犯罪被害者支援の経緯

被害者支援の経緯

   昭和55年、三菱重工ビル爆破事件などを契機として、「犯罪被害者等給付金支給法」が制定され、殺人や傷害などの人の生命または身体を害する故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた方の遺族や身体に重い障がいが残った方に対し、国が給付金を支給する「犯罪被害者給付金制度」が発足し、被害者への経済的援助が始まりました。
 その後、平成3年(1991年)に開催された「犯罪被害給付制度発足10周年記念シンポジウム」において、特に精神的援助の必要性が被害者自身によって強く指摘され、これを重要な契機として更なる被害者支援のための検討が始まりました。

国際的な潮流

 国際的にも、近年の人権意識の高まりを背景に、犯罪により身体的・精神的に被害を受けた被害者に対して、国家による救済、支援が行われるべきであるとの主張が高まってきています。
 1985年(昭和60年)、国連総会において、「犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言」が採択されました。その中では、

  • 被害者は、その尊厳に対し共感と敬意をもって扱われるべきこと
  • 被害者に対して、訴訟手続きにおける被害者の役割や訴訟の進行状況、訴訟結果などに関する情報を提供する必要があること
  • 被害者が必要な物質的、医療的、精神的、社会的援助を受けられるようにし、その情報を被害者に提供すべきこと
  • 各国政府は、警察、裁判、医療、社会福祉などの関係機関の職員に十分な教育訓練を行い、司法上・行政上の敏速な対応を進めるため適切な制度整備などを行うこと

などが提言されています。また、欧米諸国などでは、被害者支援のための様々なシステム整備が進められており、被害者支援は国際的な潮流ともなっています。


犯罪被害者給付制度発足10周年記念シンポジウム(平成3年)における大久保恵美子さんの発言(要約)

 私の息子は、去年の10月12日、飲酒運転者に殺されました。殺された後の数ヶ月間、私はどうやって生きていけばいいのか分からず、本当に無我夢中で、日本には何か私を精神的に助けてくれるところがないのかと必死になって探しましたけれども何もありませんでした。
 先ほどパネリストの先生からも、「日本では、被害者の声として出てこない、被害者の本当にそれがニーズなのか」という発言もありました。でも被害者の立場になりますと、はい、私が被害に遭いましたと大きな声で言って、大きな声で泣ける、そういう社会ではありません。今の日本は大きな声で泣きたくても泣けないんです。ただじっと自分で我慢しなければならないのが今の日本における被害者の姿だと思います。
 日本では、そういう被害者を精神的に救う道がなにもない。まず、それを創ってほしいと思うことなんです。
 先ほど、「被害者が立ち直るためには同じ被害者同士での話し合いが一番大切だ」という発言がありましたが、それを支援してくれる専門家の方たちの助言がないとうまく立ち直っていけません。子供を殺された親は、このようなつらい思いをもう他の人たちにさせたくないという気持ちでいっぱいなのです。どんな協力も惜しみませんから、10周年記念シンポジウムが開かれたこの機会に、是非、一歩でもいいんです。一歩だけでも踏み出してください。お願いします。

被害者支援の必要性と取り組み

 警察は、被害の届出、被疑者の検挙、被害の回復・軽減、再発防止などの面で被害者と最も密接に関わり、被害者を保護する役割を担う機関であることから、被害者の視点に立った各種施策の推進に努めています。

  • 平成8年 2月 警察庁「被害者対策要綱」の制定
  •  同年   5月 長官官房給与厚生課に犯罪被害者対策室の設置
  • 平成11年 6月 犯罪捜査規範の改正(被害者に対する配慮および情報

             提供、被害者の保護などに関する規定を整備)

  • 平成13年 4月 犯罪被害者等給付金支給法の抜本的改正
  • 平成14年 4月 国家公安委員会「警察本部長等による犯罪の被害者等

             に対する援助の実施に関する指針」(平成14年国家公安
             委員会告示第5号)を定め、施行。

  • 平成16年12月 「犯罪被害者等基本法」が成立し、平成17年4月施行。
  • 平成17年12月 「犯罪被害者等基本計画」の策定
  

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