべきものでしょうか。
 地下水の法的性質について、まず裁判所の見解を整理したいと思います。
 裁判所の考え方は、5つの時期に区分されると考えております。
 まず、古い明治・大正期でございます。民法典ができ、近代法制をこの国に定着させようと裁判所も必死になった時期でございます。
 この時期の裁判所は、地下水は土地所有権に付従しているがゆえに、土地所有者は自己の土地所有権の行使として自由に地下水を利用できると考えておりました。
 大審院判決明治29年3月27日でございます。「地下ニ浸潤セル水ノ使用権ハ元来其土地所有権ニ附従シテ存スルモノナレバ其土地所有権者ハ自己ノ所有権行使上自由ニ其水ヲ利用スルヲ得ルハ蓋シ当然ノ条理ナリトス」と判示したわけでございます。
 次に、裁判所が地下水の利用を制限し始めるのは、昭和に入ってからでございます。昭和の戦前ですけれども、権利の乱用の法理を適用することになりました。
 大審院判決昭和7年8月10日の判例でございます。「地下に泉脈が通過する土地の所有者は、温泉を利用する権利を有するが、それは他人の利用権を侵害しない程度に限られるべきである」と述べました。ここでは、当時地下水も温泉も同じ地下に存する水という部分で地下水と温泉を同じように考えたことをまずここで付言しておきたいと思います。
 この判例は、他人の地下水利用権を侵害する土地所有権の行使は、権利乱用として認められないと解したわけでございます。権利乱用の法理によって、土地所有権を制限したというわけでございます。
 昭和30年代に入りますと、従前とは異なった対応の地下水障害が出現いたします。それは地下水の採取に伴う地盤沈下及び地下水の水質汚濁の問題でございます。昭和、戦後に入りまして高度経済成長期に出た判決でございます。
 地下水汚染に関する裁判例では地下水の特質を考慮した判決があらわれ、今後の諸判例に新しい視座を提供することになりました。
 これは松山地方裁判所宇和島支部判決昭和41年6月22日でございます。本事案は、地下水を上水道の水源として利用していたケースであります。本判決は、次のように論拠いたしました。「一般に土地所有者はその所有地内に掘さくした井戸から地下水を採取しこれを利用する権限があるが、地下水は一定の土地に固定的に専属するものではなく地下水脈を通じて流動するものであり、その量も無限ではないから、このような特質上、水脈を同じくする地下水をそれぞれ自己の所有地より採取し利用する者は、いわばそれらの者の共同の資源たる地下水をそれぞれ独立に利用している関係にあるといえ、したがつて、土地所有者に認められる地下水利用権限も右の関係に由来する合理的制約を受けるものといわねばならない。」と判示いたしました。つまり本判決は、同一水脈の地下水を自己の所有地から採取する者たちの共同資源と捉え、土地所有者に認められる地下水利用権限の合理的制約は、共同資源たる地下水を土地所有者それぞれが独立に利用している関係に由来すると判断したわけであります。地下水を水脈の同一性という見地から考察し、地下水の利用制限に関する理論を提示したと言えると思います。
 ここまでは以前より地下水の法的性質について判示した判例として一般的に理解されてきたものでありますけれども、私は、平成期に入ってさらに新しい2つの段階が見てとれると考えております。
 1つは、住民の人格権を意識した点でございます。
 平成期に入っても原則的には昭和50年代からの傾向は続きますが、産業廃棄物または一般廃棄物の最終処分場の建設による地下水汚濁、またはそれによる健康被害の蓋然性をめぐる裁判例が多数見受けられるのが特徴でございます。
 中でも仙台地方裁判所決定平成4年2月28日が注目を浴びました。すなわち本決定の意義は、「人格権としての身体権の一環として「適切な質と量の飲料水を確保する権利」および人格権の一種としての平穏生活権の一環として「適切な質量の生活用水を確保する権利」を認め、これらの権利が侵害される高度の蓋然性がある場合には、侵害行為の差止めを請求することができる」と判断したところにあります。つまり地下水利用を人格権の視点から位置づけた点に意義があるわけでございます。
 この見解は、後に地下水利用に関する法益を浄水享受権と呼び、人格権の内容をより明確にあらわすようになっております。
 ただ、この人格権につきましては、地下水利用権を人格権と言いかえたわけでありますので、地下水採取を制限するというよりは地下水利用権を重視して、それを守るという点においては今までの視点とは若干違うという点を一言申し添えたいと思います。
 最近、平成10年以降においては、水循環を念頭に入れた裁判が出ております。水道水源保護条例に係る判決が下され、水循環を前提とした適正な水資源の利用について言及した裁判例も出ているところであります。
 名古屋高等裁判所判決平成12年2月29日は、「適正な水資源の利用は、流域全体の水収支がマイナスにならないように配慮すべきであり、そのためにはそれぞれの利用者がその敷地面積に応じた涵養量を遵守しなければならず、敷地面積単位の水収支の検討するのも相当と認められる」と論拠いたします。つまり、水源地の所有者がその敷地面積に応じた地下水を涵養することによって、流域全体の水収支の均衡を保たなければならないと述べたわけであります。
 水道水源保護条例等によって指定された水源保護地域における適正な水資源の利用については、水源地の所有者に対して地下水の採取制限という消極的な不作為にとどまらず、地下水の涵養という積極的な行為を求める見解を示したと考えます。
 私は、この判例の考え方は、水源保護地域に限られているとはいえ、水利用権限には水源保護の義務が伴うことをあらわした画期的な判決であると理解しております。
