犯罪のグローバル化・犯罪インフラ対策の推進について(例規通達)

犯罪のグローバル化・犯罪インフラ対策の推進について(例規通達)

平成23年4月28日
鳥組例規第4号外共発

 今日の国際組織犯罪は、世界的規模で活動する犯罪組織の日本への浸透、構成員の多国籍化、犯罪行為の世界的展開といった犯罪のグローバル化を急速に進めている。また、犯罪を助長し、又は容易にする基盤である犯罪インフラは、社会の急速な変化に応じ、グローバル化する犯罪にとどまらず、国内の組織犯罪、詐欺、窃盗、サイバー犯罪等のあらゆる犯罪の分野で着々と構築され、巧妙に張り巡らされている。この結果、犯罪のグローバル化及び犯罪インフラの存在は、治安に対する重大な脅威となっており、その対策が急務となっている。このような事態に対応するため、この度、別添のとおり「犯罪のグローバル化に対応するための戦略プラン」及び「犯罪インフラ対策プラン」を策定したことから、各所属にあっては、犯罪のグローバル化対策及び犯罪インフラ対策が重要な課題であることを十分認識した上で、これらのプランに基づき、組織の総合力を発揮した効果的な対策を推進されたい。

別添
   犯罪のグローバル化に対応するための戦略プラン
第1 現状
  今日の国際組織犯罪は、世界的規模で活動する犯罪組織の日本への浸透、構成員の多国籍化、犯罪行為の世界的展開といった「犯罪のグローバル化」を急速に進め、治安に対する重大な脅威となっている。
第2 課題
 犯罪のグローバル化に対応するには、発生した事件の処理のみにとどまることなく、被疑者の犯罪行為を直接又は間接に支援している人的ネットワーク、インフラ等を解明し、犯罪組織に有効な打撃を与え、確実に解体していくことが重要である。このため、まず、犯罪のグローバル化を支えるネットワーク等について、情報の収集・分析能力を高める必要がある。また、国際組織犯罪は、国を越えた連携の下にあらゆる罪種に及び、全国各地で繰り返されるなど、犯行形態の広域性・多様性を強めていることから、都道府県警察が相互に部門や管轄を越えて連携を強化するとともに、外国捜査機関等との連携を一層緊密化させていくことが不可欠となっている。
第3 基本戦略
 1 体制の構築
   国際犯罪組織(外国に本拠を置く犯罪組織、来日外国人犯罪グループその他犯罪を目的とした多数人の集合体で国際的に活動するもの及びこれに関するものの集合体で国際的に活動するもの及びこれに関連するものの集合体をいう。以下同じ。)とこれを支える犯罪インフラの解明を強化するため、国際犯罪組織に関連する来日外国人等の組織、活動、ネットワーク、資金等に関する情報収集機能を強化する。また、国際犯罪組織に関する情報の集約と活用を一層効率化させるため、その捜査を担う全ての部門の情報を一元化し、共有化するための部門横断的な仕組みを構築する。
 2 情報の収集、共有及び分析能力の強化
収集・共有された情報を基に、国際犯罪組織の構成員と周辺者とのつながり、資金や犯罪収益等の移転状況、犯行の手段及び被害品の処分ルートを解明し、情報相互の関連性を見出すなど分析能力を強化する。
 3 捜査連携の強化
   複数の都道府県警察の管轄区域や複数の捜査担当部門にわたる犯罪に的確に対処するため、警察庁の指導・調整の下に、組織横断的な取組を一層進める。
 4 関係機関等との連携強化
   国内の関係機関・団体との連携を強化して、出入国管理等の水際対策や防犯指導を徹底するとともに、外国人が集住する地域が犯罪の温床とならないよう犯罪抑止対策を推進する。
第4 対処方策
 1 体制の構築
 (1) 犯罪のグローバル化に対応する横断的枠組みの構築
    国際組織犯罪に関する情報の収集と共有を促進し、検挙活動を強化するため、犯罪のグローバル化への対策を総合的に推進する体制を整備する。
 (2) 関係部門による対策室の整備
    国際組織犯罪に関する各部門の情報の集約・分析・共有を行うとともに、警察庁対策室に対する報告や、他の都道府県警察に対する必要な連絡・調整を行うため、部門横断的な体制を整備する。
 (3) 実態解明班の設置等
    国際犯罪組織等の構成、活動、資金等の実態を解明するため、警察本部に実態解明班を整備する。
 2 情報の収集、共有及び分析能力の強化
 (1) 情報収集の強化
   ア 実態解明班等による情報収集
     実態解明班は、資金分析を行う犯罪収益解明班との連携の下、幅広く情報を収集して、国際犯罪組織の構成及び活動実態を解明する。また、警察庁を通じて、収集された情報の全国的な活用を図る。
   イ 共(合)同による情報収集
     国際犯罪組織に係る特定の地域、施設その他の対象に関する情報収集の強化を図るため、必要があると認めるときは、警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜査管理官の調整の下に、関係都道府県警察の実態解明班による共同又は合同の情報収集活動を展開する。
 (2) 情報共有の強化
    警察庁の定める指針に基づき、複数の部門にかかわる国際組織犯罪に関する情報の共有化を図るとともに、警察庁情報管理システムへの入力を徹底する。
 (3) 情報分析の強化
   ア 分析手法の高度化
     警察庁情報管理システムにおける各種情報の照合を一層促進するなどして、国際組織犯罪の背後にある組織的・人的ネットワークや支援インフラに関する情報分析を多角的に行う。
   イ 外国捜査機関等への照会
     外国捜査機関等との連携を更に強化し、関係者の個人照会、疑わしい取引に関する情報の照会及び犯行手口等に関する各種照会を徹底する。
3 捜査連携の強化
 (1) 国際犯罪捜査指定捜査員制度の活用
    国際犯罪捜査に係る合同捜査及び共同捜査の効率的な推進を図るため、警察庁の調整のもと、国際犯罪捜査指定捜査員制度を積極的に活用する。
 (2) 通訳・翻訳体制の強化
    グローバル化する国際犯罪捜査に、より適切かつ円滑に対処するため、部内通訳人の通訳・翻訳技術の向上、幅広い言語の部外通訳人の確保等、通訳・翻訳体制を強化する。
4 関係機関との連携強化
 (1) 関係機関との連携
    水際における取締りの強化、外国人被疑者の国外逃亡を防止するため、入国管理局、税関等の関係機関と情報交換を行うとともに、合同・共同摘発を推進するなど、的確かつ効果的な連携を図る。
 (2) 外国人集住地域総合対策の推進
    自治体・ボランティア団体等との連携を一層強化して、外国人集住地域への国際犯罪組織等の浸透の防止及び定住外国人に係る犯罪誘因の除去を図る。
 (3) 民間団体への防犯指導等の徹底
    国際犯罪組織による犯罪を分析し、犯行方法を明らかにすることにより、国際犯罪組織の犯行の対象となり得る者等に対する防犯指導、防犯基準の策定等を推進する。
 
