平成23年5月、日野町山村開発センターにて石こけしづくりの現場を取材させていただきました。
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現在、「石こけし保存会」で指導をされている小川美石(本名 宇佐美)さんにお話をうかがいました。
石こけしづくりを始められたきっかけは?
圓石先生がご健在だった1962年(昭和37年頃)に石こけし作成講習会に参加し、石こけしづくりの楽しさに惹かれて圓石先生に師事するようになりました。
石こけしの魅力とは?
素朴で、観ていると気持ちが和むところですね。「石こけし」はなんと言っても顔が命です。無表情の中にも素朴なかわいさがにじみ出るような表情に描くのが、一番大事であり難しい部分なんです。
石こけしづくりで大変だったことは?
昔、石こけしづくりが最盛期で注文がたくさんあった頃、昼間は農作業や家事、子育てで忙しかったので、家族が寝てから深夜まで、ときには徹夜をして石こけしを作っていました。注文品は期限があったので、とても大変でした。でも、「やめたい」とは思いませんでした。やっぱり、石こけしを作るのが楽しくて好きだったからですね。今は、ゆっくりと楽しみながら、のびのびと描かせてもらっています。(笑)
あと、意外と大変なのが、材料となる玉石の確保です。2つの石をのせられるような安定したまるい形で、頭と体のバランスがとれる大きさを兼ね備えた石をペアで用意しないといけないので、なかなか難しいんです。
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普段は柔和な口調でおだやかな印象の美石先生ですが、石こけし作成になると、「(着物の模様の)松葉はもっと細く、でも力強く描きましょう。やりなおしてください。」など、厳しい指導が飛びます。
「私は、10年くらい石こけしづくりをしていますがなかなか思うようなものは描けません。顔が上手く描けなくて何度も描き直しをしてしまいます。」と笑う会員さんたち。
ときにはお茶を飲んで談笑したり、楽しみながら石こけし作成に励み、技術の向上に努めておられます。
また、会員さんの中には、美石さんの娘さんもおられ、「子どもの頃は石こけしづくりに全く興味がなかったんですが、大人になって母の作品に触れ、優れた民芸品の伝統を後に伝えていく必要があると感じました。今では保存会会員として石こけしを作っています」とのこと。
このように、半世紀の石こけしの歴史の中で、一時期とぎれそうになった石こけし伝承の糸は、石こけしを愛する人たちの手によってしっかりと繋がれてきています。