 これらの裁判例の整理から言えることは、裁判所は地下水の法的性質について水循環を考慮に入れた考え方に変遷してきているというわけでございます。この意味において、裁判所もやっと科学的知見に追いついてきたと言っていいと思います。
 次に、裁判所の考え方を離れまして、学説について言及したいと思います。
 地下水の法的性質について、学説は2つの見解に大別することができます。地下水の性質については、多くの研究者が言及しておりますけれども、それをあえてわかりやすいように2つに大きく分けた上でお話を進めさせていただきたいと思います。
 まず、民法第207条に基づく見解は一般的に私水説と言われております。これは地下水を土地所有権との関係で理解しようとする考え方で、民法第207条、土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶとの規定を根拠として、土地所有者が地下水を利用できるとする見解であります。これは今までるる述べてきました裁判所の判例の出発点にある考え方でございます。
 次に、河川法第2条第2項に基づく見解でございます。これはいわゆる公水説と呼ばれるものでございます。地下水を土地所有権とは切り離して、独立した水資源として捉えようとする見解でございます。
 河川の流水は、私権の目的となることができないと定める河川法第2条第2項を論拠として、地下水を河川の流水と同列に取り扱い、それを公水と解して、公共的管理のもとに置かれるべきであるとする学説であります。
 これらの2つの学説をもとにいたしまして、それぞれどのように地下水の採取制限の理論が導かれるのかについてお話ししたいと思います。
 まず、わかりやすい公水説に立った採取制限理論についてお話ししたいと思います。
 河川水と地下水を区別することは、水循環の観点から適切ではないと考え、河川水と同様に地下水も公水と解する学説は、地下水にも河川水と同様の管理理論が適用されると考えます。
 そこで大きな問題が生じます。それは地下水は管理可能かという問題でございます。
 また、地下水を管理するためには、地下水が管理可能な状態になければなりません。
 さらに、管理可能な状態と言えるには、地下水の流動システムが解明されている必要があります。地下水の流動システムがわかっていない以上、管理可能な状態とも言えませんし、それを前提とした管理可能性を語ることができないというわけでございます。
 すなわち地下水の流動システムが解明できていて初めて地下水を管理することができるわけです。
 したがって、地方公共団体が条例によって地下水を管理するためには、どうしてもその流動システムの把握が前提となるわけです。
 本年、地下水採取の許可制度を部分的に導入した熊本県は、30年から40年という長い時間と費用をかけて、地下水の流動システムの大枠を把握していると言ってもいいと思います。
 次に、私水説に立った採取制限理論についてお話を進めたいと思います。
 土地所有者が地下水を自由に利用できるという見解においては、地下水の水脈が同一であった場合には、地下水が存在する土地の所有者間において共同で地下水を利用することになります。
 同一の地下水流を有する土地所有者間における地下水の共同利用という考え方であります。この考え方は、健全な水循環の確保の理念に立脚して初めて持続性を有することになります。幾ら「地下水が自分の土地の下に通っている。だから、そういう土地所有者が集まって自由にくみ上げていると、自由に共同で利用しているのだ。でも水が枯れてしまった。」というのでは意味がないからであります。
 このような考え方を規範として表現いたしますと、健全な水循環を損なう地下水の利用はしてはならないというルールが導き出されると言えるでしょう。このルールは、まさしく先ほど公共の福祉で言及したルールと同じわけであります。
 そこで、このような地下水の利用に関するルールをどのように具体化するかという問題が生じます。
 本来なら同一地下水流のある土地の所有者間の合意によって、地下水利用の具体的内容が決定されるべきです。
 しかし、地下水は不可視、目に見えません。そのため、どの土地所有者との間に共同利用関係が成り立つのか、またそれが明らかになったとしても、各土地所有者が採取し得る適切な水量を掌握することは困難であります。
 そこで地方公共団体がその地域の水循環を総合的に勘案し、地下水の保全と合理的利用の調和を図る条例を制定することによって、健全な水循環を確保し得る地下水利用の具体的基準を提示することは、現実的かつ有益な手だてとして容認されると思います。
 したがって、地下水保全条例を制定し、地下水を市民共通の財産と定めて、地下水保全対策を推進することは、地下水の保全と合理的利用の調和を図る施策として評価できると思います。
 ただ、ここでも先ほど申し上げました地下水の流動システムを解明して、地下水がある程度地方公共団体によって管理可能な状態になっている点が不可欠であることを申し上げたいと思います。
 次に、地下水の管理責任です。
 地下水の流動システムが掌握され、地下水が管理可能な状態となり、それを管理することになった場合には、管理責任が生じる点を忘れてはなりません。つまり地下水は河川水と同様に管理されるというわけです。
 国家賠償法第2条第1項は、次のように規定いたします。道路、河川その他の公の営造物の設置または管理に暇庇があったために他人に損害を生じたときは、国または公共団体は、これを賠償する責めに任ずる。すなわち、何らかの地下水障害が管理上の暇庇によって生じた場合には、国家賠償法第2条第1項に定める公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく損害の賠償について、責任を負わなければならないわけであります。