   犯罪対策プラン
第1 現状
  犯罪インフラとは、犯罪を助長し、又は容易にする基盤のことをいい、基盤そのものが合法なものであっても、犯罪に悪用されている状態にあれば、これを含むものである。犯罪インフラは、社会の急速な変化に応じて、グローバル化する犯罪にとどまらず、国内の組織犯罪、詐欺、窃盗、サイバー犯罪等のあらゆる犯罪の分野で着々と構築され、巧妙に張り巡らされてきている。 
  犯罪インフラは、犯罪に関わる通信・運搬、犯罪収益の集金・送金、不法滞在者等の生活、資格・身分の偽装等の手段として利用されるなど、様々な機能・形態があり、対策も多種多様である。
  犯罪インフラに対しては、例えば、繁華街・歓楽街対策においては犯罪組織が暗躍する雑居ビル等の対策を、振り込め詐欺対策においては他人名義の携帯電話や預貯金口座といった犯行ツールの対策を、犯罪のグローバル化対策においては外国人犯罪を助長するヤード等の対策を、それぞれ進めてきた。しかし、いまだ犯罪インフラの解体等(解体又は犯罪に悪用されている状態の解消をいう。以下同じ。)にはほど遠く、その存在は、治安に対する重大な脅威となっている。
第2 課題
 1 徹底的な解明・解体等 
   犯罪インフラは、特定の犯罪のみに利用されるのではなく、様々な犯罪に利用されており、また、各種の犯罪インフラが組み合わさって利用される場合もある。犯罪インフラ対策は根源的な犯罪対策といえ、あらゆる犯罪への取組の中で、犯罪事象の根元にある犯罪インフラを徹底的に解明し、解体等していくことが重要である。 
 2 速やかな対策 
   構築されつつある犯罪インフラは、速やかに解体等しなければ、より強固なものとなり、将来的に解体等することが非常に困難になるおそれがある。 したがって、現下の治安対策のみならず、10年先の治安対策という観点からも、速やかに対策を実施することが重要である。
 3 変化への対応 
   変化する社会の中で新たな技術、サービス、制度等が生まれると、これらが新たな犯罪インフラとして悪用されるおそれもあることから、犯罪の根元に何があるのかを常に見極め、変化に対応していくことが重要である。
第3 基本戦略
 1 体制の構築
   犯罪インフラは、様々な犯罪に関わる基盤であることから、警察の各部門が情報を共有し、総合的に対策を推進するための部門横断的な仕組みを構築する。
 2 実態解明の推進 
   犯罪インフラは、社会の様々な分野に巧妙に張り巡らされてきており、今後も新たなものが出現することが考えられることから、あらゆる機会を通じて犯罪インフラに関連した情報を収集し、実態解明を推進する。
 3 犯罪インフラ事犯の検挙の強化 
   犯罪インフラの構築に資する犯罪(以下「犯罪インフラ事犯」という。)は、口座詐欺のように被害に気付きにくいものであったり、旅券の偽造のように直接的な被害者が存在しないものであったりするため、被害者からの申告により事案が顕在化することが少ないが、治安に与える影響は大きい。このため、各部門が連携して総合力を発揮し、検挙を強化する。 
 4 犯罪インフラを生まないための環境づくりの推進 
   犯罪インフラは、社会全体に構築され得る基盤であり、その対象は警察が直接扱う事象にとどまらない。これを解体等するためには、県民の理解の下、他の行政機関、事業者等と連携して、様々な技術、サービス、制度等が犯罪インフラとして悪用されることを防止する必要がある。このため、警察から関係行政機関等へ積極的に働き掛けを行い、犯罪インフラを生まないための環境づくりを推進する。
第4 具体的な対処方策 
 1 体制の構築 
 (1) 犯罪インフラ対策を総合的に推進する体制の構築
    犯罪インフラ対策を総合的に推進するための体制を構築し、犯罪インフラに関する情勢を集約して、これに対応するための基本方針を定め、その達成を図る。
 (2) 犯罪インフラ対策を部門横断的に実施する体制の構築 
    (1)の体制の下に犯罪インフラ対策を部門横断的に実施するための体制を構築し、犯罪インフラに関する情報の収集・分析・共有、犯罪インフラ事犯や犯罪インフラを利用した犯罪の検挙、関係行政機関や事業者等との連携を推進する。
