平成22年度議事録

平成22年4月13日~15日・所管事項に係る県外調査

1 調査日時・箇所・内容

4月13日(火)
○松江北高等学校(島根県松江市)
  補習科の現状について
○松江予備校(島根県松江市)
  松江予備校の現状について
4月14日(水)
○学校法人福高研修学園(福岡県福岡市)
  福高研修学園の現状について
○岡山操山中学校・高等学校(岡山県岡山市)
  公立中高一貫教育の取り組み及び補習科の現状について
4月15日(木)
○高知工科大学(高知県香美市)
  世界一流大学を目指す取り組みと大学公立化及び高知県教育への影響について

2 調査委員

稲田委員長、澤副委員長、山口委員、鍵谷委員、鉄永委員、前田(八)委員、興治委員

3 随行者

鳥取県議会事務局議事調査課 前田(い)主幹、前田(康)副主幹

4 調査報告

 今回調査のテーマは大きく、専攻科問題、中高一貫教育、大学公立化の3点。

○専攻科問題について
 今回はまず、鳥取県と類似規模の地域における補習科と予備校の現状を把握するため、島根県立松江北高等学校補習科及び松江予備校について調査を行うとともに、国内で唯一、補習科機能を学校法人で運営している福岡市の学校法人福高研修学園、更には、岡山操山高等学校補習科についても調査を行った。
 鳥取県の倉吉東高等学校、米子東高等学校に設置しているのは、学校教育法第五十八条に規定する専攻科。現在、大学受験目的の専攻科が設置されているのは、全国で鳥取県のみ。
 これに対し、島根県などで設置されているのはPTA立の補習科。この補習科には法的設置根拠がないため、公費は投入できない。従って、教員人件費等の必要経費は原則として授業料で賄うこととなるが、ある程度の人数規模を確保する必要があり、経営面で苦慮されている模様。
 授業は退職教員や非常勤講師の外、現役教員の応援も。但し、現役教員には職務専念義務が課されていることから、補習科では本務に支障のない限りにおいてボランティア対応。負担は大きいが、それを承知の上で運営しているのが補習科。「年間50万円の授業料ならば親は出す」との弁も。お金以上に“質”が問われているようだ。
 なお、島根県松江地区は鳥取県米子地区と隣接しているが、松江予備校では、現状として、鳥取県の受け皿としての機能について明確に否定。
 また、福岡市の学校法人福高研修学園の場合も、当初は福岡高等学校補習科として設立されたが、その廃止論が持ち上がったことから、昭和40年、用地を購入し学校法人化。経営上の課題は補習科と同じであるが、これを支えてきたのは学校関係者や地域の熱意。
 以上も参考に、鳥取県の専攻科問題について、現状を十分に勘案の上対処してまいる所存。

○中高一貫教育について
 鳥取県東部地区の進学校における公立中高一貫教育校の設置が検討されはじめたことから、状況が類似の岡山操山中学校・高等学校について調査を行った。
 岡山県では、15年前に少子化を見込んで高校再編がなされ、その一環で早くから中高一貫校の導入の検討が始まった。平成14年度、岡山操山中学校が開校し、第1期生120人が入学し、平成17年3月には1期生が中学を卒業、平成20年3月には1期生が高校を卒業。
 中学では高校学習の先取りをせず、基礎基本を重視。授業改善は中高合同で。
 高校では、内部進学者(内進生)と受験入学者(外進生)を融合するため、まずはお互いを高めあう集団づくり。授業は選択制で、学習速度を複線化、出来る子はドンドン先に進む。
 総合学習「未来航路プロジェクト」を6年間通じて実施し、中学卒業時には論文作成、高校でも内発的進路意識の醸成を図り、豊かな人間性・社会性を身に付け、国際社会で活躍できる人材の育成を目指す。
 進学実績では、平成21年度に医学部合格者が3名から11名へ増加など結果も。
都内私立中高一貫校と比較しても生徒・保護者の満足度も高いが、未だに「高校学習の先取り」「全員が東大」といった誤解もあり、地域の理解が課題。
 鳥取県の公立中高一貫教育校設置構想に問われているのはその理念。設置により何を目指すのか、教育委員会の動向を注視しながら、委員会としても更に調査を進めていく。

○大学公立化について
 公設民営大学の公立大学法人化を実施した高知工科大学について調査を行った。
高知工科大学は、高知県内の大学が工学系学部を有していなかったことから、平成9年4月に開学。平成11年度には、大学院や各種研究所を立ち上げたが、志願者数の伸び悩みと経営上の問題から、平成20年4月には工学系・文型融合型のマネジメント学部を開設、また教職課程への取り組みを開始し、平成21年4月には公立大学法人化を果たした。
 学部・学科の再編に当たり学生ニーズを最重要視するとともに、教育力を深化し、企業幹部を修士課程に入れる取り組みを行うなど、研究力を地域へ還元。
公立化で授業料が半減し地元に喜ばれているが、何よりブランド化が大きいとのこと。(地方は官尊民卑、地方高は国公立大学重視)
 また、県に対する依存型経営とならないよう、「ない金でやる」運営を実践、教職員数は一般的な公立大学の半分以下。(私学の時から)教員評価制度と給料とをリンクする仕組みを導入。(うかうかしていると教員の給料が下がる)
 その一方で、公立大学法人化は安易な道ではないことについても言及。
 鳥取県の高等教育についても話題となり、学部学科内容が複数の大学でまともにバッティングしており、戦略がないとの指摘も。
 官尊民卑、国公立大学重視は地方の現状。但し、高等教育は社会・地域のニーズに如何に応えていくかが一番。地方大学が生き残るためには、まずは学生が行きたいと思うような大学になるための改革力が問われていると言えよう。

 

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