 例えばある人の地下水採取が原因で従前より採取してきた井戸の水位が低下し、その所有者に損害が生じた場合に、地下水管理者である地方公共団体の管理上の瑕疵が認められるならば、地方公共団体はその被害者に対して損害を賠償しなければなりません。
 地下水を管理する場合には、その管理責任も発生するという点が重要であります。要するに、管理とその責任はセットで取り扱われるというわけでございます。
 ここで誤解のないように一言申し添えますが、あくまでも流動システムが掌握され、管理可能な状態になり、それを管理することになった場合には責任が生じることになりますので、熊本県はもしかしてこの場合に当たるかもしれませんけれども、今の鳥取県についてはまだそこまで行っているかどうかに大きな疑問があると思います。
 最後に、公水私水区分論の検討についてお話いたします。水循環から見た水資源の公と私の関係についてお話いたします。
 地下水を含む水の性質を公水と私水で区分する理論は妥当でありましょうか。
 水循環の過程にある水資源をある地点で切り取って公水か私水かを論じ、それによって自由に水を採取できるか否かを決める立場は、水循環の概念に適合しないと思います。私水だから自由に使える、公水だから許可が必要だと、水は循環しているわけですので、あるときは私水、あるときは公水と考えられるのは、水の立場に立ったら心外ではないでしょうか。
 そこで、公水、私水の区分によらない、水循環にかなった水資源の性質について考察することを試みたいと思います。
 この試みは、まさしく水循環を前提にして、水資源の公と私の側面を明らかにするものであります。
 水循環を前提とした水資源の性質を捉えるためには、そのコアである一番中心の部分には公共性が存するとの認識が不可欠です。
 それでは、中核部分に公共性が存する水資源について、どのような理論によって私人がそれを採取することはできるでしょうか。
 それは水の中心部分には公共性が確かにあるけれども、土地所有権に基づく私的支配の領域に水が到達したときには、その公共性に土地所有権の私権性、つまり財産権性です。財産権が覆いかぶさることにより地下水を採取できるようになるという解釈によって可能となります。
 なぜなら土地所有権に基づく私的支配の領域に水が達することによって、水が排他的に利用可能な状態になるからです。
 すなわち水資源の中核部分には常に公共性が据えられており、地下水がその土地所有権に基づく私的支配の領域に達することで土地所有権の私権性が公共性を包み込み、その排他的利用が可能となるけれども、地下水が河川に戻るとその私権性がはがれ、中核部分にある公共性が露顕すると考えるわけでございます。
 要するに水の公共性に対する土地所有権の私権性の被覆、覆いかぶさることです、被覆が水の排他的利用をもたらし、その剥離によって水の公共性が露顕されると捉えられるわけであります。これについて私は、市民の皆さんに説明するときはあんパンの例をとって説明いたします。あんは公共性です。ですから、川に流れているときはまさしくあんそのままです。ところがそれが伏流水になり、土地所有権の中に潜って地下水に循環して行く場合に、その土地を持っている人の私権性、財産権性がそのあんをくるんで、まさしく生地ですが、あんパンになるわけです。そのあんを被覆する生地があるがゆえに、それを取水することができると。また、それを使い終わって河川に戻すと、その被覆の部分がはがれてあんだけになって、公共性でみんなのものの河川の水になっていくわけであります。
 熊本県のように地下水は年々水位が低下している、またこれは許可制にして制限をかけていかなければいけないという場合は、あんパンではなくて、薄皮まんじゅうの状態になっているわけです。その私権性は非常に薄い。ですから、今の鳥取県の水状況は、薄皮まんじゅうなのか、それとも生地がしっかりついているあんパンなのかと。しかもそのあんパンが1センチなのか2センチなのか5センチなのかがわからないわけです。熊本県は、何十年もかけて薄皮まんじゅうだということがわかりましたので、しっかりと許可制でもって規制をかけているところでございます。
 以上のような視座から水循環を分析すれば水資源の中核部分には公共性が存在し、それが土地所有権の私権性で覆われ、後にその私権性がはがれると再び公共性が現出するというサイクルが水循環であると解されます。
 水資源の公共性と地下水利用の私権性の関係をこのように捉えることは、水循環を前提とした地下水の法的性質について解明に資したことになると思います。要するに、水資源の性質の観点から水循環を見れば、水資源の中核部分に存在する公共性の露顕、あんの露出です、と水利用権限の私権性の被覆、パンの生地です、が繰り返されることと表現することができるわけでございます。
 最後に、地下水の性質について、土地所有者が地下水を利用できると解したとしても、あるいはそれを公水と解釈したとしても、健全な水循環を損なうような地下水の利用をしてはならないというルールをいかに具体化するかが鍵となります。
 その方策としては、地方公共団体が地下水の流動システムを解明し、地下水を管理可能な状態になることを前提とした上で、地下水の保全と合理的利用の調和を図る条例を制定することによって、地下水利用の具体的基準を提示することが現実的な方法であると考えるわけでございます。
 以上が委員長の包括質問に対する私の回答でございます。