 2 実態解明の推進 
 (1) 情報収集の強化
    犯罪インフラ事犯や犯罪インフラを利用した犯罪を始めとする各種犯罪の捜査、疑わしい取引に関する情報の分析、地域警察活動、関係行政機関等との意見交換、サイバーパトロール等、あらゆる機会を通じ、また、既存の情報収集体制も活用し、断片情報も含めた犯罪インフラに関する情報の収集に努める。
 (2) 情報分析の強化
    犯罪インフラに関する情報を一元的に集約した上で、犯罪インフラ事犯の状況、犯罪インフラが利用されている状況、新たな犯罪インフラの出現、犯罪インフラを解体等するための方策等についての分析を行う。この際、携帯電話、預貯金口座等に関する既存のデータベースを活用して多角的な分析を実施するなど、効果的な分析に努める。
 (3) 情報共有の推進 
    収集・分析した情報については、本県警察内の関係部門間のみならず、他の都道府県警察と積極的な情報交換を行うとともに、警察庁を通じて、全国的な活用を図る。
 3 犯罪インフラ事犯の検挙の強化 
   犯罪インフラ対策は根源的な犯罪対策であるとの認識の下、各部門が連携して総合力を発揮し、犯罪インフラを利用した犯罪のみならず、その背後にある犯罪インフラ事犯の検挙を推進する。また、広域にわたる犯罪インフラ事犯については、合同・共同捜査を積極的に行う。
 4 犯罪インフラを生まないための環境づくりの推進 
 (1) 関係行政機関との連携
   ア 情報の共有
     関係行政機関との協議会を活用するなどし、関係行政機関が各種手続の機会等において入手し得る犯罪インフラに関する情報の共有を推進する。
   イ 犯罪インフラの構築を許さない環境の整備 
     犯罪インフラの構築に悪用されやすい各種申請について、当該申請を受理する行政機関の窓口に対する注意喚起を行い、申請者に対する不正防止の働き掛け、不審な事案があった場合の警察への連絡等を要請するなど、各種申請が犯罪インフラの構築に悪用されない環境を整備する。
   ウ 取締りの連携 
     不法就労助長を入国管理局と合同して検挙するなど、関係行政機関と一体となって、犯罪インフラの解明・解体等を推進する。
   エ 悪質事業者の排除 
     各種法令に基づく権限を行使し、犯罪インフラの構築に関与する悪質な事業者の指導、事業からの排除等を行うよう、関係行政機関に対して要請する。
 (2) 事業者との連携
   ア 犯罪インフラの構築を許さない環境の整備 
     通信事業者、金融機関、不動産業者等に対して、契約の際の本人確認の徹底、不審な事案があった場合の警察への連絡等を要請し、各種サービスが犯罪インフラの構築に悪用されない環境を整備する。
   イ インターネット関連事業者との連携
     インターネットのプロバイダ、サイト運営事業者等に対して、サイトの監視、違法情報の削除等を要請する。
   ウ 迅速な照会のための枠組みの構築
     犯罪インフラとして悪用されているサービスの提供事業者との間で、迅速で効果的な照会のための枠組みを構築し、捜査の迅速化・効率化及び被害の拡大防止を図る。
 (3) 外国捜査機関等との連携
    グローバルに構築される犯罪インフラに対応するため、外国捜査機関等との連携の強化に努める。
 (4) 県民の協力を得るための活動
   ア 犯罪インフラを構築させない機運の醸成 
     犯罪インフラが犯罪に利用されている状況、犯罪インフラを構築させないために県民ができること等について広報啓発を行い、社会全体に犯罪インフラを構築させないという機運を醸成する。
   イ 通報窓口の整備・明確化 
     県民に対して、犯罪インフラに関わる不審な事案を認知した場合の警察への通報を呼び掛けるとともに、通報受理窓口の整備・明確化を図る。

  

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