◎浜田委員長
 ありがとうございました。あんパン理論がとても理解しやすい形でわかりやすく、またネットをごらんになっている方々もおわかりいただけたかと思います。
 そして公水という言葉を使ってこの条例を進めようとしている、その背景などについてもとてもよくわかり、また先行しています熊本県の事例をしっかりと学ばせていただきつつ、それを土台にした鳥取県独自の条例をつくろうとした。熊本県と鳥取県の違いについても、とても理解しやすくお話しいただけたと感謝を申し上げたいと思います。
 鳥取県が地下をきちんと管理して責任がとれるように規制をかけたときに、その一方で責任がとれるようなことを考えなければならないのですが、その観点から条例を見ていただいたときの御感想を伺って、それから皆様の御質問に答えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

●宮崎参考人
 私がこの本条例案を拝見したときに一番重要なポイントは、許可制ではなくて届け出制をとっているという点でございます。しっかりと規制したいと考えるならば許可制をとり、そこまで考えなくていいのだと考えますと届け出制ということは、先生方はよく御理解されていると思います。
 私の考え方によりますと、私は今説明したとおり私権説に立っております。原則的に民法第
207条にのっとりまして土地所有者が採取できると。けれども、それは公共の福祉の観点から制限されていくと。それは健全な水循環を確保する、それが確保できないようだったら採取はできないというわけであります。ですからまずは土地所有者である以上、井戸を掘ってくみ上げても構わないところがスターティングポイントになるのです。くみ上げてもいいけれども、他人に迷惑をかける、また水循環に影響があるのだったら、それは規制をかけるということですので、そういう意味で取水したい人はまずは届け出してくださいと。
 その上で、条文を上げながらお話を進めたいと思いますけれども、例えば採取計画を出す。そうするとこの採取計画では、水循環に地下水障害のおそれがあると認められるときは第11条で計画変更の命令を出す。その命令に従わない場合は、第17条で停止命令もできると。また、非常に地盤沈下等々の地下水障害が心配される地域については、制限地域を設けて採取基準を設置すると。それに従わない場合は、変更命令していくと。制限地域を設ける時間がない場合については、採取の停止または制限の勧告を第21条でできるとなっておりますので、広く地下水利用について届け出させた上で、入り口は広い。でも出口はしっかりと許可並みに絞っているということですので、実効性はしっかりと担保できると。プラス土地所有権の効力は、地下水にも及ぶというスターティングポイントで広く届け出制を認める部分については、非常に法理論に誠実に、忠実に条文化した条例であるというのが、最初に拝見して感じた率直な意見でございます。

◎浜田委員長
 ありがとうございました。
 それでは、皆様の御質問にお答えいただきたいと思いますので、よろしくどうぞお願いいたします。

○山口委員
 熊本県との比較ですけれども、確かに鳥取は流動システムの解明がまだなされていないということで不完全ではないかと。総体的な評価はいただきましたけれども、やはり流動システムの解明というのは不可欠なものでしょうか。

●宮崎参考人
 やっぱり流動システムが明確になっていないと、どうやって守ればいいかという方法もわからないですね。(発言する者あり)そうなのです。河川水が管理できるというのは、目に見えるわけです。ですからここの堤防のかさ上げをしようなり、ここの砂利をさらおうなどしてきちんと河道を整備して降った水を流すというわけですけれども、そうするとそこにきちんと予算をかけて管理して、国民の生命、財産を守ると、治水の考え方に行くわけです。
 ところが地下水は目に見えませんので、どこに流れていっているのか。多分、先ほどの先生のお話を聞くと海には流れていっているらしい。でもどうやって流れているかはわからないと、その量もわからないという状況で、利用するのはできると。掘って湧いて取水できれば使えますが、それをどうやって守るのかはわからない。全く手がつけられない状態です。
 熊本県は、この時点で何メートル地下水の水位が下がった。では、白川上流で涵養事業をやれば上がるであろうという、流動システムもわかっているのです。ですから、冬に田んぼに水を張りましょうなり、田んぼに水を張ったときに補助金を出しましょうなどというように、大ざっぱですけれども、ここで注入すればここで上がるという流れがわかっています。だから、少なくても大枠は必要だろうと思っています。そうでないと、地下水を守れ、鳥取県の担当部局が管理しなさい、それを守りなさいと言ってもその手だてがないというわけであります。ですからどこに水脈があって、どこが今水位が下がっていたり上がっているのか、下がっているとしたらどこに涵養すればそれが上がってくるのかが粗々わからないと、私が管理者の立場だったら、「どうやって管理したらいいのかわかりません」と言わざるを得ない状態になるのではないかと考えている次第でございます。

○山口委員
 もう1つ、先生、今32都道府県が条例をつくっているわけです。それから市町村も385ぐらいつくっているのですが、管理流動システムというのは、市町村単位などの小さい範囲では意味をなさないでしょう。熊本県以外の32都道府県の中ではそういう管理システムを前提としてやっておられるところが大半なのでしょうか。この385の市町村がやっていてもその地域内ですから、なかなか難しい。こういうときの問題点は、鳥取県でもあるわけです。だから鳥取県全体としてでも管理システムということと、それから既にやっておられるものをどういう形で片づけたらいいかどうか。

●宮崎参考人
 おっしゃるとおりだと思います。それは町や市のレベルで地下水は大事だし、みんなものだから公水だと宣言して、条例で定めているところもかなりあります。御指摘のように、100を超えるところがそうであるわけです。小さな単の市や町は、それでいいと思っております。なぜかといいますと、地下水ですので、やっぱり町レベル、市レベルでは地下水は多いのか少ないか、また減る傾向にあるのか現状維持なのかは、ある程度押さえていると思います。また、取水が多いのか全然なされていないのか。でも地下水は大事ですし、町民、市民の生活に影響が及ばないので、この町では、またこの市ではみんなのものだと定めて採取規制をしていこう。また、その地域の特殊な事情として、少し強い許可にしていこうということは、あっていいと思います。
 ただ、これが県レベルになると、一方で国の法律の状況も見なければいけない。国の法律を無視した形でルールを設定するのではなく、国の法律との整合も視野に入れながら慎重に対応しなければいけないと思います。
 あとは山口委員御指摘のように、町や市といっても結局地下にある地下水盆もしくは地下の流動システムは流れているわけですので、規制していない町でくみ上げてしまえば元も子もないわけですから、できるだけ大きいところで規制したほうがいいということで、熊本県はやはり熊本県として一部許可制を導入したという背景がございます。ですから、市または町レベルでの条例の設定と県レベルでの条例の設定は、やはり考慮する要素は違ってくるのではないかなと。また、国の法律を勉強する私の立場から言わせていただければ、ぜひ国法との整合を考えた上で条例制定していただきたいと考えている次第であります。

◎浜田委員長
 よろしいですか。
 ほかにはいかがでしょうか。(発言する者あり)よくわかりました。

○市谷委員
 全体としては本当によくわかる話で、ありがとうございました。
 ちょっと細かい点で申しわけないですけれども、県条例の場合に広く届け出をしてもらうことが大事だと、私も本当にそう思いますが、届け出の対象が水をくみ取る管の太さを鳥取県は
14平方センチにしており、ほかの町は6平方センチというところもあります。工業用水の関係で、以前県のほうから6平方センチという基準があることを聞いたのですけれども、その辺も広く拾っていくことでいきますと、私は6平方センチに合わせたほうがいいのではないかと思っているのですが、この6平方センチというのは何か理由があるのでしょうか。

●宮崎参考人
 私も技術的なことは専門外ですので、よくわかりませんけれども、地下の流動システムがまだ不確かな段階で6平方センチというのは、小規模事業者には大変かと。例えば、個人で農業を営んでいる人なり、その他個人クリーニング店など、さまざまな小規模事業者もいらっしゃいます。そういうことを考えれば、ある程度地下の水位が下がってきている、薄皮まんじゅうの状態でしたらそれは仕方がないですけれども、多分鳥取の水は豊かなものだと信じておりますので、ぜひ科学的な知見で立証していただきたいと思います。まだ流動システムがわかっていない段階で6平方センチに絞り込むのは厳しく、もう少し様子を見て流動システムが粗々わかり、賦存量も大体わかってきたところで規制したらいかがなものかと思います。
 例えばこの資料2の4ページですけれども、地下水の採取について静岡県は吐出口の14平方センチを対象としております。また、山梨県さんも10平方センチ。これは採取量ですから関係ないですけれども、静岡県と同じレベルですので、何か非常に大きいものを想定しているものではないと考えております。

○市谷委員
 あともう1点ですけれども、この届け出の際に新規でこれから水をくみ上げるところについては、事前影響調査を義務づけているのですけれども、既にやっているところについては届け出の際にそういう影響調査は出さなくていいと。そのかわり、協議会の中で調査などした結果をそこに提出することに協力してねという話にとどまっているのです。そうしますと、全体の水量なり影響などを把握していかなければならないと思うのですけれども、そういう点でいくと今やっている業者に対して、影響調査の結果はせめて提出することを義務づけた方がよいと思います。既に出ているところなので、後から法律をつくって規制するのはおかしいのではないかという論もあるのですけれども、その辺はどうなのでしょうか。

●宮崎参考人
 確かに市谷委員の言われることもそうかなと思うのですけれども、現にこの資料、今度はこれ別にあるカラープリントの資料の3枚目です。鳥取大学と鳥取県との共同研究ですけれども、一番最後に現状のくみ上げを継続することは問題ないとなっております。これが事前、事後の評価と考えられないでしょうか。もし私だったら、そこにお金をかけるのだったら、涵養事業にお金を出していただいて、新規の人はきちんと調べてください。でも、既に取水している人については、現状は問題ないわけだから、その調査費用を涵養の政策で積極的にお使いいただくようにしたほうが実のあるといいますか、実がとれることになるのではないかと考えております。

○市谷委員
 ただ、現実には大量に取水しているところが既に出ていて、後から出てきたところと既に取っているところとの関係で影響は出ると思うのです。そうなると、新しいところについてはいろいろ影響が出るから規制をかけ、既にしているところについては今影響がないのだから一定の規制といいますか、ルールの対象にならないというのは少し不公平だと思います。本来であれば、今取っているところも影響調査をされているので、していないのであればそこにお金がかかることになってくると思うのですけれども、されている調査結果の提出を求めてもいいのではないかと思うのですが。

●宮崎参考人
 おっしゃるとおり、そういうことも十分考えられます。私がどうこうよりも、ぜひ委員の先生方が政策的な判断をしていただければと思います。

○市谷委員
 法的にはあり得ますか。

●宮崎参考人
 法的にあり得るというよりは、もう取水された既存の採取者については、当時の条例の効力は及びませんので、そこまで言われても困ってしまうのが現状ではないかと思います。
 ただ、地下水利用協議会という協議会をつくって、そこで涵養事業も含めて、また地下水流動システムを解明していくわけですので、その中で公平性を保っていくと。負担金の問題なども後々出てきますので、新規と既存のものを同じ土俵で扱うのかどうかも含めて、この協議会の中で調整を図っていくことは、受益者同士の話し合いですから一番重要だと思います。そこを課題にしたほうがいいのかなという気はしております。

○市谷委員
 わかりました。

◎浜田委員長
 よろしいですか。
 ほかの皆さんはいかがでしょうか。

○濵辺委員
 この地下水の利用について、何らかの規制で制限されたとして、大企業は例えば入り口の配管の大きさや使う時間が決められると、くみ上げる量は決まると思うのですけれども、ただ本当に決められた量を使っているのかどうかを見きわめる手段があるのですか。水は目に見えないものですから、使い過ぎると何年後かにしわ寄せが来ると思うのです。そういうことを通常の日常事業の中で確認できることってあるのですか。

●宮崎参考人
 済みません。私の専門外ですのでわからないですけれども、ただ、今は採取規制をして取る段階で見ていますが、必要でなくなった水を流している企業もいらっしゃると思うのです。それは排水、汚水になっているのか、きれいなままなのか、それともエネルギー変換で温水になっているのかなど、さまざまあると思います。ですから条例には決めないけれども、利用協議会においてはどれだけ取水して、どういう質の水を排水しているのか、またその排水を表流水にして流しているのか、流すのだったら地下にもう一回戻すようにしてください、地下に戻すのであれば負担金を少し減らしましょうなど、取る場面ではなくて流す部分にも目を向けていただいて有効に利用していくことも大事な視点ではないかと考えております。

◎浜田委員長
 ほかにはないでしょうか。

○横山委員
 熊本県は30年も40年も調査して許可制とされた。ほかのところ、例えば北海道とか埼玉県、群馬県は届け出制ですよね。先生は、どっちのほうがいいかなと。先ほどは届け出制のほうがいいという感じのニュアンスで話されていましたが、ただ、本県は流動システムを把握できていない段階でぽんと条例を提案するわけですけれども、何か問題が起こる可能性はないですか。

●宮崎参考人
 入り口は広く、でも出口はしっかりと健全な水循環を損なうような、地下水の障害が生じるようなおそれのあるときはきちんと変更命令ができたり、停止命令ができたりと規制しておりますので、こんなことを言うのは変ですけれども、届け出という名の許可制、準許可制みたいな形となっておりますから、実効性は担保できていると思います。それで届け出制することによって、ある程度大口な採取者の採取量がわかってきますので、わかると今度は地下の流動システムを解明する一つの取っかかり、スターティングポイントになります。そういう意味では、必要があるならば強い許可制度に移行するためも十分可能です。ですから、その第一歩として踏み出すには一般的にこのような段階的に踏んでいくのはいいのではないのかと、合理性があると考えております。

○砂場副委員長
 何点か教えてほしいのですが、まず許可制と届け出制の絡みでいきますと、鉱業法みたいな根拠条文がない中で届け出制を採用したとして、将来裁判などになった場合にそれは許容されるのでしょうか。

●宮崎参考人
 裁判というのは、届け出制で変更命令が出たときに不利益が生じたということで不服申し立てがあった場合でしょうか。

○砂場副委員長
 そうです。

●宮崎参考人
 取り消し訴訟ということですけれども、取り消し訴訟の要件として一番重要な要件は行政処分ですので、行政処分の処分性が一番のハードルになると思います。許可制になりますと処分性があり訴訟要件をクリアしますけれども、届け出制ですので、行政訴訟という面ではそこまで厳格に心配する必要はないのかと。
 ただ、許可制になりますと不許可を不服として行政処分の取り消しは考えられると思います。そういう意味では、法的な訴訟のリスクを回避する意味においても届け出制は無難な選択であると考えます。

○砂場副委員長
 もう1点は、条例を実際に運用していくときに大事になってくるのは、やはり差しとめを現実にしていかなければならない場面だと思います。今想定した場合にです。それで、仙台地方裁判所の決定ですけれども、これが一つの裁判の流れであれば先生がおっしゃっているように、身体権としての浄水享受権と平穏生活権としての享受権の2つを明確に認められていることが判例の流れであれば安心できるのですけれども、地裁判決でございますので、これが上訴審でどういうふうになったのか、また類似の判例があるかどうかも教えていただければありがたいです。

●宮崎参考人
 この判例は、あくまでも一般廃棄物最終処分場や産業廃棄物最終処分場の建設をめぐって、また操業をめぐっての差しとめ訴訟という特殊な点があるということが一番重要だと思います。ですから、この浄水享受権の考え方がこの地下水採取の条例をめぐる考え方に影響するかというと、ほとんどないと思います。それは量の問題ではなくて、あくまでも発がん性物質の水質汚濁が飲んでいる地下水に影響を与え、それが飲めなくなると。しかも、そこには水道が通っていない状況で差しとめ請求が認められたというわけですので、その考え方をここに持ってくるのは余り考えられないと思います。そういう意味では、私が重要だと思ってここで取り上げさせていただいた点に筆が滑ったところもあるかもしれませんが、御理解いただければと思います。

○砂場副委員長
 地下水の考えについては、非常にわかりやすい判示部分だと思うのです。そうすると、こういう文言を条例の前文なり目的のところにうたうことは有効でしょうか。それとも、条例でこういう明確な権利性までのことをうたってしまうのは、条例として勇み足になりますか。その辺いかがでしょうか。

●宮崎参考人
 この条例の対象範囲は工業用水等々も含めておりますので、あくまでもこの浄水享受権は飲む水に限ったことなのです。別に工業用水は、浄水享受と全く関係ありません。あくまでも利益追求のために事業者が必要だから水をくみ上げるわけですので、この中に入れてくるのはちょっと違うのではないかと考えます。

○砂場副委員長
 もう1点教えていただきたいのは、鳥取県の場合、先行して条例をつくった市町村がございます。それで今回県が条例をつくりますと、それぞれの条例とそごが出てしまうと。今、市谷委員が言われましたように、市町村によっては取水口の大きさが小さくて県のほうが大きいなど、さまざまなものが出てきて、単純に市町村のほうが厳しくて県のほうが緩やかであれば県がつくった条例に対する上乗せ条例であると判断できるのですけれども、逆転している部分もあるのです。そうすると、そこの整合性をどうとっていくかですけれども、他県の場合、そういう整合性をどのようにとっておられるのでしょうか。

●宮崎参考人
 そういう状況について全て目を行き届かせているわけではございませんので、不確かな部分もあるかもしれませんけれども、私の考え方では厳しいほうに、それが町なのか県なのかはわかりませんが、厳しいほうに合わせていただいてよろしいのではないかと考えます。それだけ地下水採取については、厳しく臨むという視点からでございます。

○砂場副委員長
 では、単純に鳥取県の条例の場合は、先につくった町村については除外するとなっているのですけれども、そうではなくて、県で条例を制定して県と町村の両方から規制がかかってしまうと当然厳しいほうの規制が適用されるわけですから、あえてそういう条例を設けないほうがいいというお考えと理解していいのでしょうか。

●宮崎参考人
 条例というのは、除外するという文言の。

○砂場副委員長
 そうです。それをやめたらいいかということです。

●宮崎参考人
 難しい問題だと思います。でも、これは特殊な事情がございますよね。大規模企業が入っている町、そうではない町。また、そう考えると今の原案のような各町の条例を尊重するという立場も一定の合理性はあると思います。

○砂場副委員長
 そうしますと、例えば取水口や条例の何条と何条については適用しないという形にしたほうがいいのですか。それと条例ではなくて規則か何かに一旦譲っておいて、具体的に検討して整合性をとる形をとったほうがいいのでしょうか。技術的な問題で恐縮ですけれども。

●宮崎参考人
 多分町の条例も変わってくると思うのです。また、この県の条例も新しい段階に入りましたら改善されていくと思います。ですから、今のうちに条文がどうこうと余り深くさわるのではなくて、その辺は原理原則だけ示しておくことのほうが重要ではないのでしょうか。

◎浜田委員長
 私のほうから1~2点お願いしたいのですが、罰則規定がございます。熊本県は非常に厳しい。それは管理責任が十分果たせるという背景があるからだと思いますが、今の鳥取県の状況の中でこの量刑は妥当なものかどうかが1つです。
 それで熊本県は、随時状況の変化によって改正されております。改正の期限をどのくらいの形で見込んでおいたらいいのか、この2点を伺わせてください。

●宮崎参考人
 罰則規定ですけれども、御存じのように刑法については上水道の汚染の罪なり、我々のどうしても飲まなければいけない上水についての水源を確保する、またその法益を守るという面については刑罰を設けておりますので、そういう意味では熊本県の懲役も入った上での罰則規定はそれなりに妥当性があると考えております。
 その上で熊本県まではいかないけれども、今の鳥取県の状況で上限が30万円というのはほかの県との条例と比較しても、一般的に考えられるものかなと考えております。
 あと2点目の条例改正のスピードといいますか、期間について、今では平成30年に見直すという文言があるとは思うのですけれども、どうなのでしょうか、それこそどれぐらいの時間をかけて流動システムを解明するのか、いくらお金をかけていくのかという問題に直結すると思います。ですから、徐々にゆっくりとということもありますし、いや、もう予算もそこに集中的につけて、またしっかり議論して一気にやっていくというのであれば、もう少し短いタームでも十分なのかなという気がしており、両方あり得ると思います。

◎浜田委員長
 わかりました。ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、先生に対する質疑のほうはこれで終わらせていただきたいと思います。
 どうもきょうは、本当にありがとうございました。

●宮崎参考人
 ありがとうございました。

◎浜田委員長
 とてもわかりやすく、皆さんが理解できたのではないかと思います。条例が何のために、今どうして必要なのかについても、そのできる範囲内の理解はできたと判断させていただきました。御指導いただきましたこと心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
 では、以上をもちまして福祉生活病院常任委員会を閉会させていただきます。
午前11時50分 閉会

 

 

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